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第4章 真実
《後》
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三宅先輩も、口をあんぐり開けていた。
先輩でさえも、そういう一面を知らなかったのだ。
「……そう言う事だったら、探してみるわ。」
「ありがとうございます。」
私はまた、先輩に頭を下げた。
あんなにいい人を紹介してもらったのに、1カ月もしないうちに、他の人を探してくれだなんて。
調子に乗り過ぎてるって、自分でも思っている。
「でも、いいの?本当に?」
三宅先輩のその質問が、私の心を揺さぶる。
「いいんです。あの人とは、縁がなかったんです。」
「日満理……」
三宅先輩は何とか留まるように言ってくれたけれど、私の気持ちは決まっていた。
私は、母親を許さない。
その相手も許さない。
それだけ。
先輩は、はぁっとため息をついた。
「先輩だって、恋愛感情が入ったら、上手くいかないって言ってたじゃないですか。」
「それは、どちらか一方だけの時よ。」
「えっ……」
私は顔を歪ませた。
「どちらかだけが恋に落ちたら、もう片方が重荷になる。でも、あなた達は違うじゃない。」
私はパーティーの時の、本田さんを思い出していた。
優しくて、紳士的で、頼りになって……
でも、そんな本田さんだからこそ、今後も母を捨てる事は、できないと思う。
「あの人には、私よりも相応しい人がいるんです。」
「どう言う事?」
「時間が経ったら、お話します。」
私はそう言って、その席を立ち上がった。
その日の内に、本田さんに契約解除を申し出た。
『え?何だって?』
「だから、契約解除です。」
本田さんは、突然の事に少し戸惑っているようだった。
『あの女か。』
どうやら本田さんは、母が家に来た事を知っているらしい。
『あの女とは、何でもないんだ。』
「でも、別れられないのでしょう?」
本田さんは黙っている。
彼は優しい。
家庭を捨ててまで、自分を選んでくれた女を、捨てる事なんてできないのだ。
『考えなおしてくれ。』
「散々悩んで、出した答えです。」
私はそう言って、電話を切った。
これでいいのだ。
私達を裏切った母親と、同じ男を共有するなんて、絶対に有り得ないから。
しばらくして会社の目の前に、本田さんの車が停まっているのが見えた。
きっと、私と直接話をしたいのだろう。
でも、話す事はない。
だってもう、契約は終わったのだから。
私は会社の裏口から、出ようとした。
その瞬間だった。
誰かに腕を捕まえられた。
「先輩……」
それは、三宅先輩だった。
「いいの?彼、迎えに来てくれているわよ。」
私は黙って俯いた。
「一度、話をするべきよ。」
「話なんてそんな……何を言うんですか?」
あなたの一番大切にしている女性は、私の母親だって?
そんな事、言えない。
「だったら、正々堂々と表から出るべきよ。裏から出るなんて、卑怯だわ。」
三宅先輩はそう言って、私の腕を放した。
「分かりました。」
私は一度深く頷いて、表から外に出た。
案の定、車の窓が開く。
「日満理……」
私の名前を呼ぶ、切ない声。
「お願いだ。もう一度だけ、話をさせてくれないか?」
「お話する事は、何もありません。」
私は本田さんに一礼をして、歩き始めた。
「日満理!」
車のドアが開いて、本田さんが私を追いかけて来てくれた。
「待ってくれ、待ってくれ!」
私は足を止めた。
後ろから、息を切らしている音がした。
「本当に、これで終わりなのか?」
私の目から、涙が零れた。
どうして、こんな時に涙が出るんだろう。
これじゃあ、振り返れない。
「日満理?」
本田さんは、私をそっと後ろに振り向かせた。
「やっぱり、泣いてるじゃないか。」
「だって……」
その瞬間、私は本田さんに抱き締められていた。
「本田さん、私達はもう……」
「ダメだ。」
「それじゃあ、契約に違反します。」
「だったら、どうしたらいい?」
どうしたら?
その答えは、一つだ。
「……あの女と、別れて下さい。」
「あの女?」
「いるんでしょう?ずっと側にいる女が。」
本田さんは、私を引き離した。
「どうしてあの女に、そこまでこだわる?」
息が止まった。
「あの女は、無視すればいい。ただ隣にいるだけだ。」
私は、首を激しく横に振った。
「それこそ、駄目よ。」
「どうして!」
「あの女は、私の母親だからよ!」
「えっ……」
本田さんの顔色が、見る見るうちに青くなっていった。
「日満理が……真依さんの娘?」
そのうちよろよろと、本田さんは壁に手を着いた。
「知らなかったのでしょう?」
「ああ……」
もう片方の手で、顔を覆ったその隙間から、本田さんの涙が見えた。
泣いているの?
