誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –【完結】

日下奈緒

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第7部 本気の夜、ふたりの距離

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居酒屋の暖簾をくぐると、木の温もりを感じる落ち着いた空間が広がっていた。

カウンター席に案内されると、桐生部長が中央、私と上林さんがそれぞれ両脇に座った。

「なんか、贅沢ですね。部長を挟んで飲むなんて。」

そう言ったのは上林さん。私は思わず笑ってしまう。

「贅沢って……俺はただの酒好きだよ。」

そう言いながらも、桐生部長の横顔は穏やかだった。

普段のクールな上司とは少し違う、肩の力が抜けた表情。

「紗英ちゃん、飲めるクチ?」

「ええ、まあ……ほどほどにです。」

「今日は飲んでいいよ。俺がいるから。」

部長の何気ない言葉に、胸の奥がじんとした。まるで、特別に守られているような錯覚。

「じゃあ乾杯!」

「乾杯!」

グラスを合わせた瞬間、私はふと、自分が今どこにいるのかを不思議に思った。

「それで?俺をもっと知りたいって、何?」

桐生部長の突然の直球に、私は思わず口に含んだお酒を吹き出しそうになった。

「え、あの、それは……」

私は慌ててグラスを置き、ハンカチで口元を押さえる。

「いやね。」

上林さんが肩をすくめて言う。

「桐生部長が、地味な女を狙ってるって噂を耳にしたのよ。」

「へぇ」と、彼はグラスを回しながら笑う。

「そんな噂があるんだ。俺の好み、勝手に分析されてるんだな。」

「もしかして、その相手って……篠原さんじゃないかって思って。」

その瞬間、私はグラスを倒しかけた。

「ちょ、ちょっと!上林さん……!」

「ほら、やっぱり反応が怪しいじゃない。」

「反応するでしょ!そんな突然……!」

「いい観察眼ですね。」

桐生部長が、ゆっくり私の方を見る。

桐生部長が、ゆっくり私の方を見る。

「だから今日、篠原さんを連れてきたのよ。」

「それは嬉しいな。」

その笑顔は穏やかで、だけどどこか余裕たっぷりで。

まるで、何も知らないふりが板についているみたいだった。

「実はね、篠原さんとはゆっくり飲みたいなぁって、ずっと思ってたから。」

「やっぱり!」

隣で上林さんがニンマリと笑って、ビールを一口。

「ほら、篠原さん。せっかくの機会なんだから、あのこと聞きなさいよ。」

「えっ、あのことって……?」

「決まってるじゃない。結婚のことよ。」

「ぶっ!」

私は危うく飲みかけのハイボールを吹き出しそうになった。

「ちょっ、上林さん!」

「ほらほら、聞かないと進まないわよ。ね、部長?」

冗談とも本気ともつかない雰囲気の中で、上林さんは桐生部長の背中をぺしんと叩く。
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