家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒

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第2部 初夜の誤解と、優しい眼差し

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セドリックに視線を向けると、彼はすぐに私に気づき、微笑みながら手を差し伸べてきた。

「こちらへどうぞ、クラリス。」

そのまま私を家の中へと優しく誘導してくれる。

さらに、荷物を運ぶ使用人たちに細やかな指示を出してくれていた。

動きに無駄がなく、彼の人柄と能力の高さが自然と伝わってくる。

――本当に、完璧な人。

扉をくぐったところで、私は小さな声で話しかけた。

「ありがとう、出迎えてくれて。」

彼は一瞬だけ驚いたように目を見開いたが、すぐに柔らかく笑って答えてくれた。

「当たり前だ。僕の妻だからね。」

その言葉に、胸が少しだけ熱くなる。

政略結婚だとしても、彼はこうして私を“妻”として扱ってくれている。

その誠実さに、救われた気がした。

私は黙って小さく頷き、彼の横を歩いて屋敷の中へと足を踏み入れた。新しい生活の始まりだった。

案内された部屋に入ると、広くはないが温かみのある寝室だった。目に入ったのは、大きなベッドが一つ。

「ここがあなたたちの部屋よ。」そう言って微笑んだのは、セドリックのお母様だった。

「ごめんなさいね。公爵家では、お母様も自室をお持ちだったのでしょう?」

その言葉に、私は一瞬返答に迷った。確かに、母には専用の部屋があった。でも、ここが気に入らないわけではない。

「ええ、そうでしたけれど……とても素敵なお部屋です。」

私がそう答えると、お母様は申し訳なさそうに微笑んだ。

「小さな屋敷でごめんなさいね。」

その気遣いが心に沁みて、私は首を振った。

「とんでもないです。あたたかくて、落ち着きます。」

「まあ……それは良かったわ。」

お母様は、まるで本当の母のように優しい目で私を見つめる。そして、ふといたずらっぽく笑ってこう言った。

「それとも、新婚だから同じ部屋の方がいいわよね。」

その言葉に、私は思わず息を飲んだ。新婚――つまり、同じベッドで眠るということ。

意識していなかった現実が、胸に押し寄せてくる。

私の表情が固まったのを察してか、お母様は微笑んだまま、そっと部屋を後にした。

私はその場に立ち尽くし、ベッドを見つめた。

これが、現実なのだと改めて思い知らされた。


翌朝、鏡の前で私はそっと息を吐いた。

自ら刺繍を施したウェディングドレスを身にまとい、緊張と少しの誇らしさが胸を満たしていた。

白地に金糸の繊細な模様は、自分の手で丁寧に縫ったもの。

サイズもぴったりで、ようやく現実になった自分の花嫁姿に、自然と微笑みが浮かぶ。

そのとき、扉がノックされ、セドリックが結婚式の礼装で現れた。
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