【完結】親がいなくても、私が私を幸せにするので大丈夫です。どうぞ、私のことはおかまいなく。

春風由実

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81.神官失格【神官さま視点】

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 この件を任されてあの町に向かう間に、該当の子どもが私の相手になると考えていたわけではない。
 道中どこかで未来の妻に出会うだろうと漠然と予測していただけだ。

 だから未来の妻と思ってリリアを助けたわけではない……と、じいさんの何もかもを見透かしているようなあの目に見られ、言い切ることは出来なかった。

 いつでも脳裏に浮かぶ珍しい魔力の色。

 見付けたあのとき、私は遠くからしばらく魅入った。
 相手はこの子に違いないと焦点を定めたのはあの瞬間。

 そして食べたことのない優しい味のするあの料理を口に入れたとき。
 お腹から全身を巡る心地良い魔力にまた魅せられて、この子を必ず私の妻にしようと決めていた。

 話せばすぐに渡り人であろうことに察しが付く。
 その警戒心のなさに驚きと心配を重ねながら、特別な異界の知識を持つこの子が間違いなく私の妻になるものと信じた。

 その前提ありきで動いていたのは事実だ。


 リリアが一般的な魔力を持つ子どもだったら、どうだったか?

 自分で世話をしていただろうか?


 怪しいものだと、自分でも思った。

 故に無言。

 おじいさまは何でもお見通しだというように、私に拳骨を落とした。


『神官でありながら、魅せられおって』


 まさか?


『なんだ、まだ分かっていなかったのか?ヴァイスなんぞは、お前がついに心を入れ替え、成長したかと思いひととき喜んだことを酷く反省していたぞ?』


 あまりに心地好い魔力だったから。
 少しくらいはいいだろうと、効果を弱めて受け入れてきた。

 まさか、それで?


『お前にこそ必要な魔力だったかもしれんな。しばらくはここで頭を冷やせ。そして考えろ』


 二人からの生温いあの視線。
 あれはいつもより善き人間をしていた私への……。

 顔を覆ってしばらく悶絶したが、起きたことをなかったことには出来ない。
 ヴァイスもケオも、魔力に当てられいい神官さまをしていた期間の私を、忘れてはくれないだろう。


 しかしいくら時が過ぎても。
 変わらない想いがあった。

 あの美しい魔力の色。
 あれは私だけが眺めていたい。

 あの優しい味の料理と共に全身に染み渡る美しい魔力。
 あれも私が独占したい。

 渡り人であるという語られない秘密。
 知らされる相手も私だけがいい。


 幸運なことに、リリアは未成年だ。

 まだ数年の時間がある。

 町を出て、外を見て、視野を広げたら。
 町を出てからも付き纏うあの男に惹かれる理由がないことはすぐに悟ろう。

 こうしてはいられない。
 急ぎ戻らねば。

 元は親にも愛されなかった孤児院育ちの愛情に飢えた子どもだ。
 今も視野は狭く偏っていよう。

 正しく選択出来るように、私がその視野をめいいっぱい広げてやるからな。



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