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第4部 舞踏会の招待
⑧
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「気のせいかしら……」私はつぶやくように言ったが、視線の熱さはまぎれもない。
だが、当のセドリックはまったく意に介さず、私の手をしっかりと握りながら微笑んでくれていた。
――そう、この人は私の夫。堂々としていればいい。私は胸を張って、隣に立ち続けた。
そして私は、会場の隅にひときわ気品の漂う女性を見つけた。
――エレオノーラ・デュラン公爵夫人。
かつて母と親しくしていた方であり、私が幼い頃から何度もお目にかかったことのある人物。
エルバリー公爵家とも親交が深く、社交界でも重鎮とされる存在。
その方がこの場にいるというだけで、この舞踏会の格が違うことを物語っていた。
名だたる公爵家の令嬢や、若き子爵たちも集まっている。
そんな中で、成り上がりの伯爵夫人に過ぎない私は――話しかけていいのだろうか。
胸の奥に戸惑いが広がる。
だが、その時、夫人のまなざしがふと私をとらえ、やわらかく微笑んだのだった。
「クラリス、あの方知り合い?」
セドリックが私の視線の先に気づいて、そっと尋ねてきた。
「ええ。あの方はデュラン公爵夫人。私が幼い頃から、母と親しくしてくださったの。」
「デュラン公爵夫人?」
その名を聞いたセドリックは、目を見開き、すぐに私の耳元へ顔を寄せた。
「……君、まさかエレオノーラ・デュランと親しいのか?」
低く抑えた声に、彼が本気で驚いているのがわかった。
「ええ。でも今は、挨拶を控えたの。私が話しかけて、夫人の評判に傷がついたら申し訳ないわ。」
セドリックは一瞬黙り、そして私の手を強く握った。
「……そういう気遣いをするから、君は誰よりも美しい。」
私は彼の言葉に、胸の奥が熱くなるのを感じた。
「だが困った。」
セドリックがふいにそう呟いた。
「どうしたの?」私は小声で尋ねる。
するとセドリックは、また私の耳元に顔を寄せてささやいた。
「……父を伯爵に推薦したのは、実は彼女なんだ。デュラン公爵夫人のおかげで、グレイバーン家は伯爵家に列せられた。今の立場は、ある意味彼女のおかげなんだ。」
「まあ……」
私は思わず息をのんだ。
そんな大きな恩義があったなんて。
「挨拶はしたい。けれど、伯爵家の身分でこちらから近づくのは失礼になるかもしれない。どう礼を尽くせばいいのか……」
真面目なセドリックらしい悩み方だった。
すると、私たちの様子に気づいたエミリアが、軽やかな足取りで近づいてきた。
「どうしたの?二人して真剣な顔をして。」
だが、当のセドリックはまったく意に介さず、私の手をしっかりと握りながら微笑んでくれていた。
――そう、この人は私の夫。堂々としていればいい。私は胸を張って、隣に立ち続けた。
そして私は、会場の隅にひときわ気品の漂う女性を見つけた。
――エレオノーラ・デュラン公爵夫人。
かつて母と親しくしていた方であり、私が幼い頃から何度もお目にかかったことのある人物。
エルバリー公爵家とも親交が深く、社交界でも重鎮とされる存在。
その方がこの場にいるというだけで、この舞踏会の格が違うことを物語っていた。
名だたる公爵家の令嬢や、若き子爵たちも集まっている。
そんな中で、成り上がりの伯爵夫人に過ぎない私は――話しかけていいのだろうか。
胸の奥に戸惑いが広がる。
だが、その時、夫人のまなざしがふと私をとらえ、やわらかく微笑んだのだった。
「クラリス、あの方知り合い?」
セドリックが私の視線の先に気づいて、そっと尋ねてきた。
「ええ。あの方はデュラン公爵夫人。私が幼い頃から、母と親しくしてくださったの。」
「デュラン公爵夫人?」
その名を聞いたセドリックは、目を見開き、すぐに私の耳元へ顔を寄せた。
「……君、まさかエレオノーラ・デュランと親しいのか?」
低く抑えた声に、彼が本気で驚いているのがわかった。
「ええ。でも今は、挨拶を控えたの。私が話しかけて、夫人の評判に傷がついたら申し訳ないわ。」
セドリックは一瞬黙り、そして私の手を強く握った。
「……そういう気遣いをするから、君は誰よりも美しい。」
私は彼の言葉に、胸の奥が熱くなるのを感じた。
「だが困った。」
セドリックがふいにそう呟いた。
「どうしたの?」私は小声で尋ねる。
するとセドリックは、また私の耳元に顔を寄せてささやいた。
「……父を伯爵に推薦したのは、実は彼女なんだ。デュラン公爵夫人のおかげで、グレイバーン家は伯爵家に列せられた。今の立場は、ある意味彼女のおかげなんだ。」
「まあ……」
私は思わず息をのんだ。
そんな大きな恩義があったなんて。
「挨拶はしたい。けれど、伯爵家の身分でこちらから近づくのは失礼になるかもしれない。どう礼を尽くせばいいのか……」
真面目なセドリックらしい悩み方だった。
すると、私たちの様子に気づいたエミリアが、軽やかな足取りで近づいてきた。
「どうしたの?二人して真剣な顔をして。」
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