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♥選ぶもの
83.大いなる誤解
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顔を隠すヴェールの意味を説明されながら、シーラは黙々と菓子を食べていた。
王家へと嫁いだ女性は外で顔を隠す習慣があるけれど、ここは私的な空間だから問題ないこと。
それから隠す相手は男性であることや、アイリーンも結婚すれば相手の身分によっては顔を隠す可能性はあるものの、未婚の今はその必要がないこと。
以前イルハがシーラに説明したようなことを、キリムは優しく諭していく。
キリムとしてはこれもお勉強で、あなたにも関係ある話よ、と伝えたいのだが。
シーラから自分もヴェールが必要かという問いはなく、少々残念に思うキリムだった。
しかしここではそれ以上踏み込まない。
イルハとこの地で生きる意味はイルハ自身が教え込むこと、という線引きを、キリムははっきり持っていた。
しかしこのシーラの反応は、アイリーンに考えてきたことを肯定する根拠を与えてしまったようだ。
もちろんそれは勘違いであるが、キリムはそこまで察して、アイリーンに話を促していく。
「ふふ。よく食べる子でしょう。殿下も可愛がっていて執務室でも沢山食べさせているようだわ」
「左様ですか」
「えぇ、それであなたはシーラに聞きたいことがあるのよね?」
早速聞いてくれたとアイリーンは頷いて、シーラに視線を向けた。
貴族らしい回りくどい会話が苦手なアイリーンをよく見極めているキリムからの誘導を知らず、手短に話そうと決めているアイリーンだ。
シーラは食べながら、何事かとアイリーンを見返している。
「はい。不躾ながら。シーラ……嬢、酷い目に合っているのではございませんか?」
敬称をどうするか迷ったアイリーンは、シーラがキリムを真似て自身をアイリーン嬢と呼ぶので、それに合わせることにした。
しかしシーラは自分がどう呼ばれたかに気付かないほど困惑している。
それはそうだろう。
「酷い目……?」
「父が警備省に勤務しております。何か弱みを握られているのであれば、その弱みについて語る必要はありません。ただそうだと伝えて頂ければ、あとは父とよく話し合い、あなたが逃げられるようにいたしましょう」
アイリーンの鬼気迫る言い方に、シーラはすっかり狼狽えていた。
王家へと嫁いだ女性は外で顔を隠す習慣があるけれど、ここは私的な空間だから問題ないこと。
それから隠す相手は男性であることや、アイリーンも結婚すれば相手の身分によっては顔を隠す可能性はあるものの、未婚の今はその必要がないこと。
以前イルハがシーラに説明したようなことを、キリムは優しく諭していく。
キリムとしてはこれもお勉強で、あなたにも関係ある話よ、と伝えたいのだが。
シーラから自分もヴェールが必要かという問いはなく、少々残念に思うキリムだった。
しかしここではそれ以上踏み込まない。
イルハとこの地で生きる意味はイルハ自身が教え込むこと、という線引きを、キリムははっきり持っていた。
しかしこのシーラの反応は、アイリーンに考えてきたことを肯定する根拠を与えてしまったようだ。
もちろんそれは勘違いであるが、キリムはそこまで察して、アイリーンに話を促していく。
「ふふ。よく食べる子でしょう。殿下も可愛がっていて執務室でも沢山食べさせているようだわ」
「左様ですか」
「えぇ、それであなたはシーラに聞きたいことがあるのよね?」
早速聞いてくれたとアイリーンは頷いて、シーラに視線を向けた。
貴族らしい回りくどい会話が苦手なアイリーンをよく見極めているキリムからの誘導を知らず、手短に話そうと決めているアイリーンだ。
シーラは食べながら、何事かとアイリーンを見返している。
「はい。不躾ながら。シーラ……嬢、酷い目に合っているのではございませんか?」
敬称をどうするか迷ったアイリーンは、シーラがキリムを真似て自身をアイリーン嬢と呼ぶので、それに合わせることにした。
しかしシーラは自分がどう呼ばれたかに気付かないほど困惑している。
それはそうだろう。
「酷い目……?」
「父が警備省に勤務しております。何か弱みを握られているのであれば、その弱みについて語る必要はありません。ただそうだと伝えて頂ければ、あとは父とよく話し合い、あなたが逃げられるようにいたしましょう」
アイリーンの鬼気迫る言い方に、シーラはすっかり狼狽えていた。
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