【完結】子爵家の四女として生まれたキーラ。元家族はとんでもない人たちでした。

春風由実

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1.突然の手紙 キーラ編

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 五歳。十歳。十五歳。
 この国の貴族の子どもは、王家から三度祝われる。

 この制度に、私は生かされた。


 ◇◆◇◆◇


 キーラはエンデベルク子爵家の四女だった。
 過去形で語る理由は、それが確かに過去の話だから。

 
 事情があってキーラには五歳以前の記憶がほぼない。

 よって生家のことは何一つ覚えていなかった。
 三人の姉と弟のことは元より、親の顔さえ覚えていない状況である。

 だから──。


「今さら何を考えているのかしら?」


 怪訝に眉を顰め手元に開いた手紙を見詰めていたキーラは、首を傾げた。


「まさか……知らないの?」


 キーラはとうの昔に、ウェーバー侯爵家の養女となっている。


 保護されたのち、キーラはウェーバー侯爵家に身を置いてきた。

 事情確認の呼び出しにも応じなかったエンデベルク子爵家当主は、キーラ保護から一年後に、四女キーラを育児放棄したものと見做されて、キーラの親権を手離している。
 その直後にウェーバー侯爵家の当主夫妻は、キーラを養女とする手続きを行った。

 それからずっとキーラはウェーバー侯爵家の娘だ。

 しかしこのたび訳あって、ウェーバー侯爵家を一度出て、ウェーバー侯爵家とは親戚関係にあるヘルダーリン伯爵家と養子縁組をすることになっている。


 そんなタイミングで、今キーラが手にしている手紙は届けられた。
 
 何もなくても同じように思ったであろうが、今だからこそより不気味に感じられる。


 それでも──。


「あちらは私に対する権利を何も持たないはずね?国もそれを認めているのでしょう?それなら……気にしなくていいかしら?」


 手紙は念のためにウェーバー侯爵家で保管することになっている。

 キーラは手紙を丁寧に畳み直すと、届けてくれた侍女に返した。


「私から返信はしないと伝えてくれるかしら?」


「お任せくださいませ」


「えぇ、お願いね」


 キーラは侍女の笑顔がいつもより晴れやかに見えた気がした。
 どうしたのだろうと、首を傾げていたら。

 開いたままの扉の外から声が掛かる。


「キーラ。ちょうど仕事が落ち着いたところでね。良かったら一緒にお茶をどうだろうか?」


 キーラは満面の笑みで了承した。



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