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9章 二人の航海

アースの書~航海・2~

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 不安を持ちつつも俺達は、俺様の船6代目号へと乗船をした。
 思った以上に船全体は奇麗に清掃されているな。
 大型の帆船、船の名前、あの船長に副船長……何となく汚れがあったり、どこか壊れていたりしていそうだと勝手にイメージをしていたが失礼だったな。

「え~ト……205番号は……あ、ここですネ」

 船内の通路を進みラティアが足を止めた。

『あ、部屋だったのか』

 俺はてっきり大部屋で雑魚寝をすると思っていた。
 だから、人目には注意しないと思っていた。
 部屋だとかなり軽減されるから楽だな。

「はイ。この船は全室4人部屋みたいです」

 なんだ、俺達だけで使えるわけでもないのか。
 俺達は3人だから、後1人は他人が入って来ると……結局は注意して航海しないといけないな。

『後1人この部屋に入って来るから、大人しく静かにしているんだぞ』

 俺はエイラの方を向き注意を促した。

「なんで、あ~しを見るのさ?」

 これは自覚を持ってない。
 となると、俺とラティアで頑張ってフォローしないといけないな。

「……その辺りの心配はなさそうでス」
 
 部屋の中を覗いたラティアがポツリと言った。
 心配はいらないとはどういう事だろ。
 ラティアが部屋の中に入り、続いて俺も部屋の中へと入った。
 部屋の内装を見た瞬間、ラティアの言葉の意味が分かった。

『なるほどな……たしかに、4人目は気にしなくて良さそうだ』

 室内には左右に置かれた2段ベッドと荷物を入れる棚が置いてあった。
 4人目を気にしなくてもいい理由は右に置いてある2段ベッド。
 上の部分がには大きな穴が空いていて、とてもじゃないがそこで寝られる状態ではない。
 張り紙も貼り付けてあって【上段は使用禁止】と書かれている。
 使用禁止とわざざわ書かれなくても誰も使わないよ……。
 このままという事は何かあったんだろうな、修理費がないとか……まぁいずれにせよ、俺達には好都合だ。
 


 俺様の船6代目号がヘイデンを出港してしばらくたった。
 今の所、船は順調に進んでいる。
 問題があるとすれば……。

「……うウ……」

 船酔いをして2段ベッドの下の段で寝込むラティアと。

「……うう……」

 そして、同じく船酔いをして上の段で寝込むエイラだ。
 俺は元々船酔いはしないタイプだからなんともないが、2人を見ていると相当つらそうだ。
 ラティアはともかく、エイラは空中に浮けるから船の揺れなんて何も問題もない。
 しかし、エイラは「せっかく船乗るんだから、それを楽しまないとね!」と言い、空中には浮かず最初は船旅を楽しんでいたが……結局はこの有り様だ。

「……船酔いが……こんなにも……辛かった……なんて……」

 船酔いから逃れようと空中に浮こうともしたが、船酔いの気持ち悪さのせいで飛ぶ事に集中出来ないらしい。
 最初から浮いていればこんな事にはならなかったのにな。
 まさに自分で自分の首を絞めるとはこの事だ。
 まぁエイラらしいといえばらしいけどな。

「……うう……ぎもぢわるいよ……」

「……うウ……うプッ!!」

『……』

 果たして2人は約3日の航海を耐える事が出来るのだろうか……。



 ◇◆アース歴9年 7月18日◇◆

 今日も快晴。
 海も穏やかだ。

「……ううウ……」

「……み、水……うう……」

 ただ、この部屋は穏やかではない。
 ラティアとエイラは相変わらず2段ベッドの上下で唸っている。
 まるでゾンビのようだ。

『はあ……水なら貰って来るから、ちょっと待ってろ。あとスープか何か食べやすい物がないかも聞いてくるよ』

 食欲がないからとラティアとエイラは朝ご飯を口にしていない。
 タフなエイラはともかく、ラティアの方は何も食べないのはまずいからな。

「……あっあり……がと……」

「……ありがとウ……ござい……まス……」

 俺はベッドから立ち上がり、部屋の外に出ようとした瞬間――。

『うおっ!! なっなんだ!?』

 いきなり船が大きく揺れ始めた。

「いやああああああああああ!! 揺らさないでぇええええ!!」

 エイラは叫びちらかし。

「……」

 ラティアの方はもう何もかも諦めたのか、無言でされるがままの状態になっている。
 っと、今は現状把握をしないと。
 俺は急いで部屋の窓際へ行き、外を見た。

『……んん? これはどういう事だ』

 外は快晴のまま。
 海が荒れている様子は全くない。
 しかし、この揺れは尋常じゃない。

『俺は外に出て様子を見て来るから、2人はここで待っていてくれ!』

「……ああい……」

「……」

 俺は部屋から飛び出し、甲板へと向かった。
 甲板に出ると数人の乗組員が海から飛び出した6本の大きく太い触手と戦っていた。
 赤黒くて吸盤の付いた触手……タコ型モンスターのクラーケンか!

「足の1本にバッテンの傷跡……船長……奴ですぜ……」

「……ああ」

 船長と副船長が銛を握りしめ、薄笑いを浮かべている。
 え、なにあの薄笑いは……。

「……俺様の船初代から5代目の仇、今回こそとってくれるわ!」

『はあ!?』

 ちょっと待て!
 あんた等の船、全部あいつに沈没させられてたのか!?
 しかも、そうなるとこれで6度目って事だよな!
 一体どんな恨みをあのクラーケンからかったんだよ!!
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