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76.疑念
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「残念ですが、いえ、喜ばしいことでしょうか?町を変えるための協力者は別の方にお願いするとして。アレクさんのお気持ちは確かに私が責任を持って受け止めました。本当ならば、この場に最初からいる方が受け止めて然るべきだったのですがねぇ──それで?あなた様は先からずーっとだんまりですか?」
ヴァイスさんがくるりと振り返ったときに、私もやっと神官さまの存在を思い出した。
いや、だけど私たち悪くないよね?
ずっと無言だったんだから、忘れていても仕方がないと思うんだけど?
魔力の無効化を頼んだのは私。
だからこの場に居てくれたことに感謝はしている。
でもそれだって今はヴァイスさんが引き継いでくれているんじゃないかな?
ほんのりと感じられたもので、確かめようはないけれど。
ヴァイスが来てから、私の周りにある空気が変わったように感じたんだ。
きっとこれが魔力なんじゃないなかなぁって捉えている。
そうだとすれば神官さまはずっとこの場所にいなくても良かったわけで。
だけど神官さまはまったく動いていなかった。
まだ同じベンチに座って、離れていてもその機嫌の悪さが伝わって来るむすっとした顔をして。
腕を組み、じっと動かずに、こちらではないどこか遠くを眺めている。
いや、よく見ると膝が揺れた。
ますますその苛立ちが伝わって来る。
いやいや、待って。
あの人はなんで怒っているの?
待ちくたびれたから?
放置し過ぎたせい?
「反応のない人は放っておきましょう。アレクさん、これからのことについて、後ほど二人でゆっくりと話したいことがあります。夕方にまたお時間を頂けますか?えぇ、悪いようにはいたしませんよ。リリアさんと共にいるために、色々と準備が必要でしてね?」
出たよ、怪しい言葉。
悪いようにはしないって、神殿で働く人たちの口癖なの?
だけど共にいるための準備って……準備してなんとかなる話ではなかったはず。
魔力のない人に魔力の話を絶対にしてはいけないって。
そうすると大変なことになるんだって脅されるように繰り返し言われていた。
それがどれだけ親しい人だとしても。
絶対に他の人には話さないと安心して約束出来る人であったとしても。
どんな相手だろうと、魔力のない人は、魔力のない人で。
魔力について話してはいけない人に変わらない。
それが魔力を持って生まれた人間が背負う責任であり、魔力を使う制約だって。
人は隠し事をして側に居続けることは難しいから、魔力を持たない人と共に生きようと願わない方がいいことも、神官さまが忠告のように伝えてくれていたことだ。
これからは魔力を持つ人たちと生きればいいって。
あぁ、そうだ。
それでますます将来が見えなくなったんだっけ。
だって私、成人したらどこで働けばいいのよ?
魔力のある人相手の職業って何があるの?
これから学べばいいって、沢山知って選べばいいって、神官さまは呑気に言っていたけれど。
あの王子さまに捕まらないように、そして孤児院やこの町の人たちに迷惑が掛からないように、ここを出た後の未来が、私には何にも見えていなかった。
神官さまたちが守ってくれるのは有難い。
でもそのまま神殿に囲われるのも違うと思っていて。
独り立ちしたい気持ちは強いのに。
どの町に行ったって、ほとんどは魔力のない人たちだ。
普通に貴族として育っていたら、私は迷わずに貴族として生きていたんだろう。
でも今さらそんな窮屈そうな世界には入りたくなくて。
でもそうしたら……私の居場所はどこにあるの?
そういう疑問をぶつけても、神官さまは私の頭を撫で回して黙秘だ。
そのうち分かるようになるって。
大人になるまでには分かるって。
どこまでも子ども扱い。
ヴァイスさんがアレクを連れて行こうとしている様子を見るに、神官さまには私が子どもだと思ってあえて話さなかったことが沢山あるのではなかろうか。
確認の意味を込めて、じーっと神官様を見ていても。
一度も神官さまはこちらを見ようとしなかった。
そうこうしている間にヴァイスさんがアレクとの話をまとめていく。
「夕方には仕事も終わっているのでそれはいいですけど……」
「ではまたのちほど。リリアさん、町の皆さまにご挨拶して回るのでしょう?保護者として私も一緒にご挨拶させていただきますからね」
「へ?」
ヴァイスさんがくるりと振り返ったときに、私もやっと神官さまの存在を思い出した。
いや、だけど私たち悪くないよね?
