厄災の王女の結婚~今さら戻って来いと言われましても~

春風由実

文字の大きさ
13 / 61
第一章 厄災の王女

12.おしゃべりな王女

しおりを挟む
 時間を作りフロスティーンと共に食事をするようになってから、ゼインが真っ先に感じたことは。


 ──意外とよく話すな。


 これである。
 それから何度も共に食事をしてきたゼインであるが、変わらず今もそのように感じていた。

 それこそ食事中は口数少なく、「天に召された」だとか、「ここは天上」だとか、時折分からない言葉を呟くフロスティーンであったが。
 デザートも食べ終えて落ち着けば、自らよく話したのだ。 


 ──本当に妙な女を受け入れてしまったものだな。


 それもまた最初から一貫してゼインが感じているものであった。
 ただし初回に抱いた後悔の念は、徐々に薄れてきている。


 こうしてゼインにもまだ理解が難しいフロスティーンから、今日出て来た話題。


「王妃の権限ね。知ってどうする気だ?我が国を好きなように動かすか?」


 探るようにゼインが聞き返したところで、いつだってフロスティーンは怯えを見せない。
 はじめは表情の変化が乏しいだけかと考えてきたゼインだったが、フロスティーンには一部の感情が欠落しているのではないか、今のゼインはそのように捉えている。

 単純に分からない者を前にして、ゼインがそう思いたかっただけかもしれない。


「把握しておきたかっただけです。サヘラン王国での王妃の権限と業務内容につきましては存じておりますが、こちらの国のことは知りませんでしたので。今後、業務に携わる際に、越権行為を避けて義務を確実に遂行出来るようにと考えました」


 知れた限りの生い立ちから想像出来る王女が、ゼインの前にはいつもいなかった。
 予想外にフロスティーンは教養を身に着けた王女だったのである。


 ──知れば知るほど、サヘラン王家の目論見が分からなくなるな。


「もしやこちらの国の王妃とは、子をなすことだけを求められているのでしょうか?」


 考察に忙しくすぐに答えなかったゼインの様子から勝手に察したフロスティーンがそう言うと。
 何故か視線が集まって、ゼインは眉を顰めることになった。


 ──どうして俺がそのような生温い視線を受け止めねばならん?見るなら軽々と子がどうのと口にしたフロスティーンの方だろう?


 子をなすことだけを求められても構わない。
 フロスティーンの無表情がそう語っているように感じられたゼインは、自分だけが表情を崩したことも面白くなくて、いつもより素っ気ない言い方で答えてしまった。


「確かに子をなすことは必要だ。だがそれは権限ではなかろうな。言うならば、義務か?」

「義務ですね。かしこまりました」


 ──淡々と言ってくれたな?あの男たちではないが、祖国で手を出されていたということではあるまいな?


 診察を受けさせた後であるのにその身の清らかさを訝しみはじめたゼインに、「陛下?」と小さいながら女性の低い声が思考を止めるよう牽制してくる。


 ──別に疑ったわけでは……俺はただ……報復について考えていただけでな?


 と、声に出さず心の中だけで侍女には言い訳をして。

 ゼインはフロスティーンに問われたことについて、ようやく真面に考え始めた。
 しかし結局は自分では分からなかったので。


「王妃の権限か。特にこれまでも明言されていなかったと思うが。どうだ?」


 回答は人任せにするゼインである。




しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない

春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。 願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。 そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。 ※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい

春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。 そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか? 婚約者が不貞をしたのは私のせいで、 婚約破棄を命じられたのも私のせいですって? うふふ。面白いことを仰いますわね。 ※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。 ※カクヨムにも投稿しています。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした

凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】 いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。 婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。 貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。 例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。 私は貴方が生きてさえいれば それで良いと思っていたのです──。 【早速のホトラン入りありがとうございます!】 ※作者の脳内異世界のお話です。 ※小説家になろうにも同時掲載しています。 ※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない

鈴宮(すずみや)
恋愛
 孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。  しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。  その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

処理中です...