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第百二十五話 トウホウの町

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 祭りの後は村人皆に服と靴を二枚ずつ配布した。

 その後山の裾野を少し削り、平らにして耕作地にする。

 ほぼ岩山だったので削るように平らにして他から回収した山土を上に置き、耕作地を増やしたのだ。

 さらに村の食料庫には小麦と小麦粉をかなり置いた。


 ジマサもショーンも驚き泣いて感謝した。

「まさか、こんな事が起きるとは……エルヴァン殿、このご恩、我がハク一族は決して忘れません」

「エルヴァン、ありがとう。耕作地も増やしてもらったうえに、大海蛇も山狼もあっさり討伐してもらってドロップした肉も大量に貰った。マジックバッグ十倍も五倍も貰って……他にもいっぱいしてもらった。本当にありがとう」

 二人から何度もお礼を言われた。

「いえいえ、お互い様ですよ。では、これから案内お願いしますね。ショーンさん頼りにしてますよ」

「ああ、もちろんだ。それは任せてくれ」


 村人全員に見送られて、飛行船に乗り込んだ。

 案内役はショーンと妻のチャコが来た。

 まるで新婚旅行だな。


 二人は後ろの席に座ってもらう。


 全員出すと狭いので、予めウエスタンとオスマンは回収してある。

 飛行船がフワリと舞い上がる。

「わっすごいです。本当に空を飛ぶんですね」

 チャコが窓に張り付いて興奮する。

「俺も実際に飛行船に乗るのは初めてだ。もちろん見た事は何度もあるがな……しかしこの船はこんなに小さいのに中が広い。今までに見たのはもっと作りが大きかったよ」

 ショーンが飛行船の内部を見渡しながら感心した。

「そうなんですね。じゃあ、スピードはどうでしょうか」

「ああ、ずいぶん早いな、だが他の飛行船はどうか分からん。乗った事がないからな」

「まあ、そうでしょうね。感覚としてはどうですか。あっと言う間に消えるくらい早いとか、あっちからこっちまでスーッと移動するとかはありますか?」

「そんなのは見た事ないな。もし早くてもこの飛行船より少し早い、とかだと思うぞ」

  なるほど。そこまで飛行船の性能に差は無いようだ。

「そうですか。ならなんとかなるかな……」

「そうですね。時間さえあれば逃げられますからね」

「そうですの。またオルが障壁バリアで守るんですの」

「ああ、そうだな」

 また襲われることもあるかもしれないので警戒は常に必要だろう。

 なんせここは外国なのだ。

 しかし海はおだやかで二時間くらい飛んだ時点で前に大きな陸が見えてきた。

「おっもう本島まで来たんだ、やっぱり飛行船は早いなぁ」

「ええ、本当ですねぇ」

 二人が嬉しそうに前を見る。いつもよりかなり早くこれたようだ。

「へー……本当すごいな。ありがたい」

「そうですね。こんなに快適に来れるんですね」

 ショーンとチャコが手を取り合い、大げさに喜んだ。

 船でくるよりは圧倒的に楽だろう。


「いつもはどこに着くんですか? このまま飛んでても問題ないんでしょうか」

「そうだな、いつもトウホウの町に行くんだが、今見えているあの港からだ。別に飛んじゃいかんなんて事はないと思うんだが、詳しくはわからんのだ。役に立たなくてすまん」

 ショーンも良く分からないようだ。飛行船を持ってないからそれもしょうがないだろう。

「そうだよなぁ。よし、一度試したい事もあったんだ。高度をギリギリまで下げて海面スレスレで飛んでいこう。そうすれば船みたいに見えるだろ?」

「そうね! 元々船みたいな外見だしね。やってみましょうか」

 シルフィーがうなずいた。

「はい、お任せください」

 アルフィーが高度を下げていく……いい感じにスレスレで飛んでいる。

「おおっ何か船っぽい」

「本当ね。これならバレないんじゃない?」

「ああ、だが本当の船じゃないから別に港に行かなくてもいいだろう。目立たないようにその辺の浜辺から上陸しよう。そうだ! 陸地でも地面スレスレなら馬車みたいにも見えるんじゃないか? どうせならきら星に引かせるか」

「面白いわね。変わってるけど馬車に見えなくもないわね。いや、エル。そもそも馬車を持ってるじゃないの」

 シルフィーが真顔でつっこんだ

「ああ、そうだったな」

「ふふふ、そうですよね」

 皆は笑うがショーンとチャコの二人はキョトンとした顔をする。

「馬車も持ってるんですか?」

「えっ!? 馬も持ってるのか?」

「そうなんですよ。でも今は一頭しか持ってないから、馬車を引かせるのは可愛そうかな」

「へー、何でもあるんだなぁ、だが普通は一頭だぞ。二頭で引くなら相当でかい馬車になるな」

 この国では一頭引きが普通のようだ。


「そうなんですね……確かに大馬なら一頭でもいいんですけど」

「大馬ってなんだ? 大きい馬のことか」

 二人が不思議そうな顔をする。

「うーん……もしかしたらこの国には大馬がないのかもしれませんね。普通の馬より大きいんですよ。俺達三人でも乗れるくらいでかいんです」

「そんな馬知らねえなぁ。ほー、馬一つとっても、やっぱり違うもんなんだな」

「そうですね」


 そんな会話をしているうちに、船着き場から少し離れた人気の少ない砂浜に上陸した。

 飛行船から降りて回収するとウエスタンとオスマンをその場に出した。

 二人はいつものミスリル装備を着せてある。

 もちろん俺達はいつもの布の服だが。


「おっもう着いたか」

「一瞬だから本当楽ねー」

 二人からすれば瞬間移動だ。

 浜から歩いて港に出た。

 周りの人は着物を着ている人が多いようだが、鎧や武士や兵隊や鎖帷子、変わった布の服など色んな恰好の人がいるせいか、どんな格好でも逆に目立たない気がした。

 ちょんまげの人も結構いるが武士のように頭を剃ってる訳じゃない。

 しばって結んでいるだけだ。


 ショーンも長い髪を結んでいる。

「へーやっぱりハテル大陸とは少し雰囲気が違うわね。外国って感じがするわ」

「ええ、面白いですね。男の人でも髪が長い人が多いですね」

「皆浴衣ですの!」

「はい、ウルもああゆう可愛い浴衣が欲しいです」

 ウルフィーが可愛くねだってくる。

 よしよし、いっぱい買ってやろう。


「オルフィーさん。あれは着物って言うんですよ」

 チャコがオルフィーに教えてくれた。

「そうなんですの。皆お風呂あがりかと思ったんですの」

「ははは、そうだな。知らなきゃそう思うよな」


 トウホウの町をキョロキョロしながらゾロゾロ歩いて移動した。

 
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