ずっと無言だったんだから、忘れていても仕方がないと思うんだけど?
魔力の無効化を頼んだのは私。
だからこの場に居てくれたことに感謝はしている。
でもそれだって今はヴァイスさんが引き継いでくれているんじゃないかな?
ほんのりと感じられたもので、確かめようはないけれど。
ヴァイスが来てから、私の周りにある空気が変わったように感じたんだ。
きっとこれが魔力なんじゃないなかなぁって捉えている。
そうだとすれば神官さまはずっとこの場所にいなくても良かったわけで。
だけど神官さまはまったく動いていなかった。
まだ同じベンチに座って、離れていてもその機嫌の悪さが伝わって来るむすっとした顔をして。
腕を組み、じっと動かずに、こちらではないどこか遠くを眺めている。
いや、よく見ると膝が揺れた。
ますますその苛立ちが伝わって来る。
いやいや、待って。
あの人はなんで怒っているの?
待ちくたびれたから?
放置し過ぎたせい?
「反応のない人は放っておきましょう。アレクさん、これからのことについて、後ほど二人でゆっくりと話したいことがあります。夕方にまたお時間を頂けますか?えぇ、悪いようにはいたしませんよ。リリアさんと共にいるために、色々と準備が必要でしてね?」
出たよ、怪しい言葉。
悪いようにはしないって、神殿で働く人たちの口癖なの?
だけど共にいるための準備って……準備してなんとかなる話ではなかったはず。
魔力のない人に魔力の話を絶対にしてはいけないって。
そうすると大変なことになるんだって脅されるように繰り返し言われていた。
それがどれだけ親しい人だとしても。
絶対に他の人には話さないと安心して約束出来る人であったとしても。
どんな相手だろうと、魔力のない人は、魔力のない人で。
魔力について話してはいけない人に変わらない。
それが魔力を持って生まれた人間が背負う責任であり、魔力を使う制約だって。
人は隠し事をして側に居続けることは難しいから、魔力を持たない人と共に生きようと願わない方がいいことも、神官さまが忠告のように伝えてくれていたことだ。
これからは魔力を持つ人たちと生きればいいって。
あぁ、そうだ。
それでますます将来が見えなくなったんだっけ。
だって私、成人したらどこで働けばいいのよ?
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これから学べばいいって、沢山知って選べばいいって、神官さまは呑気に言っていたけれど。
あの王子さまに捕まらないように、そして孤児院やこの町の人たちに迷惑が掛からないように、ここを出た後の未来が、私には何にも見えていなかった。
神官さまたちが守ってくれるのは有難い。
でもそのまま神殿に囲われるのも違うと思っていて。
独り立ちしたい気持ちは強いのに。
どの町に行ったって、ほとんどは魔力のない人たちだ。
普通に貴族として育っていたら、私は迷わずに貴族として生きていたんだろう。
でも今さらそんな窮屈そうな世界には入りたくなくて。
でもそうしたら……私の居場所はどこにあるの?
そういう疑問をぶつけても、神官さまは私の頭を撫で回して黙秘だ。
そのうち分かるようになるって。
大人になるまでには分かるって。
どこまでも子ども扱い。
ヴァイスさんがアレクを連れて行こうとしている様子を見るに、神官さまには私が子どもだと思ってあえて話さなかったことが沢山あるのではなかろうか。
確認の意味を込めて、じーっと神官様を見ていても。
一度も神官さまはこちらを見ようとしなかった。
そうこうしている間にヴァイスさんがアレクとの話をまとめていく。
「夕方には仕事も終わっているのでそれはいいですけど……」
「ではまたのちほど。リリアさん、町の皆さまにご挨拶して回るのでしょう?保護者として私も一緒にご挨拶させていただきますからね」
「へ?」
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