家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒

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第4部 舞踏会の招待

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「気のせいかしら……」私はつぶやくように言ったが、視線の熱さはまぎれもない。

だが、当のセドリックはまったく意に介さず、私の手をしっかりと握りながら微笑んでくれていた。

――そう、この人は私の夫。堂々としていればいい。私は胸を張って、隣に立ち続けた。

そして私は、会場の隅にひときわ気品の漂う女性を見つけた。

――エレオノーラ・デュラン公爵夫人。

かつて母と親しくしていた方であり、私が幼い頃から何度もお目にかかったことのある人物。

エルバリー公爵家とも親交が深く、社交界でも重鎮とされる存在。

その方がこの場にいるというだけで、この舞踏会の格が違うことを物語っていた。

名だたる公爵家の令嬢や、若き子爵たちも集まっている。

そんな中で、成り上がりの伯爵夫人に過ぎない私は――話しかけていいのだろうか。

胸の奥に戸惑いが広がる。

だが、その時、夫人のまなざしがふと私をとらえ、やわらかく微笑んだのだった。

「クラリス、あの方知り合い?」

セドリックが私の視線の先に気づいて、そっと尋ねてきた。

「ええ。あの方はデュラン公爵夫人。私が幼い頃から、母と親しくしてくださったの。」

「デュラン公爵夫人?」

その名を聞いたセドリックは、目を見開き、すぐに私の耳元へ顔を寄せた。

「……君、まさかエレオノーラ・デュランと親しいのか?」

低く抑えた声に、彼が本気で驚いているのがわかった。

「ええ。でも今は、挨拶を控えたの。私が話しかけて、夫人の評判に傷がついたら申し訳ないわ。」

セドリックは一瞬黙り、そして私の手を強く握った。

「……そういう気遣いをするから、君は誰よりも美しい。」

私は彼の言葉に、胸の奥が熱くなるのを感じた。

「だが困った。」

セドリックがふいにそう呟いた。

「どうしたの?」私は小声で尋ねる。

するとセドリックは、また私の耳元に顔を寄せてささやいた。

「……父を伯爵に推薦したのは、実は彼女なんだ。デュラン公爵夫人のおかげで、グレイバーン家は伯爵家に列せられた。今の立場は、ある意味彼女のおかげなんだ。」

「まあ……」

私は思わず息をのんだ。

そんな大きな恩義があったなんて。

「挨拶はしたい。けれど、伯爵家の身分でこちらから近づくのは失礼になるかもしれない。どう礼を尽くせばいいのか……」

真面目なセドリックらしい悩み方だった。

すると、私たちの様子に気づいたエミリアが、軽やかな足取りで近づいてきた。

「どうしたの?二人して真剣な顔をして。」
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