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39.逃げて正解
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小屋を逃げ出してもう十年も過ぎている。
まさかまた同じ人から同じ言葉を聞くことになろうとは思ってもみなかった。
探し出されてあの小屋に連れ戻されるのでは?と怯えていた時間は僅か。
より良い孤児院生活を送るために何が出来るかと考えることに忙しかったおかげか、虐待された経験を引き摺ることもなかった私にとって、このおばさんは完全に過去の人。
それを確認出来たことが、この場に来て一番良かったことかもしれない。
私の心は何も揺れなかった。
真直ぐに女性を見詰めることも出来ている。
何も言い返さない私に苛立ったのか、おばさんは罵詈雑言を浴びせて来たけれど、すぐに静かになった。
というより、口が開けなくなったようだ。物理的に。
手を持ち上げたから縄で繋がれた左右の手首が目に入った。
指先で下唇を下げようとしているが、上手くいかないようだ。
必死の形相は、長く見ていたいものではなくて、つい目を逸らしてしまった。
その先に青い服が見えてしまい、慌てて反対側を向けば、神官さまの手がちょうどこちらへと伸びていた。
私は怯えてもいないし、傷付いてもいないんだから。
頭なんか撫でなくたっていいのにね。
この世界しか知らなければ、まだ子どもで、私は傷ついていたかもしれないけれど。
前世分の年齢が加算されているならば、私の精神はもう大人と変わらない。
前世でも何もかも他人のせいという人がいた。
悪いことをしても、私にこんなことをさせたあなたたちが悪い。そういう価値観の人だ。
その手の人たちには関わらないことが一番。
望まず関わってしまったとして、彼らを変えようなどと思わず、出来るだけ早く離れるに限る。
だからあの日。
前世を思い出してすぐにあの小屋を出た私は正しかったんだ。
改めておばさんと対峙した今、しみじみと思うところはそれだった。
あのままこの女性に関わり続けていたら、きっと長く生きられていなかったように思う。
たとえ私に魔力があったとしても──。
「自白なし、反省の色なしと見なします。異論ある方はございませんでしょう」
今回は隣の高貴そうな人も声を掛けなかった。
誰からの発言もなく、声を出せない状態のまま、おばさんが退場していく。
自分の足ではなく、両脇に手を入れた騎士に引き摺られる形で……。
あ、女性だ。
先までの人たちと同じ白い騎士服を着ているから気付かなかったけれど、よく見ればおばさんを連れてきた人たちは女性騎士だった。
かっこいいな……。
がしっと頭を掴まれる。
そういや、まだ撫でていましたね。
で、何なんですか?
痛いんですけど?
睨んだら、にこにこと爽やかに笑う神官さまがそこにいた。
笑っているのに怖い。
まさかまた同じ人から同じ言葉を聞くことになろうとは思ってもみなかった。
探し出されてあの小屋に連れ戻されるのでは?と怯えていた時間は僅か。
より良い孤児院生活を送るために何が出来るかと考えることに忙しかったおかげか、虐待された経験を引き摺ることもなかった私にとって、このおばさんは完全に過去の人。
それを確認出来たことが、この場に来て一番良かったことかもしれない。
私の心は何も揺れなかった。
真直ぐに女性を見詰めることも出来ている。
何も言い返さない私に苛立ったのか、おばさんは罵詈雑言を浴びせて来たけれど、すぐに静かになった。
というより、口が開けなくなったようだ。物理的に。
手を持ち上げたから縄で繋がれた左右の手首が目に入った。
指先で下唇を下げようとしているが、上手くいかないようだ。
必死の形相は、長く見ていたいものではなくて、つい目を逸らしてしまった。
その先に青い服が見えてしまい、慌てて反対側を向けば、神官さまの手がちょうどこちらへと伸びていた。
私は怯えてもいないし、傷付いてもいないんだから。
頭なんか撫でなくたっていいのにね。
この世界しか知らなければ、まだ子どもで、私は傷ついていたかもしれないけれど。
前世分の年齢が加算されているならば、私の精神はもう大人と変わらない。
前世でも何もかも他人のせいという人がいた。
悪いことをしても、私にこんなことをさせたあなたたちが悪い。そういう価値観の人だ。
その手の人たちには関わらないことが一番。
望まず関わってしまったとして、彼らを変えようなどと思わず、出来るだけ早く離れるに限る。
だからあの日。
前世を思い出してすぐにあの小屋を出た私は正しかったんだ。
改めておばさんと対峙した今、しみじみと思うところはそれだった。
あのままこの女性に関わり続けていたら、きっと長く生きられていなかったように思う。
たとえ私に魔力があったとしても──。
「自白なし、反省の色なしと見なします。異論ある方はございませんでしょう」
今回は隣の高貴そうな人も声を掛けなかった。
誰からの発言もなく、声を出せない状態のまま、おばさんが退場していく。
自分の足ではなく、両脇に手を入れた騎士に引き摺られる形で……。
あ、女性だ。
先までの人たちと同じ白い騎士服を着ているから気付かなかったけれど、よく見ればおばさんを連れてきた人たちは女性騎士だった。
かっこいいな……。
がしっと頭を掴まれる。
そういや、まだ撫でていましたね。
で、何なんですか?
痛いんですけど?
睨んだら、にこにこと爽やかに笑う神官さまがそこにいた。
笑っているのに怖い。
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