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0.前世の記憶
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久しぶりの新作です。あまり書かない転生モノ。
楽しんで頂けますように。
それでは、はじまりはじまり~。
★☆★☆★☆★☆
逃げようと思えたのは、昼間に頭を打った拍子に前世の記憶を思い出せたから。
だけど今までの記憶が消えたわけじゃない。
恐怖で支配されていた私の身体と心を、動かすのは大変だった。
上手くいかずに見付かってしまったら?
今までよりももっと酷いことをされるかもしれないよ?
外はあの人たちよりずっと怖い人が沢山いるかもしれない。
でもね、どの道このままでは、私があとどれくらい生きられるか分からないんだよ。
ねぇ、お願い、私。
頑張って逃げよう。
逃げて……今度こそ私が私を幸せにしてみせるから!
すっかり闇が深まってしばらくののち、私は立ち上がった。
身体は重く、あちこちから痛みを感じる。
それでも気合で全身に力を入れて、小屋の扉に手を掛けた。
あっさり開いたことに、驚く私はいない。
ずっと以前に、この扉が施錠されていた記憶はある。
出して出してと泣いていた時期を微かに覚えているから。
いつから鍵を使わなくなったのかは分からない。
逃げられないと刷り込まれ大人しくなった私を見て、要らないとでも判断されたのだろう。
あの人たちが鍵を開けることなく入って来ても、確かに私は逃げ出そうという考えを持つことはなくなっていた。
今日のように前世の記憶を思い出していなければ、死ぬまでここに居たように思う。
顔に当たる風の、ピリッとした感覚に驚く。
この世界では初めての外出ではないか。
いつから私はこの小屋に入れられていたのだろう?
出してと泣き叫んだ記憶が薄っすらと残っていても、その最初の記憶がない。
まさか赤ん坊の頃だったりするのかな?
思わず息を吸い込んだ。
すぐに咽て後悔することになる。
風が強い日で良かった。
ざぁざぁと草の鳴る音は、たちまち私の咳を飲み込んで搔き消した。
どうやら自然あふれる場所にある小屋だったようだ。
どこにも人の気配はない。
呼吸が落ち着いてから、辺りを見渡してみる。
長く灯りのない部屋で夜を過ごしてきたからだろうか。
月明かりがなくても、星明かりで十分に周囲の様子が見渡せた。
そもそもこの世界にかつてと同じように月が存在しているかどうか、知らないことに気付く。
だけど暗闇で見る限りは、前の世界とそう変わらない自然がそこにあるようで安堵した。
離れたところにぼんやりと明かりが見える。
いくつも浮かんでいるから、大きな建物だろうか?
あちらは良くないと、どこで身に着けた覚えもない勘が囁いた。
私は明かりとは反対方向へと歩き出す。
狭い小屋の中だけで生きてきた代償は重く。
足は容易にもつれ、よく転げた。それでも私はすぐに立ち上がって、上手く立てないときには両手も使い這ってでも、前へ前へと進んでいく。
早く、早く。
出来るだけ遠いところへ。
痛いよね。苦しいよね。怖いよね。
大丈夫。きっと大丈夫だから。
私がいるよ。
頑張って。頑張ろう。
足裏が痛んで靴がないとようやく気付いた。
ここでは裸足の記憶しかなく、靴が存在しているといいな。
身体が限界に向かって、前世の私の意識も薄れ始めた。
そこで不思議な感覚を知る。
前世の私と、今の幼い私が、溶けて交じり合い、同じものに変化していくような──。
あの私も私。
この私も私。
元は全部同じもの。
親なき世界を生きる魂──。
楽しんで頂けますように。
それでは、はじまりはじまり~。
★☆★☆★☆★☆
逃げようと思えたのは、昼間に頭を打った拍子に前世の記憶を思い出せたから。
だけど今までの記憶が消えたわけじゃない。
恐怖で支配されていた私の身体と心を、動かすのは大変だった。
上手くいかずに見付かってしまったら?
今までよりももっと酷いことをされるかもしれないよ?
外はあの人たちよりずっと怖い人が沢山いるかもしれない。
でもね、どの道このままでは、私があとどれくらい生きられるか分からないんだよ。
ねぇ、お願い、私。
頑張って逃げよう。
逃げて……今度こそ私が私を幸せにしてみせるから!
すっかり闇が深まってしばらくののち、私は立ち上がった。
身体は重く、あちこちから痛みを感じる。
それでも気合で全身に力を入れて、小屋の扉に手を掛けた。
あっさり開いたことに、驚く私はいない。
ずっと以前に、この扉が施錠されていた記憶はある。
出して出してと泣いていた時期を微かに覚えているから。
いつから鍵を使わなくなったのかは分からない。
逃げられないと刷り込まれ大人しくなった私を見て、要らないとでも判断されたのだろう。
あの人たちが鍵を開けることなく入って来ても、確かに私は逃げ出そうという考えを持つことはなくなっていた。
今日のように前世の記憶を思い出していなければ、死ぬまでここに居たように思う。
顔に当たる風の、ピリッとした感覚に驚く。
この世界では初めての外出ではないか。
いつから私はこの小屋に入れられていたのだろう?
出してと泣き叫んだ記憶が薄っすらと残っていても、その最初の記憶がない。
まさか赤ん坊の頃だったりするのかな?
思わず息を吸い込んだ。
すぐに咽て後悔することになる。
風が強い日で良かった。
ざぁざぁと草の鳴る音は、たちまち私の咳を飲み込んで搔き消した。
どうやら自然あふれる場所にある小屋だったようだ。
どこにも人の気配はない。
呼吸が落ち着いてから、辺りを見渡してみる。
長く灯りのない部屋で夜を過ごしてきたからだろうか。
月明かりがなくても、星明かりで十分に周囲の様子が見渡せた。
そもそもこの世界にかつてと同じように月が存在しているかどうか、知らないことに気付く。
だけど暗闇で見る限りは、前の世界とそう変わらない自然がそこにあるようで安堵した。
離れたところにぼんやりと明かりが見える。
いくつも浮かんでいるから、大きな建物だろうか?
あちらは良くないと、どこで身に着けた覚えもない勘が囁いた。
私は明かりとは反対方向へと歩き出す。
狭い小屋の中だけで生きてきた代償は重く。
足は容易にもつれ、よく転げた。それでも私はすぐに立ち上がって、上手く立てないときには両手も使い這ってでも、前へ前へと進んでいく。
早く、早く。
出来るだけ遠いところへ。
痛いよね。苦しいよね。怖いよね。
大丈夫。きっと大丈夫だから。
私がいるよ。
頑張って。頑張ろう。
足裏が痛んで靴がないとようやく気付いた。
ここでは裸足の記憶しかなく、靴が存在しているといいな。
身体が限界に向かって、前世の私の意識も薄れ始めた。
そこで不思議な感覚を知る。
前世の私と、今の幼い私が、溶けて交じり合い、同じものに変化していくような──。
あの私も私。
この私も私。
元は全部同じもの。
親なき世界を生きる魂──。
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