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第1部 売れ残り令嬢と、成り上がり伯爵の縁談
⑧
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「では夕食まで、クラリスとお話でも。」
父の唐突な言葉に、私は思わず声を上げた。
「えっ⁉」
驚く私に、父はそっと耳打ちしてくる。
「上手くやるんだぞ。」
上手くって、何をどう話せばいいというの――?
緊張で喉が渇くのを感じながら、私は伯爵の方へ向き直る。
「あのー……」
恐る恐る話しかけると、グレイバーン伯爵――セドリックは無言で立ち上がり、近くの椅子を私のために引いてくれた。
「どうぞ。」
低く落ち着いた声。その響きに、一瞬だけ胸がざわめいた。
私が戸惑いながらも腰を下ろすと、彼も向かいの椅子に静かに座る。
……沈黙が、痛いほど長く感じられる。
そばかすを見られているのではないか、暗い女だと思われているのではないか――
そんな不安ばかりが頭をよぎって、うまく言葉が出てこない。
けれど彼は、まるでそんな私の内心など見透かしたかのように、ふと優しく目元を緩めた。
「緊張していますか?」
たったそれだけの問いかけなのに、私は目を見張った。
彼が、私の心を気遣ってくれたように思えたからだ。
「少しだけ。」
そう答えるのが精一杯だった。
彼の瞳が、まっすぐに私を射抜くように見つめてくる。逃げ場などないと感じるほどに。
「僕のことは、何か聞いていますか?」
その声は、驚くほど穏やかだった。
低く柔らかい声質に、私は少しだけ緊張をほどかれる。
「……とても、ハンサムな方だとお聞きしました。」
「ハンサムねえ。」
セドリックは口元を緩めて、クスクスと小さく笑った。
「実際はどうですか?」
その問いにはっとする。試されているのかと思ったけれど、からかうような響きはなく、ただ好奇心からの質問のように感じられた。
私は思い切って微笑みを返した。
「ええ。とてもハンサムな方だと思いました。」
その言葉に、彼は一瞬だけ目を見開いたようだったが、すぐに柔らかな表情に戻った。
「それは嬉しいな。婚約者にそう言われるなんて、光栄です。」
よかった。嫌われてはいない……かもしれない。
初めて、ほんの少しだけ、この結婚に希望が差した気がした。
私は、そしてつい調子に乗ってしまった。
「愚問なんですが……」
セドリック伯爵は静かに頷いた。「どうぞ。」
「……私のそばかすは、気にされますか?」
父の唐突な言葉に、私は思わず声を上げた。
「えっ⁉」
驚く私に、父はそっと耳打ちしてくる。
「上手くやるんだぞ。」
上手くって、何をどう話せばいいというの――?
緊張で喉が渇くのを感じながら、私は伯爵の方へ向き直る。
「あのー……」
恐る恐る話しかけると、グレイバーン伯爵――セドリックは無言で立ち上がり、近くの椅子を私のために引いてくれた。
「どうぞ。」
低く落ち着いた声。その響きに、一瞬だけ胸がざわめいた。
私が戸惑いながらも腰を下ろすと、彼も向かいの椅子に静かに座る。
……沈黙が、痛いほど長く感じられる。
そばかすを見られているのではないか、暗い女だと思われているのではないか――
そんな不安ばかりが頭をよぎって、うまく言葉が出てこない。
けれど彼は、まるでそんな私の内心など見透かしたかのように、ふと優しく目元を緩めた。
「緊張していますか?」
たったそれだけの問いかけなのに、私は目を見張った。
彼が、私の心を気遣ってくれたように思えたからだ。
「少しだけ。」
そう答えるのが精一杯だった。
彼の瞳が、まっすぐに私を射抜くように見つめてくる。逃げ場などないと感じるほどに。
「僕のことは、何か聞いていますか?」
その声は、驚くほど穏やかだった。
低く柔らかい声質に、私は少しだけ緊張をほどかれる。
「……とても、ハンサムな方だとお聞きしました。」
「ハンサムねえ。」
セドリックは口元を緩めて、クスクスと小さく笑った。
「実際はどうですか?」
その問いにはっとする。試されているのかと思ったけれど、からかうような響きはなく、ただ好奇心からの質問のように感じられた。
私は思い切って微笑みを返した。
「ええ。とてもハンサムな方だと思いました。」
その言葉に、彼は一瞬だけ目を見開いたようだったが、すぐに柔らかな表情に戻った。
「それは嬉しいな。婚約者にそう言われるなんて、光栄です。」
よかった。嫌われてはいない……かもしれない。
初めて、ほんの少しだけ、この結婚に希望が差した気がした。
私は、そしてつい調子に乗ってしまった。
「愚問なんですが……」
セドリック伯爵は静かに頷いた。「どうぞ。」
「……私のそばかすは、気にされますか?」
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