【完結】親がいなくても、私が私を幸せにするので大丈夫です。どうぞ、私のことはおかまいなく。

春風由実

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56.本来の形

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「ただいま帰りました!」

 元気いっぱい、孤児院の玄関を抜けて挨拶をすれば。
 まずは幼い子どもたちが駆け寄ってきた。

「リリア姉、お腹空いた!」
「リリア姉のシチュー食べたい!」
「ねぇ、おみやげは?おみやげは?」
「どこに行ったの?どんなところだった?」
「何を食べてきたの?美味しかった?」

 各々好き勝手に話す子どもたちを見て、私はほっと胸をなでおろせた。


 これは杞憂だったんじゃない?


 振り返れば、少し離れたところで神官さまが立ち止まっている。
 その眉を下げた困ったような笑顔、不安になるからやめてほしい。

 そこへ奥から先生たちも現れた。

「無事戻りました!」

 いつもと変わらず明るい声を掛けられたと思う。

 あぁ……。

 いつのまにか近付いていた神官さまに頭を撫でられ、はっとして取り繕う。

「先生たちにもおみやげがあるの!みんなの分も買ってきたからね!」

 と笑顔で言えば、大騒ぎする子どもたちが抱き着いてきて。
 先生たちもやっとこちらを見てくれた。

 僅かに揺れる瞳。

 そっか。
 そうなんだね。

 マリー先生もか。

「まぁ、嬉しいわ。慣れないお出掛けで疲れたでしょう?今日はゆっくり休んでちょうだいね」

 そう告げたマリー先生が、「みんな、リリアはお疲れなのよ。今日はあまり構わないように」と言って私の周りに集まる子どもたちを散らせてしまう。

 今までだったら、ただの優しさとして受け取れたのに。
 こんな私が自分でも嫌だ。

「では、また談話室を借りても良いだろうか」

「もちろんです。どうぞお好きなようにお使いくださいませ。このたびは、リリアの保護者代理を引き受けてくださいまして、ありがとうございました。感謝申し上げます」

 マリー先生が神官さまにぺこぺこと頭を下げていた。
 それはちゃんと、私の保護者らしい姿なのに。

「リリアもゆっくりね」

 子どもたちを引き連れた先生たちが廊下の奥へと戻っていく。

 この時間、仕事が忙しいことは分かっている。
 でもね、いつもだったら……しばらくは側にいて、旅の話を聞いてくれたんじゃないかな?

 駄目だなぁ。
 私のせいなのに、責めたくなるなんて。

 私に都合よくご機嫌であるように、私が先生たちや他のみんなに影響を与えていただけ。
 悪いのは私。

 駄目だなぁ。
 それでも変わらずにいて欲しかったなんて。

 駄目だよねぇ。
 土下座しても許されないようなことを十年以上も続けてきたのに。

 談話室に移動して扉が閉まる前には、もう泣いていたと思う。
 バタンと閉まるその音を聴いてしまえば、私の口は閉じられない。

「魔力なんて要らなかったの」

「そうか」

「人を変えるつもりなんてなかったんだよ?」

「そうだな」

「勝手に酷いことをしたのに、酷いと思っちゃうのもやだ」

「リリアのせいではない」

「嘘吐き。全部私のせいだったよ」

 立っていられなくて、しゃがんで本格的に泣き出した私の頭を、神官さまはずっと撫でてくれていた。

 それから大分時間が経ってしまったと思う。


 やっと落ち着いて冷静になれば、もうここにはいられないことは分かっていた。
 泣くとすっきりするものだったね。

 みんなに挨拶し、出て行こう。

 あぁ、でも町の人たちに会うのも怖いなぁ。
 孤児院の上の子たちもまだ見ていないし。
 孤児院を出たあとも町に残るお兄さん、お姉さんたちはどうなっているんだろう?

 アレク……あのときアレクの様子がおかしかったのも、魔力の影響が薄れていたせい?

 会うのが怖い。
 ずっと仲良くしてきたのに。

 だけど会わずにさよならするのも嫌だ。

 説明出来たらいいのに。
 許して貰えなくても、謝りたかったのに。
 何度でも頭を下げて謝るのに。

 それさえ許されないなんて。

 女神さま、酷いよ。
 どうして私にこんな力を与えてしまったの?



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