【完結】デュラハンは逃走中-Dullahan is on the run-

コル

文字の大きさ
59 / 75
8章 二人の病気と看病

アースの書・レインの書~病気と看病・4~

しおりを挟む
 ◇◆アース歴9年 7月14日◇◆

 鍛冶屋に俺の頭を預けられて早5日目……待ちに待った日がやっと来た。
 職人の手によって頭の凹みは無事に直った。
 直ったから……ラティア! 早く回収しに来てくれ!
 動けないのは本当に辛いんだ!

「こんにちは~」

 この想いが通じたのか、ソフィーナさんが店の中に入って来た。
 という事は――。

「コンニチハ~……」

 ソフィーナさんの後ろからラティアが顔をのぞかせた。

『ラティア!! 来てくれたんだな!!』

 ラティアの顔色も良い。
 元気になって良かった!
 あと迎えに来てくれて、本当にありがとう!

「……らっしゃい」

「この前頼んだ、アーメットの修理は出来ました?」

「……ああ。出来ているよ」

 職人が俺の頭を持ち、カウンターの上に乗せた。

「……これで良いか?」

「おお、すごい!」

「綺麗ニナッテマ~ス!」

 2人が驚いている。
 それもそうだろう。
 この職人は俺の頭のボロさに何か思うところがあったのか、やたらと手を入れていた。
 頭の凹みはもちろんの事、汚れや錆も丹念に落としてくれたからな。

「……修理費用は600ゴールドだ」

 前と違って、今回は相場よりちょい高いな。
 まぁ色々としてくれたし、これは仕方ないか……。

「ワカリマ~シタ。ハイ、600ゴールド」

 ラティアは代金を払い、俺の頭を受け取った。
 ああ……ラティアが着ている俺の体……なんか懐かしいな。

「……まいどあり」

「アリガトウゴザイマ~シタ」

「どうも~」

 ラティアとソフィーナさんは職人に会釈をし、店から外へと出た。

「本当ニオ何カラ何マデ世話ニナリマ~シタ。アリガトウゴザイマ~ス」

『俺からも、ありがとうございます!』

 俺の声は聞こえてはいないが、ちゃんとお礼は言わないとな。
 こういうのは気持ちが大事だ。

「……うん」

 ソフィーナさんが生返事しながら俺達をじっと見つめてきた。
 どうしたんだろう? 何かを怪しんでいる……って感じでもないな。

「? ドウカシマシタ~カ?」

「あ、いえ……アーメットだけ綺麗になったせいで、着ているプレートアーマーの方の汚れが目立つなと……」

『あっ』
「アッ」

 俺も昔、同じ事を思った事があるからよくわかる。
 そして1度そう思ってしまうと常に気になってしまうんだよな。

「ア~……エ~ト~……」

 ラティアがどうしましょう? という感じで俺を見ている。
 うー……そう言われたら体の方も綺麗にしたい……したいが……。

『……先を急ごう』

 体を預ける。
 つまり、また動けない状態に陥ってしまうという事。
 しかも今度は全身だからより長い時間動けない可能性がある。
 5日でおかしくなりそうだったのに、それ以上なんて考えたくもない。
 なら、このままの方がまだいい。

「ゴ意見アリガトウゴザイマ~ス。デスガ、次ノ目的地ニ向カワナイトイケナ~イノデ……」

「あ、そうですよね。変な事を言ってすみません。では、お元気で」

「ハイ。ソフィーナサンモ」

 ソフィーナさんと別れを告げ、俺達はヴァルガの入口へと向かった。

「……うウ……あんなに良くしてもらったのに、ソフィーナさんに対して偽っていた事に心が痛みまス」

 俺の中でラティアが嘆いている。
 ……これはなんて声を掛けたらいいものか。

(あの人間も仮面を着けて素顔を出していなかったし、それはお互い様ぢゃないの?)

