【完結】親がいなくても、私が私を幸せにするので大丈夫です。どうぞ、私のことはおかまいなく。

春風由実

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17.威嚇

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 皆の親の身元は割れているということだろうか?
 私だけが親を知らない怪しい子どもだったのに、先生たちは受け入れてくれていたということ?

「ふむ。やはり教育は受けられなかったのだな?」

「読み書き計算なら皆と同じようにこの孤児院で習っています!」

 震えを抑えようとしたら、予想以上に大きな声が出た。

「分かっている。この孤児院に不足があるとは思っていない。学んでいないことも、リリアのせいではない。私は君を責めない」

 何にも分からない。分からなくて怖い。

「だがリリア。君は彼らの知らないことを学ばなければならない。今のままでここに置いてはおくことは出来ないんだよ」

 どうして?
 私はまだ未成年だよ?
 もうしばらくは孤児院にいられると思ったのに?
 この町も出て行かないといけないの?

「うん……そうだな。まずは、話してはならないことから説明しよう。だが、その前に。これをどうにかしないとな」

 神官さまの手がにゅっとこちらに伸びて来て、思わず私は目を瞑った。

 私がこうして不意に近付いて来る手の動きに弱いのは、あの小屋で殴られていた記憶が残っているからだと自分では分析している。
 でもそれが分かっていたところで身体は先に反応してしまうから、身構えてぎゅっと固くなる身体をすぐには緩められない。

 ひっ詰めている髪の上で、触れるかどうかのぎりぎりの感覚で何かが揺れた。
 驚きが緊張した身体を溶かしていく。

「よしよし」

「……はい?」

 いつもと変わらない爽やかな笑顔の神官さまと目が合った。
 だけどいつもより目に優しさが宿っているように感じられる。

「よく無事であったなぁ。ここまで一人で大変だったろう?」

「別に……先生たちも孤児の皆もいましたし。町の人たちも優しいので」

「そうだな。良いところに居てくれたものだよ。他の町ならばリリアはもっと大変だったろうな。威嚇し過ぎて、倒れていたかもしれない」

「いかく?」

「よく自分を守ってきたな、リリア。偉かったぞ」

 意味が分からなかった。
 でも褒められたことは、何故か嬉しくて。

「リリアは運も良かったな。ここに最初に来たのが私だったのだから」

 神官さまが言っていることは何にも分からなかったけれど、込み上げてくるものを押さえられなかった。

 神官さまの手が嬉しかったんじゃない。
 この触れた手が、懐かしい感触を、その温かさを、思い出させてくれたからだ。


 うぅ……会いたいよ、お母さん。
 私は……お母さんに褒められたい。


 ねぇ、お母さん。
 どうして私はあんなに早く人生を終えることになったのかな?


『ごめんねー。きみがここにいるとすごーくつまらないんだ』


 ──今のはなに?これは誰の声?


 それから急に意識を失って、神官さまに迷惑を掛けたと知ったのは、目覚めてからになる。

 眠っている間に私はお医者さまに診て貰えたそうだ。
 私の身体に異常はなくて、疲れが出たのだろうということで、数日は孤児院の個室で休むことになった。
 話を聞いたアレクが飛んで来てくれて、「だからリリアは心配し過ぎなんだよ」と叱られてしまったし、先生たちだけでなく、孤児院の子どもたちにまでもっと休めと強く言われることになった。

 おかげで私は料理を担当する頻度が減って暇になり、神官さまからの有難い特別講義を受けることになったのである。

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