【完結】デュラハンは逃走中-Dullahan is on the run-

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9章 二人の航海

アースの書~航海・1~

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 ◇◆アース歴9年 7月16日◇◆

 俺達はヘイデンへと到着をした。
 流石は港町、大小さまざまな船が港に停泊している。
 どの船に乗ってザレスまで船旅をするのだろうか。
 いやーなんかテンションが上がって来るな。

『よし! それじゃあさっそく船に……』

「ねぇ~……いい加減姿を消しているの辛いんだけど?」

 もはや耳元でなく真横で声を出して来たエイラ。
 周りがにぎわっているからエイラの声に不審がる人はいないけど、気を付けてほしいな。

「あ~……そうですネ。エイラも、ここなら姿を現してもいいんじゃないでしょうカ?」

 俺の中に居るラティアも賛同している。
 確かに、ここ数日間は色々あってずっとエイラは姿を消していたままだった。
 姿を消している間のエイラは、物や人にぶつかって自分の存在がバレない様に色々神経を使っている様な事を言っていたしな……。

『そうだな』

 流石にレインもここまで来るわけがないし、エイラが姿を出しても大丈夫だろう。

「いいの!? やった!」

『声が大きいって! そこの路地裏に入るまで姿を出すなよ!』

 この感じ、今すぐ姿を現しかねん。
 こんな人が多いところで突然エイラの姿が出てくると、大騒ぎになるのは目に見えているぞ。
 俺達は大急ぎで路地裏へと入った。
 路地裏に人は無し……よし、大丈夫そうだな。
 俺は道具袋を地面に置き、姿を現している時にエイラが着ていたローブを探した。

『ローブはどこだ……どこだ……あった』

 袋の中から前にエイラが着たローブを取り出す。
 するとローブが宙を舞い、ローブの中からエイラの姿が現れた。

「これで良しっと」

 エイラの姿を見るのはすごく久々な気がするな。

「――ハッ! あっあのノ……ついでみたいで申し訳ないのですガ、私もここでアース様を脱いでも良いですカ?」

 珍しいな。
 ラティアから俺を脱ぎたいと言い出すなて。

『ああ、別に構わないぞ』

 ここは港町、潮風を直接感じたいとかだろう。
 今は問題があるわけでもないしな。

「ありがとうございまス。(危なかっタ……船酔いをしてしまう可能性がある事をすっかり忘れていたワ。もし、アース様を着た状態で吐いたりでもしたラ……想像しただけで恐ろしイ……)」

 ラティアの心の声がつい口から漏れだしてしまったのを俺はしっかり聞いてしまった。
 うん……俺もそれは勘弁して頂きたいです。
 ラティアは俺を脱ぎ、いつものダボダボローブを羽織った。

「お待たせしましタ。それでは乗船券の売り場に向かいましょウ」

「お~」

『だな』

 それにしても、こうして3人で歩くのもまた久々だな。



 しばらく俺達は港町を歩いたのち、乗船券の売り場まで来た。
 俺は声が聞こえない、エイラに頼むのはなんか怖い。
 必然的に乗船券を買うのはラティアになってしまう。
 こういったちょっとの事でもラティアに頼るしかないのが何とも歯がゆいな。

「すみませン。ザレスまで3人でお願いしまス」

「はい、ザレス行きで3名様ですね。3600ゴールドになります」

 うへ、1人1200ゴールドもするか。
 流石は船代、いい値段するな。
 ……エイラが姿を現さず、ラティアも俺の中にいたら1人分の1200ゴールドで行けたって事だよな。
 なんかちょっと損した気分が……いやいや、なにセコイ事を考えているんだ俺は!

