【完結】親がいなくても、私が私を幸せにするので大丈夫です。どうぞ、私のことはおかまいなく。

春風由実

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18.神さまの教え

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「──まりょく?」

 今日も孤児院の談話室を貸し切って、神官さまから有難い教えを受けている。
 他の人たちは知らないけれど、私の保護者となる先生たちには話を通しているそう。

 どんな話を通したのか、それはまだ聞けていない。
 でももう先生たちは、私が何者かという結論に至っているのかもしれないね。

 ところが私は、まだ何も知らない状況だった。

 孤児院の子どもたちや町の人たちから不審に思われないようにと、普段の生活を続けながら空いた時間に少しずつ話を聞くようにしているせいか。
 それとも単に私の理解力がないせいか。

 神官さまの特別講義は、なかなか結論には至らない。

 だけど神官さまも悪いと思うのだ。
 今さら『神さまの教え』について一から教えようとするなんて。

 実はその神さまは『女神さま』でした~という謎の秘密の暴露があったけれど。
 その中身は私が幼い頃に教えられた内容とほとんど同じだ。

 神さまの性別に関しては、どうして隠されているのかという説明も聞かされたけれど。
 あれこれ理由を並べたところで、要は女神さまがそれを望んだということでしょう?
 私はすべて悟りましたよという顔をして、ふんふんと聞き流していった。

 だって、この部分に関しては早く終わって欲しかったんだもの。
 私が知りたいことはそこじゃない。

 この対応が間違いだったと気付かされたのは、意外と早かった。
 やっとそれっぽい話が聞けそうだと思って、真剣に耳を傾けたところだったのに。

「まりょくって、魔力だよね?魔法があるの?」

 この世界の人間も、前と変わらない能力しかないと思い込んでいた。

 だって神官さまの言う魔力というものを感じたことはなかったし。
 ましてや魔法を使っている人間を見たこともない。

 それなのに本当に魔法があるっていうの?

「もしかして子どもは使ったらいけないとか?それで私はまだ隠されていた?」

 わくわくしながら問い掛けたのに。
 神官さまの笑顔の質が変わったように感じた。

 あれ?

「リリア、ちゃんと聞いていなかったな?」

 声がすこーし低くなっているような。

「え?」

「え、ではないよ。あーもう。だからな?これは魔力なしの人間には、話せない内容だから。この町の人たちは知らないんだよ」

「魔力なしって?」

「何にも聞いていなかったな。うん、よく分かった。リリアには合間合間に試験をしながら教えていくことにしよう」

「えぇえ」

 試験と聞いて拒絶反応が出るのは、前世の記憶のせいに違いない。
 だってこの世界で試験なんて受けたことはないもの。

「試験が嫌なら真面目に聞きなさい。もう一度最初から話すからな。次は聞いていなかったら試験だぞ」

「……ごめんなさい」

 謝ったよ。謝ったけどね?

 女神さまがこの世界を創ったとか。
 女神さまが選んだ人間に土地を与え、国を任せたとか。
 女神さまの教えが正しく守られるよう、また別の人間を選んで国に依らない特別な権限を与えたとか。
 女神さまがこうして役割を与えた人たちにだけ、特別な力を授けたとか。

 これを本当にあった出来事として受け止めるよう神官さまは言うのだけれど。
 前世の記憶は、これらを創られた物語として受け止めようとする。

 だけどそうか。
 魔力があるのなら……。

 どうかなぁ?
 元からこの世界の人間に備わる能力で、選ばれたというけれど単にその能力に秀でた人とそうでない人がいたのでは?

 前世でも足が速い人と、そうでない人がいたように。
 魔力と聞くとなんだか凄いものに感じるけれど、能力という意味では前世のそれと大差ない個々の違いかもしれないよね。

 昔、国の王様となる人たちが、ちょうど皆、能力に秀でた人たちだったのではないか。
 そういう人がリーダーとして人をまとめていったのだろう。
 だけど代々同じように能力に秀でている人間が生まれるとは限らないから。
 子孫がリーダーを続けられるように、都合よく神話を絡めていったと考えるほうが私には納得出来る。

「リリアはどうしても事実として信じられないようだな?」

 今度は真面目に聞いていたつもりなのに、胡散臭いなぁという気持ちが顔に出ていたのかもしれない。
 
「よし、分かった。教え方を変えよう。リリア、どの国の国土面積も完璧に同じなのはどうしてだと思う?」


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