家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒

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第4部 舞踏会の招待

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「次の舞踏会は?」

セドリックが静かに尋ねた。

「まだ決まってないけれど……来月くらいかしら。」

「その時は僕も行くよ。」

楽しそうに目を輝かせるセドリックを見て、私は少し戸惑った。

「そんな……あなたは忙しいでしょう?」

「君の隣で踊りたいんだ。」

その一言が嬉しくて、胸があたたかくなった。

「じゃあ、今からドレスを新調しよう。あと宝石商も呼ぶんだ。」

「でも……言われないかしら。成り上がりの伯爵がって……」

心の奥にある不安を口にすると、セドリックはふっと笑った。

「地位と名誉しかない奴らに、負ける気はしないよ。」

その言葉には、不思議なほどの自信と優しさがあった。

「僕たちには、誇れるものがある。それは、君だ。」

私は目を見開き、やがて静かに微笑んだ。次の舞踏会が、少しだけ楽しみになった。

そして月をまたいで、舞踏会の招待状が届いた。

差出人の名を見て、私は一瞬まばたきをした。――ルシア。妹からの招待など、初めてだった。

「それとも伯爵夫人は、この場所に相応しくないかしら?」

そう添えられた言葉に、にじむような嘲笑が込められていた。

まるで、また私を侮辱する気満々だと読み取れた。

「いいえ。楽しみにしているわ。」

そう筆を走らせ、返事を出した。

そして舞踏会の夜。

街の広場を抜け、ゆっくりと舞踏会の会場前に馬車が停まる。

扉が開くと、そこから現れたのは、気品に満ちた装いの私――クラリスだった。

地味な装飾の馬車とは対照的に、身に纏ったドレスは真紅に輝くシルクに金糸が織り込まれ、肩には煌びやかな宝石が光るストールがかかっていた。

髪にはティアラ、耳元には揺れるルビーの耳飾り。

「……まるで、皇太子妃かしら。」

誰かがそう囁いたのが聞こえた。

伯爵夫人でも、美しく輝いていい。――私はそう胸を張って、会場へと足を踏み入れた。

中に入ると、あの楽しかった舞踏会の記憶が一気に蘇った。

広々としたホールには華やかなシャンデリアがきらめき、人々の笑い声がこだましている。

おしゃべりを楽しむ貴婦人たち、隅の方でこっそりと噂話に華を咲かせる若い令嬢たち、そしてダンスフロアでは音楽に身を任せ、楽しげに踊る人々――それぞれが、この夜を思い思いに楽しんでいた。

私はセドリックと腕を組んだまま、静かに歩みを進める。

だが、どうにも気になることが一つあった。

――視線。

そう、女性たちの目線だ。

しかも、ことごとく私の隣にいるセドリックへと向けられている。

美丈夫で、伯爵位を持ち、今や街の発展を担う存在。

噂では政略結婚とは言われていたが、その顔立ちと堂々たる雰囲気に、未婚の令嬢たちはもちろん、人妻たちでさえも、魅了されているのだろう。
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