17 / 101
第2部 初夜の誤解と、優しい眼差し
⑥
しおりを挟む
黒の上着に銀の刺繍がほどこされた格式高い装いが、彼の鋭い目元とよく似合っていた。
彼は一歩、私に近づき、じっと見つめた。
「綺麗だ。」
たった一言。でもその声がまっすぐで、心の奥に届いた。
「お世辞でも嬉しいです」と私が笑うと、セドリックも穏やかに微笑んだ。
「式の前に言っておきたいことがある。」
そう言って、彼は私の手をそっと、けれど力強く握った。
彼の手の温もりが、私の緊張をほぐしていく。
何を言われるのか分からないけれど、この瞬間だけは確かに、心が繋がったように感じた。
「僕たちは政略結婚だが、いつか本当の夫婦のように、愛し合える仲になれたらと願っている。」
セドリックがそう言った瞬間、私はそっと首を振った。
「私は……愛を望んではいません。」
あなたが私を受け入れてくれただけで、もう十分。
そばかすのあるこの私を、拒絶せず迎えてくれたことが、何よりも嬉しかった。
そして、いよいよ結婚式が始まった。
大理石の回廊に響くパイプオルガンの音色。
グレイバーン家の格式ある礼拝堂に、親族や友人たちが集まり、厳かに式は執り行われた。
祭壇の前に立つと、セドリックが優しく手を差し伸べ、私はそっとその手を取った。
ドレスの裾が床を滑り、緊張と静寂が空気を包む。
そして、司祭の前で誓いの言葉が告げられる。
「セドリック・グレイバーン伯爵。あなたはクラリス・エルバリー公爵令嬢を妻とし、病める時も健やかなる時も、愛し、敬い、共に歩むことを誓いますか?」
セドリックはまっすぐ私を見つめて頷いた。
「誓います。」
続いて、私の番だった。
「クラリス・エルバリー公爵令嬢。あなたはセドリック・グレイバーン伯爵を夫とし、苦しい時も幸せな時も、信じ、支え合い、生涯を共にすることを誓いますか?」
私は小さく息を吸い、目を逸らさず答えた。
「……誓います。」
その瞬間、拍手と共に、私たちの新しい人生が静かに動き出した。
セドリックの手が、私の手を少し強く握ってくれたのを、私は確かに感じた。
式が終わり、盛大な晩餐会が始まった。
天井の高い広間には華やかな花が飾られ、音楽が優雅に流れていた。
参列者たちは思い思いに会話を楽しみ、美酒に酔いしれている。
その中で、私のもとへスクール時代の同級生たちが駆け寄ってきた。
「クラリス、おめでとう!」
「ありがとう。」
懐かしい顔ぶれに、私は自然と笑みがこぼれた。
彼女たちは、もう皆公爵家や侯爵家の夫人になっていた。
「それにしても、あなたがグレイバーン伯爵を射止めるなんて……」
彼は一歩、私に近づき、じっと見つめた。
「綺麗だ。」
たった一言。でもその声がまっすぐで、心の奥に届いた。
「お世辞でも嬉しいです」と私が笑うと、セドリックも穏やかに微笑んだ。
「式の前に言っておきたいことがある。」
そう言って、彼は私の手をそっと、けれど力強く握った。
彼の手の温もりが、私の緊張をほぐしていく。
何を言われるのか分からないけれど、この瞬間だけは確かに、心が繋がったように感じた。
「僕たちは政略結婚だが、いつか本当の夫婦のように、愛し合える仲になれたらと願っている。」
セドリックがそう言った瞬間、私はそっと首を振った。
「私は……愛を望んではいません。」
あなたが私を受け入れてくれただけで、もう十分。
そばかすのあるこの私を、拒絶せず迎えてくれたことが、何よりも嬉しかった。
そして、いよいよ結婚式が始まった。
大理石の回廊に響くパイプオルガンの音色。
グレイバーン家の格式ある礼拝堂に、親族や友人たちが集まり、厳かに式は執り行われた。
祭壇の前に立つと、セドリックが優しく手を差し伸べ、私はそっとその手を取った。
ドレスの裾が床を滑り、緊張と静寂が空気を包む。
そして、司祭の前で誓いの言葉が告げられる。
「セドリック・グレイバーン伯爵。あなたはクラリス・エルバリー公爵令嬢を妻とし、病める時も健やかなる時も、愛し、敬い、共に歩むことを誓いますか?」
セドリックはまっすぐ私を見つめて頷いた。
「誓います。」
続いて、私の番だった。
「クラリス・エルバリー公爵令嬢。あなたはセドリック・グレイバーン伯爵を夫とし、苦しい時も幸せな時も、信じ、支え合い、生涯を共にすることを誓いますか?」
私は小さく息を吸い、目を逸らさず答えた。
「……誓います。」
その瞬間、拍手と共に、私たちの新しい人生が静かに動き出した。
セドリックの手が、私の手を少し強く握ってくれたのを、私は確かに感じた。
式が終わり、盛大な晩餐会が始まった。
天井の高い広間には華やかな花が飾られ、音楽が優雅に流れていた。
参列者たちは思い思いに会話を楽しみ、美酒に酔いしれている。
その中で、私のもとへスクール時代の同級生たちが駆け寄ってきた。
「クラリス、おめでとう!」
「ありがとう。」
懐かしい顔ぶれに、私は自然と笑みがこぼれた。
