【完結】親がいなくても、私が私を幸せにするので大丈夫です。どうぞ、私のことはおかまいなく。

春風由実

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75.称賛

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「それでいいよ。急に悪かったな」

「うぅん、私もすぐに答えられなくてごめんね。だけどアレクがアレクだったことが今は嬉しくて。うー」

 腕を上げたり下ろしたり、私の隣を見たりと、アレクがわたわたしているのが面白くて。
 私は泣きながら笑っていた。

 笑った私にアレクはむっとした顔をして、でもすぐに笑い出す。

「俺もリリアがリリアのままで安心したよ。お貴族様になっても変わってねぇなって。悪女にはてんでなり切れてねぇしさ」

「むぅ。どうせお貴族さまらしい悪女にはなれませんよ!孤児育ちなんだから仕方ないでしょう!」

「ははっ。拗ねるなって。そういうところ、昔から変わらねぇなぁ。口だけ女になる!とか言って、椅子の上でポーズを決め「やめて、それは忘れて!今すぐに忘れて!」」

 勢い叫んでしまった。
 やめて、それ黒歴史!

「あはは。兄貴たちはげらげら笑っていたけど、姉貴たちには大人気だったよなぁ。可愛い、可愛いって。なんでか姉貴たちの作ったレースだとかなんだとかのひらひらしたもんを片っ端から着せ替えられていたよな?俺たちには何が違うかよく分からねぇものをさ。で、着替えるたびに椅子に上がって──」

「お願いだから本当に忘れて」

「それは無理だな!リリアのことはひとつも忘れたくねぇもん。ぜんっぶ好きだからな!」

「なっ!」

 なんて恥ずかしいことをさらっと言うのよ。
 アレクは今までそんなこと言わなかったじゃない!

 せっかく戻った顔がアレクのせいでまた熱くなってしまった。

「あ……ごめんなさい。口説いているわけではないんです。いや、完全に口説いていたな。ごめんなさい、俺が軽薄でした」

「はい、謝罪は受け入れましたよ、アレクさん。ふふ。きちんと謝るべきところで謝り、気持ちの押し付けも、無理強いもせず、それどころか相手の気持ちを尊重し、困らないよう配慮もして。お世話になった方々には禍根を残さず、希望を残し立ち去ろうと……ふふふ。いいですねぇ。やはりあなたは、素晴らしい青年です」

 首を傾げつつヴァイスさんとアレクを交互に眺めていたら、アレクもよく分からないと僅かに首を捻っていた。
 あんまり手放しに褒めらても困っちゃうよね。
 アレクにとっては初対面の相手だし。

 ヴァイスさんはといえば、にこにこと笑っていて、とても機嫌が良さそうに見える。
 でもなんでかな、何か黒いものを感じるときがあるのは。
 それはアレクに対するものではない?

「アレクさん、確か他に数名、孤児院を出たあとにこの町に残り働いている方々がいらっしゃいましたね?」

「はい、ほとんどは町を出て行きましたが。運よく受け入れ先があった奴らが俺のように残っています」

 成人近くの孤児たちが、社会に出る前の勉強と称してお手伝いをすることを受け入れてくれた町の人たちも、成人して正式に働くとなれば、そう簡単に元孤児を雇用してくれなかった。

 でもそれは孤児院出身だからという単純な話ではない。
 元々この田舎町には若者が新しく就けるような仕事が少ないのだ。

 だから成人すると多くが町を出て行ってしまう。
 そんな環境下で元孤児の就職が難儀するのは当然のこと。

 これについては、私にも変えようという気持ちが少しもなかった。
 私がかつて願ったのは、孤児院の先生と子どもたちが揃ってお腹を満たせることだけ。

 成人したあとの元孤児の面倒まで見てよなんて、さすがにそれは甘え過ぎだと思うから。

 それにね、孤児院の子どもたちの多くは、まだ見ぬ町の外に希望を抱いている。
 この町にいれば働き先は限られているけれど、外の世界にはこの町にはない職業が沢山あることは、定期的に現れる商会の人たちが話してくれていた。
 町を出てあれこれ挑戦したいことがある子は多い。

 親がいないということは、親に心配を掛けないようにとか、親の意向を気にしなくていいわけで、それは孤児の利点でもあるなと感じている。
 私たちが外に飛び出す障害は基本的にはないから。

「町を変えるために是非アレクさんに残って欲しいと、私たちからお願いしたとしましょう。そのための報酬も支払うとお約束もします。それでもアレクさんは、リリアさんと一緒に出て行くことを望みますか」

「はい。俺はリリアと行きます」

 迷いなく答えられて、私が焦る。
 いや、町が変わるなら、アレクはここに残った方がいいでしょう?

 思い出話なんかしちゃって、すっかりアレクとはお別れしないような気になっていたけれど。

 私と来たって……困ることになるだけ。
 それも困るのは私の方。

 だって魔力の話が出来ない。
 だけど私はきっとアレクには話してしまう。

 ヴァイスさんなら、それくらい分かりそうなものだけれど。
 一体何を考えているの?



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