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夢から覚められない私

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 今度こそと思って目を覚ましましたのに、見える景色が変わっておりませんでした。
 それどころか、お医者様に診ていただいたあとも、殿下は部屋から出ていきません。
 あろうことか部屋には二人きり。

 もう婚約者候補でもない私と扉の閉じた部屋に二人だけで過ごしていては、大変お困りになると思うのですが。
 何故侍女が一人もいないのでしょう。
 殿下の侍従はどうされましたか。

 共に学んできた殿下がこれを知らないことはありません。
 私は大変困惑していました。

「マリー。このまま改めて求婚させて?」

「きゅ……」

 私はついにおかしくなってしまったようです。
 口をぱくぱくと動かしても言葉が出て来なかったから。

 お医者様は心労がたたったのであろうと、薬を飲んでよく休めば問題ないと仰っていましたのに。


 ベッドに座る私の前に殿下が跪きました。
 そのようなことを殿下はしてはいけません。

 それなのに殿下は体勢を気にされることもなくそのまま私の両手を取って……どうしてこんなにも震えているのでしょうか?
 きっと私の手が震えているのだと思います。今日は何度も震えてきましたもの。
 けれどもこれでは、どちらの手が震えているのか分かりません。

 殿下が私を見上げています。


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