自分がしてしまった罪の重さに。
それとも。
私達が出会ってしまった運命に……
「これで分かったはずよ。」
「日満理!待ってくれ!」
本田さんが止めるのも聞かず、私は自分の道を、歩き出した。
先輩でさえも、そういう一面を知らなかったのだ。
「……そう言う事だったら、探してみるわ。」
「ありがとうございます。」
私はまた、先輩に頭を下げた。
あんなにいい人を紹介してもらったのに、1カ月もしないうちに、他の人を探してくれだなんて。
調子に乗り過ぎてるって、自分でも思っている。
「でも、いいの?本当に?」
三宅先輩のその質問が、私の心を揺さぶる。
「いいんです。あの人とは、縁がなかったんです。」
「日満理……」
三宅先輩は何とか留まるように言ってくれたけれど、私の気持ちは決まっていた。
私は、母親を許さない。
その相手も許さない。
それだけ。
先輩は、はぁっとため息をついた。
「先輩だって、恋愛感情が入ったら、上手くいかないって言ってたじゃないですか。」
「それは、どちらか一方だけの時よ。」
「えっ……」
私は顔を歪ませた。
「どちらかだけが恋に落ちたら、もう片方が重荷になる。でも、あなた達は違うじゃない。」
私はパーティーの時の、本田さんを思い出していた。
優しくて、紳士的で、頼りになって……
でも、そんな本田さんだからこそ、今後も母を捨てる事は、できないと思う。
「あの人には、私よりも相応しい人がいるんです。」
「どう言う事?」
「時間が経ったら、お話します。」
私はそう言って、その席を立ち上がった。
その日の内に、本田さんに契約解除を申し出た。
『え?何だって?』
「だから、契約解除です。」
本田さんは、突然の事に少し戸惑っているようだった。
『あの女か。』
どうやら本田さんは、母が家に来た事を知っているらしい。
『あの女とは、何でもないんだ。』
「でも、別れられないのでしょう?」
本田さんは黙っている。
彼は優しい。
家庭を捨ててまで、自分を選んでくれた女を、捨てる事なんてできないのだ。
『考えなおしてくれ。』
「散々悩んで、出した答えです。」
私はそう言って、電話を切った。
これでいいのだ。
私達を裏切った母親と、同じ男を共有するなんて、絶対に有り得ないから。
しばらくして会社の目の前に、本田さんの車が停まっているのが見えた。
きっと、私と直接話をしたいのだろう。
でも、話す事はない。
だってもう、契約は終わったのだから。
私は会社の裏口から、出ようとした。
その瞬間だった。
誰かに腕を捕まえられた。
「先輩……」
それは、三宅先輩だった。
「いいの?彼、迎えに来てくれているわよ。」
私は黙って俯いた。
「一度、話をするべきよ。」
「話なんてそんな……何を言うんですか?」
あなたの一番大切にしている女性は、私の母親だって?
そんな事、言えない。
「だったら、正々堂々と表から出るべきよ。裏から出るなんて、卑怯だわ。」
三宅先輩はそう言って、私の腕を放した。
「分かりました。」
私は一度深く頷いて、表から外に出た。
案の定、車の窓が開く。
「日満理……」
私の名前を呼ぶ、切ない声。
「お願いだ。もう一度だけ、話をさせてくれないか?」
「お話する事は、何もありません。」
私は本田さんに一礼をして、歩き始めた。
「日満理!」
車のドアが開いて、本田さんが私を追いかけて来てくれた。
「待ってくれ、待ってくれ!」
私は足を止めた。
後ろから、息を切らしている音がした。
「本当に、これで終わりなのか?」
私の目から、涙が零れた。
どうして、こんな時に涙が出るんだろう。
これじゃあ、振り返れない。
「日満理?」
本田さんは、私をそっと後ろに振り向かせた。
「やっぱり、泣いてるじゃないか。」
「だって……」
その瞬間、私は本田さんに抱き締められていた。
「本田さん、私達はもう……」
「ダメだ。」
「それじゃあ、契約に違反します。」
「だったら、どうしたらいい?」
どうしたら?
その答えは、一つだ。
「……あの女と、別れて下さい。」
「あの女?」
「いるんでしょう?ずっと側にいる女が。」
本田さんは、私を引き離した。
「どうしてあの女に、そこまでこだわる?」
息が止まった。
「あの女は、無視すればいい。ただ隣にいるだけだ。」
私は、首を激しく横に振った。
「それこそ、駄目よ。」
「どうして!」
「あの女は、私の母親だからよ!」
「えっ……」
本田さんの顔色が、見る見るうちに青くなっていった。
「日満理が……真依さんの娘?」
そのうちよろよろと、本田さんは壁に手を着いた。
「知らなかったのでしょう?」
「ああ……」
もう片方の手で、顔を覆ったその隙間から、本田さんの涙が見えた。
泣いているの?
自分がしてしまった罪の重さに。
それとも。
私達が出会ってしまった運命に……
「これで分かったはずよ。」
「日満理!待ってくれ!」
本田さんが止めるのも聞かず、私は自分の道を、歩き出した。
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