 エイラの言う事にも一理あるが。
 それをお互いさまで片付けて良いのだろうか……。

『「う~ん……」』

 色々とモヤモヤを残しつつも、俺達は北の大陸へと向かうのだった。



 ◇◆アース歴9年 7月15日◇◆

「やっと見つけた!!」

 占い師の家に向かう途中、聞き覚えのある声で足を止めた。

「あら、ジョン」

 声の主はジョンこと、ジョシュアだった。
 思ったより、ヴァルガに到着するのが早かったわね。
 もっと到着するのが遅くなると思ってたわ。

「あら、ジョン……じゃないよ! もうー心配したんだから……勝手に行動しないでよ!」

 アタシを見つたジョシュアが叫びながら傍まで駆け寄ってきた。
 それにしても流石は狩人ね。
 この人だかりの中、すぐにアタシ見つけ出すとは……。

「あははは……ごめんね。色々あって、いてもたってもいられなくてさ~」

 平謝りをするアタシに対して、ジョシュアは呆れた顔をした。

「もう……で、この町に何があったの?」

「占い師に会いに来たの」

「…………はい?」

 アタシの言葉にジョシュアが一瞬固まった。

「占い師って……いやいや! レ……ソフィーナって占いを信じないタイプだったじゃないか!」

 まぁあの占い師以外は今でも信じていないんだけどね。

「変わったのよ。で、今からその占い師の家に行くの」

「今からって……はあ!? まだ占ってもらってないの!? マレスを出てから何日たつと思ってんの!」

「うるさいわね! 色々あったのよ! 本当に色々と!」

 こっちだって大変だったんだから。

「そんなにうるさく言うんだったら連れて行かないわよ!」

「いや、でもさ……」

 アタシ達はギャ~ギャ~騒ぎながら占い師の家へと向かった。



「こんにちは~」

「おお、お嬢さん来たか。見ておくれ、さっき届いたこの水晶の輝きを!」

 家に入ると椅子に座っていた占い師が立ち上がり、テーブルの上に置いてある丸い水晶に指をさした。
 おお、ついに完成したんだ。

「お~! ついにやりましたね」

「……何? 何なの、これ?」

 状況がわからないのか、ジョシュアが入り口で茫然としている。
 説明してあげたいけど……今はそれよりも占いの方が優先!

「じゃあ、さっそく占いをお願いできますか?」

「うむ、いいじゃろ。何を聞きたいんじゃ?」

 占い師が椅子に座り、水晶へ手をかざした。
 マレスで見た光景と同じね。
 けど、聞く事は違う。明日の運勢なんかじゃない。

「アタシの……追っているデュラハンは今どこにいるか教えてほしいの」

「そうかそうか、デュラ………………は?」

 占い師が怪訝な顔をしてアタシの顔見た。
 何でそんな顔をするかな。

「だから、デュラハンが今どこにいるのかを聞きたいんですよ」

「まさか、探しておったのはモンスターだったとは……う~む、人探しならあるがモンスター探しは初めてじゃな……まぁやるだけやってみよう……ルイニコドハンハラデュ! ヨウショイス! ヨウショイス!」

 出た、変な呪文を唱えつつ水晶に手をかざす行為。

「水晶が光り出した……」

 水晶が徐々に光り出すのを見て、ジョシュアが驚いている。

「カアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 占い師の叫びと共に、光っていた水晶の光が収まっていく。
 さて、今回の結果はどうなのかしら。

「ふむ……残念じゃが、今は移動しているみたいで今どこにいるのかわからなかった」

「……え? 箇条じゃないんですか?」

 アタシはてっきりまた箇条で言うのかと思っていた。
 だから、場所がつかめなかった事よりもそっちの方に引っかかってしまった。

「それは運勢じゃ。人……いやモンスター探しとは別じゃ」

 ええ……なんか納得がいかないんですけど。
 とはいえ、これ以上そこで拘っていても仕方ない。
 本題に戻ろう。

「移動して場所がつかめないのはわかりました。じゃあ、どこに向かっているんでしょうか?」

 お願い、そこはわかって。
 じゃないと完全に手掛かりが途切れちゃう。

「やってみよう……ルイテッカムニコドハンハラデュ! ヨウショイス! ヨウショイス! ――カアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 アタシは固唾をのみ、水晶の光が収まるのを待った。
 なんかドキドキする。

「………………船、雪国、お爺さんの姿が見えたぞ」

 船……雪国……それにお爺さん?
 まるで意味が分からない。

「船に雪国って、もしかして北の大陸への事? ソフィーナ、こんな占いを信じなくていいよ。デュラハンがわざわざ海を渡って北の大陸に向かうわけないじゃん」

 う~ん、ジョシュアの言う通り。
 北の大陸に行く目的が……ん? 待てよ、お爺さんってもしかして……オリバーの事なんじゃ!
 オリバーの爺さんが今北の太陸にいて、それを知ったデュラハンが向かっているという事だわ。

「……行きましょう。北の大陸に! 色々とありがとうございました!」

 だとすると、オリバーの爺さんが危ない!
 ぐずぐずしていられない、早く向かわないと!

「これ少ないですけど、お礼です!」

 アタシは500ゴールドをテーブルの上へ置き、占い師の家を飛び出した。

「はあ!? ちょっと待ってよ、ソフィーナ!! おーい!」

 目指すは北の大陸!
 待っていなさいよ、デュラハン!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...