TSしてないのにTSしたと言われる男の受難

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〈高2 :1学期〉

7.デート1日目

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 桐崎と約束していたデートの日がやってきた。

 まあ、土日両方とも一緒に出かけるんだが。
 土曜日である今日はウインドウショッピングである。日曜日に遊園地に行くのでペアルックがしたいと桐崎が騒ぎ出したためだ。
 しょうがないやつだなあと思いながら待ち合わせ場所である駅前に行く。そういえば、俺の服って何で男物あるんだろう。元々、男物が好きだったとか?それでも制服はなんで男物があるんだ?とかまたチグハグなところを見つけてモヤモヤした。

 改札近くで待っていた桐崎は周囲の目線を独占してた。なんでただのTシャツとジーンズでカッコよく見えるだろうか?服の宣伝でもしてんのか??
 俺を見つけた桐崎がこちらを見て笑顔で手を振った。桐崎の後ろに尻尾が見えた気がした。めちゃくちゃ嬉しそう。

 友人の桐崎も待ち合わせをしたときはこんな風に喜んでくれていたので、恋人の桐崎と友人の桐崎の共通点が一つ見つかったみたいで何だか嬉しくなった。桐崎はやっぱり桐崎なんだよなあ。

「待たせた?」
「全然、待つ時間も楽しかったし」

 結構待ったやつのセリフじゃんそれ。待ち合わせ10分前には着くように来たのにいつから待ってたんだか。
 俺の服装を見た桐崎が嬉しそうなのを見て首を傾げた。ただのパーカーとジーンズなのに。

「どうした?なんか変?」
「いや、俺の服着てる恋人っていつ見てもいいなあって」

 俺の服??とどういうことか聞くと、桐崎の身長が伸びて入らなくなった服を過去の俺が欲しがったらしい。え、じゃあ待って。あのクローゼットにある男物の服、全部こいつのか??おそるおそる制服のことも聞くと桐崎のだったらしい。やばいな俺じゃない俺。それに助けられてる俺って何なんだって感じだけど。

「前は服ダボダボだったけど今はピッタリだし出かける時にちょうどいいね」

 服を譲った本人が嬉しそうなので全て良しとする。触るな危険。触れるな過去か?女の俺は相当桐崎が好きだったんだなって思えたエピソードだった。

 電車に乗って目的地に向かっている際、席が空いてたので2人とも座った記憶はあるんだが、いつの間にか桐崎に寄りかかって寝てた。涎垂れてなかっただろうか。
 心配になって口元を触ると、大丈夫だよ、と頬を撫でられた。なんて自然な動作、恐ろしいやつである。

 その後、自然な流れのように恋人の繋ぎでエスコートされた。うん、なんかエスコートぽっかった。
 男物の服も見たし女物の服も見た。そう、女物の服。桐崎がフリルがめっちゃついてるワンピースを指差して、どう?と聞かれたけど何聞いてんだこいつ。
 今の江本が着てるところも見たいな、ダメ?と甘えるように言われたけど断固拒否した。家でもいいよ、と譲歩する姿勢を見せてたが違う、そうじゃない。
 そろそろお腹空いてきたなと思ってると桐崎がこちらを向いて、お腹空いた?と首を傾げて聞いてきた。よく見てんなこいつ。

「お昼なに食べよっか?」
「パフェ」
「それはスイーツなのでメインは何にする?」

 んん~と悩んでると、なんかイタリアンのやたらオシャレそうな所に連れてこられた。めっちゃデートコースじゃんビビる。
 オシャレそうな葉っぱ(海老と生ハムサラダ)としめじと海老のクリームパスタを頼んだ。両方海老入ってんじゃん。海老祭りか??
 桐崎はマルゲリータ頼んでた。そんなに入る?大丈夫??
 料理が運ばれてくるまで時間があったので、メニューの一覧にあったパフェを眺める。うむ、チョコパフェ。いちごパフェも捨て難いな。
 そんな俺を何だか微笑ましそうな顔で見つめてくる桐崎の目線は無視することにした。

