幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛

日下奈緒

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第8章 愛の宣言

その夜、私の部屋の扉が静かに開いた。

「セシリア。」

現れたユリウスの姿に、胸が熱くなる。

「どうした? 元気がないようだ。」

心配そうに近づくと、そのまま力強く抱きしめられた。

「ユリウス……」

昼間の侍女たちの囁きが耳に蘇り、思わず胸が詰まる。

「気にするな。」

彼は私の耳元で囁いた。

「俺がすべて守る。誰が何を言おうと関係ない。君は俺の妃だ。」

あまりにも真っ直ぐな言葉に、目頭が熱くなる。

「でも……私、王宮に馴染めなくて。」

「馴染む必要なんてない。」

ユリウスは首を振り、私の頬に口づけを落とした。

「俺が隣にいる。それだけでいい。」

強く抱きしめられる温もりに、不安が少しずつ溶けていく。

昼間の痛みも囁きも、この胸の中では遠いものに思えた。

──王宮は恐ろしい場所かもしれない。

けれど、この人の愛があれば、きっと私は歩いていける。

王宮の小さな茶会に招かれたある日。

煌びやかな令嬢たちが集う中、私は控えめに席に着いていた。

「まあ、公爵令嬢とはいえ……」

隣に座った令嬢が、わざと声を高くする。

「本当に殿下の妃になれるのかしら? 政略を潰した張本人だと聞きましたけれど。」

笑い混じりの囁きに、周囲がざわつく。

胸がきゅっと締めつけられ、私は思わず俯いた。

その瞬間──椅子を引く音が響いた。

「セシリア。」

ユリウスが私の隣に立ち、堂々と令嬢を見下ろしていた。

「彼女に二度とそのようなことを口にするな。」

低く鋭い声が広間に響き渡る。

令嬢は青ざめ、言葉を失った。

ユリウスは私の手を取り、皆の前でしっかりと握る。

「セシリアは俺の妃だ。それ以上の言葉は必要ない。」

場の空気が一変し、誰もが息を呑む。

強引すぎるほどの宣言に、私の胸は熱くなった。

──愛されている。

その確信だけが、冷たい視線よりも強く私を支えてくれた。

その日の茶会が終わった後、私はユリウスに連れられて庭園へと出た。

夕暮れの空に淡い光が差し込み、薔薇の花々が静かに揺れている。

「さっきは……ごめんなさい。」

令嬢の言葉を思い出し、胸が痛む。

「謝るのは俺じゃなくて、あの令嬢の方だ。」

ユリウスはそう言うと、立ち止まり、私の両手を取った。

「セシリア。俺は何度でも言う。君だけを妃に迎える。」

真剣な眼差しに、鼓動が速まる。

「でも……周囲の人は納得していないわ。」

不安を口にすると、ユリウスは小さく笑った。

「周囲など関係ない。大切なのは俺と君の心だ。」

そっと抱き寄せられ、温かな腕に包まれる。

「どんな噂が流れようと、俺がすべて退ける。だから信じて欲しい。」

「ユリウス……」

その胸の中で頷くと、唇に柔らかな口づけが落とされた。

──王宮という冷たい場所でも、彼の愛があれば大丈夫。

私は改めて、この人と生きる覚悟を固めた。
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