【完結】あなたを愛するつもりはないと言いましたとも

春風由実

文字の大きさ
77 / 96

77.侯爵夫人として仕事の予約が入りました

しおりを挟む
 鍛錬前はいつも笑顔がきらきらしていたエリクお兄さま。
 鍛錬を終えたあとは、不思議と姿を消してしまい、見えなくなってしまうエリクお兄さま。

 懐かしいですねぇ。

 エリクお兄さまが領地から出て行かれ寂しく思っておりましたところに、ここにいる二人が同時期にやって来たのでした。
 遊び相手が増えたことに、私はとても喜んでいたことを思い出します。

 ジンの性別を勘違いした件から、何故か皆様口を揃えて「女の子と遊ぶときは相手に合わせるように」と言うようになりました。
 それ以来、男の子相手にしか、私の遊びには誘うことはなくなったのですが。
 
 そう考えると、ジンが男の子で良かったのかもしれません。
 その後も沢山の男の子が領地にやって来ていたものでした。

「気に入らん──まさか本気で妹にする気で考えていたのではあるまいな?」

「ちょっ。僕を睨むのはおかしいって。兄のことだから単に年下の女の子から呼ばれてみたかったとか──。あぁ、だから。僕を睨むのはやめてよ!僕は知らないってば!」

「唆されてはあるまいな?」

「僕にミシェルは無理だって!」

「無理とはなんだ!何故選ぶ立場にいる!」

「ミシェルだって僕は無理だよ。ねぇ、ミシェル」

「人の妻の気持ちを勝手に推し量るな!」

「えぇ~、なんて言えばジンは満足するのさ」

 私が過去を懐かしく思い出しておりましたら、何故かジンとハルが揉めていたのです。
 無理とは一体……?

 考えていましたら、お母さまが助け船を出してくださいました。

「落ち着きなさい。わたくしたちからもあり得ないことですよ」

 お母さまが強めに言うと、二人の会話は止まりました。

「それはそうだよ。ジン、よく考えてみて。王妃や王弟妃が心を秘められなくてどうする?」

 王妃?王弟妃?一体何の話をしておられるのでしょうか?

「そこが素晴らしいところだ!」

「いや、悪いと言っているのではなくてね?ちゃんと聞いてよ?考えてみたら分かるでしょ?」

「嫌だ。少しの想像もぞっとする」

 ジンに横から頬を撫でられました。
 食事中に何をしておりますの?

「ま、そういうわけで。の子がそのうちこっちに来るからさ、しっかり鍛えてあげてね」

 どういうわけかは分かりませんが、エリクお兄さまにはお子様が生まれていたのですね。
 その前に結婚されていたことも知りませんでしたが。

 そういうことでしたら。

「分かったわ!任せて!」

 ここでジンが「何故ハルには敬語でないのか」と零しておりました。

 そういえば、何故なのでしょう?
 ハルには昔の面影が強く残っているせいかしら?

 ジンは容姿もすっかり変わりましたけれど……そういえば口調も変わっていますね。
 そうです。きっとそのせいです。

 昔はもっと柔らかく、それこそ女の子のように、そうまさに天使の言葉で──。


 ごほんごほんとジンがまた咳をします。
 いよいよ心配になってきました。

「とにかく。私にも敬語でなくていいからな?」

「はい、分かりました」

 あら?もう間違えてしまいました。

「まぁ、うん、それもおいおい──ハル、に言っておいてくれ。私が責任をもってを厳しく鍛えるとな」

「君ねぇ……。あの子たちのためにもやはり伯の方へ……いやぁ、あっちもアルがな……うん、どっちがマシなんだろうな?」

「あら、わたくしどもを選ばれました暁には、どちらがマシかと考えることが出来ないようご満足差し上げましてよ?」

「はは……今のはその……言葉の綾というものでね……あはははは」

 ハルは大きな笑い声を上げながら、視線を泳がせ頬を掻いておりました。



 それは最後のデザートを楽しんでいるときのことです。
 今夜のデザートは、果物とクリームがたっぷり乗ったプリンでした。

 そういえば、ジンはご褒美が欲しいのかしら?
 ちらと顔を窺えば、口元を押さえて固まっておりました。

 これはどちらでしょう?
 私としましては、このプリンを死守したいところなのですが。

「おかわりはあるから、ひと──」

「さて、ミシェル」

 ここで急にお母さまが声を大きく言いました。
 叱られるのかと思って、自然に姿勢が伸びてしまいます。

「あの二人が大人しく寝ている間に話したいことがございます。お父さまの手紙のこと、それからあなたのご両親についてです。聞きたいですね?」

 お母さまが寝ていると言うと、何か不穏な想像が働いてしまいますね。
 扇で誰かが倒れて眠らされているときの──。

「ミシェル?」

「はい!お聞きしたいので、お話をお願いします!」

 私はぴんと伸ばせる限り背筋を伸ばして、懸命に答えたのです。
 しっかり聞きますとも。聞きますから。そんな凍えそうになる目で見ないでくださいませ。

 こういう素敵な瞳は、横から見ているのが一番いいのです。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする

夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、 ……つもりだった。 夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。 「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」 そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。 「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」 女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。 ※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。 ヘンリック(王太子)が主役となります。 また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。

《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃

ぜらちん黒糖
恋愛
​「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」 ​甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。 旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。 「それは本当に私の子供なのか?」

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」 結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。 彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。 身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。 こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。 マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。 「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」 一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。 それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。 それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。 夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。

婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?

すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。 人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。 これでは領民が冬を越せない!! 善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。 『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』 と……。 そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。

処理中です...