 注文してた品が机の上に並べられると、桐崎がマルゲリータを皿に置きこちらに差し出してきた。

「え、どうした?」
「いや、メニュー見てる時に食べたそうな顔をしてたから」

 めっちゃよく見てるじゃん。というか、顔に出てた?普通に恥ずかしい。食べてみたかったが、量も多そうだったし食べたことがなかったので躊躇してしまったのだ。

「んん~頂きます」
「どうぞ、よく噛んでね」

 こっちとら幼児じゃないんだぞ。え、めっちゃ美味しい。トマトの酸味っていうのかなそれとモッツァレラチーズめっちゃ合うじゃん。

「美味しい、ありがとう」
「どういたしまして」

 何だろうな、桐崎の一つ一つの行動が俺に対して"あなたのことが大切だよ"って言ってるように感じることがある。これは俺が受け取っていい愛情なのだろうか。
 少し考えたが、やっぱりどうにもならないので目の前の食事に集中することにした。
 ちなみにオシャレ葉っぱとクリームパスタを桐崎にお裾分けした。俺が食べたくて頼んだものばかりなので少し申し訳なかったが、桐崎が美味しそうに食べてたのでホッとした。
 流石にお腹がいっぱいだったので、パフェは帰り際に食べることにした。食べないという選択肢はなかった。めちゃくちゃ美味しそうじゃんパフェ。

 ブラブラとまた歩き回ってると白地に黒のラインが入ってるトレーナーと黒地に白のラインが入っているトレーナーを見つけたのでそれでペアルックをすることした。俺は白。桐崎は黒である。
 トレーナーの真ん中に英語の筆記体で何か書いてたけど読めない。
 桐崎は何故か嬉しそうにその字を見ていたけど、何が書いてるかは教えてくれなかった。

 帰り際に食べたパフェは、俺がチョコで桐崎がいちごだった。好きなの食べていいんだぞ、と伝えたが、う~ん江本が可愛くて、と斜めの返事が返ってきた。恋愛の海に溺れて死にそうなやつだな。

 最寄駅から家までの帰り道、桐崎が嬉しそうに話し出した。

「明日着るペアルックに書かれてた英語さ、何て書いてたと思う?」
「聞いたけど教えてくれなかったじゃん。で、教えてくれる気になったわけ?」
「〈I adore you〉、そう書いてあったんだよ」
「ふ~ん、で意味は?」
「あなたが大好き」
「へ」
「君が愛おしい、とかかなあ。明日楽しみだね。また明日!」

 気づいたら家の前に到着していた。そそくさと去っていき、遠くから手を振ってる桐崎。やられた。明日どんな顔してトレーナー着ればいいのか分からない。
 英語弱々民の負けであった。英語とかマジで分からん。喋った言葉が自動翻訳されて会話できるスーパーな機械に頼って生きていきたい。科学の力万歳であった。

 そういえば、家にいる親は英語バリバリできるんだが、バレたら揶揄われるのは必須であった。特に母。
 明日はバレないようにそっと着ていこうと思ってたが、家に入って買い物袋を見た母が何買ったのと興味津々。
 トレーナーを買ったというと、着て見せて!と言われてもう隠すのが無理だった。明日着るのに今日着る必要あるのか??

「デートなんだからオシャレしなきゃでしょ。服に合わせる髪型とかアクセサリーとか一大事じゃないの!」

 実は昨日の夜にもこの流れができかけたがもう寝る時間だと回避したのに、今日は逃げられそうになかった。
 トレーナーに書かれた文字を見て大興奮した母に背中をバシバシ叩かれた。痛い、興奮しすぎて俺を揶揄うどころじゃないのは不幸中の幸いだけど。
 父はトレーナーを見て感心している様子だった。何に感心してるの??

 遊園地だからアクセサリーは邪魔になるかしらとか髪型はどうしようかしらと騒ぐ母。デートに行くのは母だったか??
 遊園地で崩れない髪型が難しいことにネットで検索して気づいたのか、意気消沈してた。どうしたらいいんだこの空気。

 お土産いっぱい買ってくるね、と声をかけて自室に逃げた。頑張れ父。応援してる。

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