家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒

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第5部 恋のまねごとと、伯爵の怒り

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「私があの手紙を受け入れていたら、お兄様と結婚していたのは私よ。」

声には勝ち誇った響きがあった。ドア越しでもわかる。

ルシアが、セドリックに迫っていることが。

私は胸を押さえた。苦しくてたまらなかった。

まさか、そんな過去があったなんて——。

けれど、セドリックの声が静かに響いた。

「だが、君はそれをいとも軽くあしらった。まるで虫けらを扱うみたいに。」

セドリックの言葉は冷たく、重く響いた。

「は?なにそれ。」

ルシアが笑い飛ばそうとしたが、セドリックは続けた。

「断りの返事には、こう書かれていた。“なぜ公爵令嬢の私が伯爵を相手にすると思ったの?”。そこには誠意のかけらもなかった。」

私は扉の外でじっと立ち尽くしていた。信じたくない。でも、それがルシアの本心だったのだ。

「確かに、クラリスとの結婚を決めたのは親同士だ。だが——」

その声ははっきりとしていて、強かった。

「今は、その縁に感謝している。」

その言葉に、胸がいっぱいになった。

涙がにじむ。

セドリックは、私を選んでくれている。

過去に何があっても、今の彼の想いがすべてなのだと、私は心からそう思った。

セドリックは静かに、だがはっきりとドアの鍵を開けた。

するとルシアは、怒りを抑えきれず逆上した。

「何よ!お姉様を利用したくせに!」

その声には悔しさと、プライドを踏みにじられた怒りが滲んでいた。

彼女はわなわなと体を震わせていた。

「クラリスと結婚していなければ、あなたはただの伯爵だったじゃない!この前の舞踏会だって、デュラン夫人と話すこともできなかったはずよ!」

それはある意味、事実かもしれない。でも、それが何だというのだろう。

「彼女と結婚したから、僕は今の立場を得た。だが、それを“利用”なんて思ったことは一度もない。」

セドリックの言葉は静かで、強かった。

「僕は彼女を心から愛している。……それだけだ。」

その言葉に、ルシアは何も返せず、ただその場に立ち尽くしていた。

「このままだったら、あなた後悔するわよ。」

ルシアの瞳には怒りと屈辱が滲んでいた。

「後悔?何を?」

セドリックは静かに尋ねる。

「エルバリー公爵の令嬢を無下にしたこと、後悔させてやるわ!」

だが、セドリックは微笑すら浮かべた、余裕の顔つきだった。

「ではこうしよう。君の言う通りにしよう。お父上に、アルバート王子との婚約を断るよう申し上げる。」
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