愛する婚約者は、今日も王女様の手にキスをする。

古堂すいう

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挿話 (ガブリエルside)

出会い④ (挿話……ガブリエルside)

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「こら、ガブリエル。婚約者になるお嬢さんになんてことを言うんだ」

ガブリエルを叱ったのは、もちろんセディスだった。

「……申し訳ありません」

ガブリエルは生真面目に謝った。何がこの少女を苛立たせてしまったのかは不明だが、自分の言葉で彼女が不快に思ったのなら謝るべきだろう、とそう考えての謝罪だった。しかしそんなガブリエルの真摯な態度はロメリアに響かず、彼女はずんずんと彼に歩み寄って可憐な声を荒げる。

「この世界に私より美しい人なんていないわ。私がこの世界で一番可愛いし、綺麗なんだもの!皆、そう言うわ!」

きっぱりと宣言する彼女だったが、ガブリエルは彼女の言葉が正しいとは思わなかった。

「違う」
「何が違うのよ!」
「違うから、違うと言った」
「じゃあ、あなたが美しいと思う人を言ってみたらどうなのよ!」

ロメリアがそう口にした途端、ガブリエルの脳裏に金色の髪と青い瞳が目に眩しい少女の顔を思い浮かぶ。だが、それを言えば、きっと火に油だ。少女は自分が世界一美しいと信じ切っている。そんな彼女に昔会った少女のことを言葉で説明したって納得など到底してはくれないだろう。だから。

「……言う必要はない」

ガブリエルは端的に答えた。するとロメリアは地団駄を踏む。前途多難とはまさにこのことだとガブリエルが内心で溜息を吐く横で、それぞれの親もまた溜息を吐いていた。

(……彼女と結婚してもきっと……気疲れする)

それは子供ながらに感じた、ガブリエルのロメリアに対する感想だった。子供の頃から人に対しても、また自分に対する関心さえも薄く、一人で静かな時を過ごしていたいガブリエルに対して、ロメリアは他人への興味が極端に薄く、自分に対する関心ばかり強く、自分が中心にいなければ癇癪をおこし騒ぐ人間だ。

正反対の2人だ。

きっと、いつか結婚の約束など無くなるに決まっている。とガブリエルはそんな風に思っていた。

けれど、何故か出会った日以来、ロメリアは事あるごとにガブリエルを屋敷へ呼び出すようになった。理由はとても単純で「私の可愛さが1回では伝わらなかったみたいだから、何度も会って分からせてあげようと思ったのよ!」とのことである。

そして今日もガブリエルは、呼び出され「この衣装はどうだ」だの「リボンはどうだ」だのと無邪気に笑うロメリアに永遠と問い掛けられた。彼が、やっと自分の屋敷に帰ってこられたのは日も暮れた頃である。

(……うんざりだ)

そんなげっそりとした様子で帰って来たガブリエルを見て、セディスは大笑いした。
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