「ん? アースどうしたの? 自分の頭を小突いたりしちゃって」

『いや……やり方によっては、1人分の値段で船に乗れたなーと思ってしまった自分が情けないなと……』

「え、今更なに言っているの? 今まで宿屋代や馬車代って、ラティの分だけしか出してないぢゃん」

『…………あっ!』

 言われたらそうだった! なんでもっと早く気が付かなかったんだ!
 俺って本当に馬鹿すぎるぞ……。

「……これがザレス行き、俺様の船6代目号の乗船券です」

『ん? 今、販売員はなんて言った?』

 俺様の船とか何とか言っていた気がしたんだけど。

「今なんト……?」

 ラティアも俺と同じような事を思ったらしく、販売員に聞きなおしている。

「俺様の船6代目号。船の名前です」

「船の名前ですカ!?」

 なんという名前を船に付けているんだよ。
 主張が激しいにもほどがあるぞ。

「しかも6代目っテ……あノ、初代から5代目はどうなっテ……」

「…………出航は明日になりますので、乗り遅れないように気を付けて下さいね。はい、次の方どうぞ~」

 販売員はラティアの言葉を遮る様に乗船券を渡し、後ろに並んでいる客を呼んだ。

「ですかラ、初代かラ……」

「はい! 次の方!」

 駄目だな、明らかに話したくないのがわかる。

『これはもう話してくれないな。行こう、ラティア』

「あ、はイ」

 ラティアは腑に落ちない感じで俺達の傍まで戻ってきた。
 初代から5代目に何があったんだろう……。

『にしても、出航は明日か』

 気持ち悪い感じはあるものの、話を聞けない以上どうする事も出来ない。
 ここは気持ちを切る変える方がいいな。

「はイ。ですかラ、今日の所は宿に泊まるしかないですネ」

 ちょっと予定外だったな。

「あ、あそこって宿ぢゃない?」

 エイラの目線を追うと宿屋の看板があった。
 とりあえず今日の所は一晩しのげればいいし、あそこにするか。

『よし、今日はあの宿に泊まるとしよう』

「はイ」

「わかった~」



《おい! テメェやるってか!?》
《上等だ! やってやろうじゃないか!》

 宿屋の前まで来ると宿屋の中から怒声が聞こえてきた。
 恐る恐る宿屋の扉を開け中を覗いて見ると、多数の人と男が2人揉み合っていた。
 どうやら1階が酒場で、2階が宿屋になっているタイプの様だ。

『なんかガラの悪い奴等が騒いでるな……』

「このっ!」

「ぐっ!」

 ガタイがよく髭もじゃで右目に眼帯を付けた男がオーウェンの様な大男を殴り飛ばした。

「いてぇなこの野郎!!」

 殴られた大男は立ち上がり、眼帯の男に飛びかかった。
 そんな男2人が暴れているせいで店の中はもうめちゃくちゃだ。
 この店の主人らしき男も頭を抱えている。

『……別の宿屋を探そうか』

「……そうですネ」

「……あ~しもそれに賛成」

 俺達はそっと扉を閉め、別の宿屋を探した。



 ◇◆アース歴9年 7月17日◇◆

 翌日、船の出航時間に合わせ俺達は港へと向かった。
 そして俺様の船6代目号と書かれた船の前まで行き、俺達3人は固まってしまった。

「乗船ありがとうございまーす!!」

「あざーす!!」

 ガタイがよく髭もじゃで右目に眼帯を付けた男とオーウェンの様な大男。
 その2人が俺様の船6代目号へと誘導していた。
 そう昨日酒場で暴れていた男達だ。

『あいつ等、この船の船員だったのか……』

 あの船って本当に大丈夫なんだろうか。
 そう思っていると、老人が男2人に話しかけていた。

「あの、わしは船に乗るのは初めてなんですが……大丈夫でしょうか?」

 それを聞いた2人はとびきりの笑顔を作り、肩を組み合った。

「大丈夫です! 俺様の船6代目号はすごく頑丈ですから! それに、船長であるこの俺様と――」

「副船長である俺がいれば、モンスターが出ようが嵐が来ようが何も問題ありません! ですから安心してくだせぇ!!」

 まさかの髭もじゃ眼帯が船長。
 まさかの大男が副船長。
 果たして俺達は無事にザレスへと着くのだろうか……とても不安だ……。
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