【完結】あなたを愛するつもりはないと言いましたとも

春風由実

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35.夫人として大失態をおかしました

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 ゆっくりと夕食の時間までお話することになっていました。
 えぇ、本当は夕食時はもちろんのこと、夕食後もまた昨夜のように沢山話をしましょうね。
 そうユージーン様と約束していたのです。


 私はなんて駄目な夫人なのかしら。


 まだ薄暗いうちから、鳥が朝の知らせを運んでいます。

 キーキーと知らぬ鳴き声に、一瞬ここがどこか分からなくなって寝ぼけた私は武装し掛けましたが。
 それが鳥の声だと思い出して耳を済ませているうちに、故郷から遠く離れた場所にいるのだなぁと朝からしみじみと実感し、胸に熱いものがじわーっと広がるようなことも起きていました。

 遠く離れ、鳥が違っても、朝陽が昇る直前から鳥は鳴き始めるのですね。
 鳥の習性も気になります。


 が、今はそれどころではありません。
 なんたる失態……。
 

 昨日はさぁお話をというところで、私の腹痛がはじまりまして。
 顔には出さないようにと耐えておりましたら、何故かすぐにユージーン様がお気付きになられてしまいました。

 侍女たちも急いで楽な身支度を、横になりましょう、と動き始め。

 お医者様まで呼んでくださったのですが。

 あのよく話題に出ていた侍医の方に来ていただけるとのことで、朝の散歩でお会いする近距離にお住まいですのに、意外とすぐには来ないのですねと思う余裕もありました。
 ユージーン様が迎えに行って来いとタナトスに叫ばれたときには、それはもう申し訳なく思い、あとで謝罪とお礼をと考えていたところです。

 いつの間にか、私はソファーに座った状態からパタンと倒れてしまったようで。
 もちろん、そのときのことは何一つ覚えてはおりません。

 その後すぐに目覚めた私は、ベッドの上でお医者様に診察していただきました。
 そのときには着替えも済んでいて、侍女たちの素早い動きに感心出来る余裕がやはりあったのです。
 

 結局腹痛の理由は……えぇ、食べ過ぎでございます。


 長旅の疲れや慣れない環境のせいもあるかもしれない、とは言っておりましたけれど。
 最たる原因は食べ過ぎでしょう、と。
 お腹が膨らむほどに食べることは間違いであるし、ハーブなどそう沢山重ねて食べるものではない、薬にもなるものだから量は考えるようにと、お医者様からきつく言い聞かせられる事態に、私は狼狽えました。

 それから薬を頂き、しばらく休むことになったのですが。
 まさか、こんなに長く寝てしまうだなんて。

 おかげさまでお腹はもうぺっこぺこでございます。
 すっかり調子は戻りまして、いくらでも食べられそうな身体の軽さですが、今日こそは食べ過ぎないように厳重に警戒せねば。


 それよりもですよ。

 私は手で両の頬を押さえ悩みました。


 どんな顔をしてユージーン様にお会いしたらいいかしら?

 それに侍女たちも。タナトスも。

 夫人として大失態をおかしたあとですから、まずは謝罪でしょうか?
 誠心誠意謝って、それから夫人として改めて頑張る旨を力説し。それから──。


 焦っていたら、不意に人の気配を感じました。


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