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第4章 庭園のプロポーズと初めての夜
①
そして数日後、ユリウスから正式な王宮への招待状が届いた。
「今度、庭園に来てほしい。」
その文面を見た瞬間、胸が高鳴った。──あの日交わした約束を、彼は本当に守ってくれたのだ。
私は準備を整え、馬車に揺られて王宮へ向かった。
あの婚約披露の夜以来の訪問。
門をくぐると、思わず胸が締め付けられる。
大玄関の階段には、すでにユリウスが立っていた。
真っ直ぐに私を待つ姿に、胸が熱くなる。
「よく来てくれた。」
彼は微笑み、軽く頭を下げた。
「お招きいただきありがとうございます。殿下。」
自然と口から出たのは、恋人としてではなく、公爵令嬢としての礼の言葉。
ここが王宮であり、彼が皇子であることを、改めて実感する。
それでも──その瞳に映るのは、ただの幼馴染みではなく、愛する私だけだと信じたかった。
ユリウスは第2皇子としての正装に身を包んでいた。
深い色合いの礼服に金糸の刺繍が施され、その姿は威厳に満ちている。
そんな衣装を纏うのは、大切な時だけ──その意味を悟った瞬間、胸が強く締め付けられた。
(やっぱり……今日、プロポーズされるのかしら)
期待と不安が入り混じり、視線を落としてしまう。
これほどまでに凛々しいユリウスを目の当たりにすると、嬉しいはずなのに体は緊張で固くなるばかりだった。
「セシリア。今日はなんだか固いね。」
からかうような声音に顔を上げると、彼の瞳が真っ直ぐに私を見ていた。
「あっ……うっ……」
言葉が喉につかえて出てこない。頬が熱くなり、視線を逸らす。
その様子にユリウスは小さく笑った。
「ふふ……そんなに緊張しなくていい。俺の前では、いつものセシリアでいてほしい。」
柔らかな笑みは、張り詰めていた空気を少しだけ解きほぐす。
けれど同時に、これから訪れる瞬間を確かに予感させた。
そして私とユリウスは、王宮の広大な庭園へと足を踏み入れた。
「まあ……やっぱり屋敷の庭とは全く違うわ。」
目に映る景色のひとつひとつが調和し、まるでひとつの世界そのもののように完璧に造られている。
「祖父の代で完成されたんだ。」
ユリウスの言葉に頷きながら、視線を巡らせる。
色鮮やかな花々、澄んだ泉、整えられた小径。
すべてが威厳と美を兼ね備えていた。
やがて、剪定をしていた庭師の老人がこちらに気づき、軽く頭を下げた。
「おお、ユリウス殿下。」
「元気にやってる?」
ユリウスが気さくに声をかけると、老人は皺を寄せた顔で笑った。
「ぼちぼちですね。」
皇子でありながら、昔からの友人にでも話しかけるような自然さ。
その姿に、胸が熱くなる。
──ユリウスは、ただ威厳ある皇子ではない。
人に寄り添い、愛される人なのだ。
そんな彼が、私を隣に連れて歩いてくれている。
その事実が、何よりも誇らしく思えた。
「今度、庭園に来てほしい。」
その文面を見た瞬間、胸が高鳴った。──あの日交わした約束を、彼は本当に守ってくれたのだ。
私は準備を整え、馬車に揺られて王宮へ向かった。
あの婚約披露の夜以来の訪問。
門をくぐると、思わず胸が締め付けられる。
大玄関の階段には、すでにユリウスが立っていた。
真っ直ぐに私を待つ姿に、胸が熱くなる。
「よく来てくれた。」
彼は微笑み、軽く頭を下げた。
「お招きいただきありがとうございます。殿下。」
自然と口から出たのは、恋人としてではなく、公爵令嬢としての礼の言葉。
ここが王宮であり、彼が皇子であることを、改めて実感する。
それでも──その瞳に映るのは、ただの幼馴染みではなく、愛する私だけだと信じたかった。
ユリウスは第2皇子としての正装に身を包んでいた。
深い色合いの礼服に金糸の刺繍が施され、その姿は威厳に満ちている。
そんな衣装を纏うのは、大切な時だけ──その意味を悟った瞬間、胸が強く締め付けられた。
(やっぱり……今日、プロポーズされるのかしら)
期待と不安が入り混じり、視線を落としてしまう。
これほどまでに凛々しいユリウスを目の当たりにすると、嬉しいはずなのに体は緊張で固くなるばかりだった。
「セシリア。今日はなんだか固いね。」
からかうような声音に顔を上げると、彼の瞳が真っ直ぐに私を見ていた。
「あっ……うっ……」
言葉が喉につかえて出てこない。頬が熱くなり、視線を逸らす。
その様子にユリウスは小さく笑った。
「ふふ……そんなに緊張しなくていい。俺の前では、いつものセシリアでいてほしい。」
柔らかな笑みは、張り詰めていた空気を少しだけ解きほぐす。
けれど同時に、これから訪れる瞬間を確かに予感させた。
そして私とユリウスは、王宮の広大な庭園へと足を踏み入れた。
「まあ……やっぱり屋敷の庭とは全く違うわ。」
目に映る景色のひとつひとつが調和し、まるでひとつの世界そのもののように完璧に造られている。
「祖父の代で完成されたんだ。」
ユリウスの言葉に頷きながら、視線を巡らせる。
色鮮やかな花々、澄んだ泉、整えられた小径。
すべてが威厳と美を兼ね備えていた。
やがて、剪定をしていた庭師の老人がこちらに気づき、軽く頭を下げた。
「おお、ユリウス殿下。」
「元気にやってる?」
ユリウスが気さくに声をかけると、老人は皺を寄せた顔で笑った。
「ぼちぼちですね。」
皇子でありながら、昔からの友人にでも話しかけるような自然さ。
その姿に、胸が熱くなる。
──ユリウスは、ただ威厳ある皇子ではない。
人に寄り添い、愛される人なのだ。
そんな彼が、私を隣に連れて歩いてくれている。
その事実が、何よりも誇らしく思えた。
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