ラグジュアリーシンデレラ

日下奈緒

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第1話 また今度

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「……はい。」

恐るべし、斉藤さん。

って言うか、いつも助けて貰っているから、斉藤さんにはウソつけない。


そして12時。

「お疲れ様でした。」

斉藤さんに声を掛けると、親指をグッと立てていた。

なんだか、緊張する。

私は着替えると、ビルの正面玄関に着いた。

井出さんはまだ、来ていないみたい。

時計は、12時10分を回ったところ。


その時だ。

「ごめん、遅くなって。」

井出さんが走って来た。

「いえ、私も来たばかりなので。」

「本当?よかった。」

スリムな身体。きっとジムかなんかで、鍛えているのかな。

「何か食べたいモノある?」

「いえ。井出さんに合わせます。」

「お礼なんだから、好きな物言っていいんだよ?」

どうしよう。本当に言っていいのかな。

「……お寿司食べたいです。」

井出さんは、キョトンとしている。

そうだよね。

お寿司なんて高級なモノ、リクエストする方が間違っている。


「あの……やっぱり……」

「はははっ!」

井出さんは急に、笑いだした。

「いいね、川畑さん。」

「えっ?」

「いや、素直でいいなぁって思って。」

井出さんは、笑顔も素敵だ。

やばい。

好きになりそう。


「俺の知ってるお寿司屋さんでいい?」

「……はい。」

どんなところに連れて行かれるのだろう。

「そんな遠くないよ。隣のショッピングモールだから。」

「はい。」

そう言えばこのショッピングモールって、服とかも高いんだよね。

友達が言っていた。

ショッピングモールの中に入って、案の定高級店が並ぶ。

エスカレーターに乗って、やってきた場所は、高級寿司レストランだった。

「えっ……回ってないお寿司?」

「ふははは。たまにはいいんじゃない?」

中に入ると、ザ・高級店って感じ。

テーブルや椅子も高そう。

女性は皆、着物着ている。


「ここに座ろう。」

「カウンターですか!?」

カウンターって、自分の好きなお寿司を、口頭で伝えるって事だよね。

私、あまりお寿司のネタ、分からないよ。

場違いなところに、来るんじゃなかった。


すると井出さんは、私の背中にそっと手を置いてくれた。

大丈夫、心配しないでと言わんばかりに。

「大将、お任せで握って。」

「へい!」

私は、井出さんを見た。

井出さんは、私にウィンクしている。

優しいなぁ、井出さん。

「そう言えば、なかなか会えないけれど、仕事は週何回入っているの?」

「ああ、私ここの仕事はバイトなんです。週2回だけ来てます。」

「他に仕事しているの?」

「はい。」

そして板に乗ったお寿司が運ばれて来た。

どれも美味しそう。

って言うか、中トロも大トロもある。

私、密かに好きなんだよね。


「もしかして、事務職だったりして。」

「すごい。何で分かったんですか?」

「分かるよ。あんなさらりと、プリンターの設定されちゃあね。」

私はパクパク、お寿司を食べた。

奢りなんだから、好きなだけ食べておかないと。

次、お寿司なんて、いつ食べられるか分からないし。


「それで?どうして、Wワークなんてしてるの?貯金?」

「いえ。生活の為です。」

「生活?Wワークしなきゃいけない程、大変なの?」

「ああ、ウチ、弟もいるんです。弟はまだ高校生だから、私が稼がないと。」

「ご両親は?」

「事故で亡くなりました。大学も中退して、働いています。」

こういうのは、さらっと言っておいた方が、重くならないんだよね。

「大変なんだな。」

「最初は大変でしたけど、慣れました。」


そうしているうちに、お寿司は完食。

うん、美味しかった。

「お腹いっぱい?俺のも食べる?」

「いいんですか?」

「いいよ。若い時って、たくさん食べるだろ。」

「じゃあ、少し貰います。」

もう井出さんの言葉に、甘えまくり。

次から次へとお寿司を食べて、卑しい子だなんて思われないかな。


「その歳で弟を養うって、偉いよな。」

ふと、井出さんがぽつりと言った。

「偉いよ。俺なんて、まだ独身だから、養う家族もいないって言うのに。」

「井出さん、おいくつなんですか?」

「俺?32歳。」

「えっ……」

一回りも上。

井出さんにとっては私なんか、可哀相な女で終わりなんだろうなぁ。

「川畑さんは、下の名前、何て言うの?」

「結野です。」

「結野ちゃん、また食事でもしよう。俺、結野ちゃんの事、応援するよ。」

「ありがとうございます。」


応援するだなんて、嬉しいな。

いいお兄さんに出会えたって感じ?

その瞬間、胸がチクッとなった。

もしかして私、井出さんの事、好きになっていた?

でも、ダメに決まってるじゃない。

住む世界が、違い過ぎるもの。


お寿司を食べ終わって、私達はお店を出た。

「今度会うのは、来週だね。」

「はい。」

「気を付けて、帰って。」

「はい。ご馳走様でした。」

頭を下げて、井出さんに手を振った。


はぁー。夢の世界みたいだった。
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