家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒

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第3部 見捨てられた令嬢、伯爵邸で咲く

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「僕はあまり朝食を食べないんだ。君は好きなだけ食べていいんだよ。」

セドリックは、そう言ってカップを口に運んだ。

その口調は軽やかで、けれど気遣いに満ちていた。

「私も……朝食はあまり食べないんです。」

本当はもう少し食べられたかもしれないけれど、夫に合わせるのが妻の務めだと思った。

そうやって、自然と彼に寄り添えるようになりたい――そんな気持ちが芽生えていた。

「僕はこれから仕事に行ってくる。……新婚だからね、今日は早めに帰るとするよ。」

彼が何気なく言ったその一言が、心の奥にじんわりと染みた。

「はい。」

私のために、早く帰ってきてくれる。

ただそれだけのことなのに、こんなにも嬉しくなるなんて。

セドリックは椅子を引き、ゆっくりと立ち上がる。

その動作一つに品があり、彼がどれだけ努力してここまで来たのかを思わせた。

「では、お先に失礼するよ。」

玄関へ向かおうとする背中に、私は慌てて声をかける。

「あっ……行ってらっしゃいませ。」

彼が少しだけ振り返り、にこりと笑った。

――その笑顔が、朝の光よりもまぶしく感じられた。

そして、セドリックが出ていったのと入れ替わるように、お母様がやってきた。

優雅な歩みでダイニングに入ると、にっこりと微笑みながら声をかけてくれる。

「おはようございます、お母様。」

「おはよう、クラリス。」

その言葉に、私は胸が温かくなった。

――クラリス、と名で呼んでくれること。

それは私のことを、本当に家族の一員として迎え入れてくれている証だった。

「セドリックは朝が早いでしょう? あなたは合わせなくていいのよ。」

「はい。でも……できるだけ一緒に朝食を摂りたいので、努力しようと思います。」

そう伝えると、お母様は満足そうに微笑んで、椅子に腰かけた。

「まあ、えらい子ね。それならすぐにうまくやっていけるわ。」

そして、紅茶に手を伸ばしながら、ふと目元を細めて私を見つめる。

「――ところで、女だけの話だけど。初夜はどうだった?」

私は思わず、スプーンを落としそうになった。

まさか、朝からそんな話題が出るとは。

でも私は、正直に話した。

女だけの会話――それがなんだか新鮮で、心地よかったからだ。

「セドリックは、優しくて……優しい口づけと、情熱的な夜をくれました。」

顔が自然と熱くなるのを感じながら、そう打ち明けると、お母様はふふふと笑って、紅茶をそっと一口。
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