彼女たちは、もう皆公爵家や侯爵家の夫人になっていた。
「それにしても、あなたがグレイバーン伯爵を射止めるなんて……」
175
あなたにおすすめの小説
編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?
灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。
しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
追放令嬢のスローライフ。辺境で美食レストランを開いたら、元婚約者が「戻ってきてくれ」と泣きついてきましたが、寡黙な騎士様と幸せなのでお断り!
緋村ルナ
ファンタジー
「リナ・アーシェット公爵令嬢!貴様との婚約を破棄し、辺境への追放を命じる!」
聖女をいじめたという濡れ衣を着せられ、全てを奪われた悪役令嬢リナ。しかし、絶望の淵で彼女は思い出す。――自分が日本のOLで、家庭菜園をこよなく愛していた前世の記憶を!
『悪役令嬢?上等じゃない!これからは大地を耕し、自分の手で幸せを掴んでみせるわ!』
痩せた土地を蘇らせ、極上のオーガニック野菜で人々の胃袋を掴み、やがては小さなレストランから国をも動かす伝説を築いていく。
これは、失うことから始まった、一人の女性の美味しくて最高に爽快な逆転成り上がり物語。元婚約者が土下座しに来た頃には、もう手遅れです!
完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!
仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。
ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。
理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。
ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。
マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。
自室にて、過去の母の言葉を思い出す。
マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を…
しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。
そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。
ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。
マリアは父親に願い出る。
家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが………
この話はフィクションです。
名前等は実際のものとなんら関係はありません。
無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています
如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」
何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。
しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。
様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。
この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが……
男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。
ワザとダサくしてたら婚約破棄されたので隣国に行きます!
satomi
恋愛
ワザと瓶底メガネで三つ編みで、生活をしていたら、「自分の隣に相応しくない」という理由でこのフッラクション王国の王太子であられます、ダミアン殿下であらせられます、ダミアン殿下に婚約破棄をされました。
私はホウショウ公爵家の次女でコリーナと申します。
私の容姿で婚約破棄をされたことに対して私付きの侍女のルナは大激怒。
お父様は「結婚前に王太子が人を見てくれだけで判断していることが分かって良かった」と。
眼鏡をやめただけで、学園内での手の平返しが酷かったので、私は父の妹、叔母様を頼りに隣国のリーク帝国に留学することとしました!
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる