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第4話
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こうして、王太子殿下と私、ジュスタンの3人で、お城を見学することになった。
「まずは、この3階だ。」
「はい、殿下。」
広い廊下の右側には、大きな窓。
左側には、各部屋がある。
「お部屋は、北側にあるのですね。」
「ああ、敵は正面、南側から攻めて来やすいからね。」
確か王太子殿下は、軍も統括しているとか。
万が一、敵が攻めて来たら、殿下も出陣するのかな。
「3階には、王族の寝室が多いんだ。敵も夜中にこんな高い場所まで、登って来ないから。」
「ちゃんと、計算されているのですね。」
さすがは、王族が住む居城。
敵が攻めてくるところまで、細かに考えられているのね。
「次は、2階へ行こうか。」
「はい、殿下。」
3人で階段を降りると、女中達が頭を下げてくる。
「ここの女中達は、しつけが行き届いておりますね。」
「ははは。お母上の指導がいいんだろう。」
さあ、おいでと言わんばかりに、殿下は手を差し伸べてくれる。
本当に優しい方だ。
2階に降りて、王太子殿下は、あちらが政務室だ、こちらが王族の部屋と、いろいろ説明してくれた。
「ジュスタンの部屋は、どこにあるの?」
「はい、私の部屋は1階にあります。」
「そう。夜中に敵が攻めて来た時は、どうするの?」
「そうですね。真っ先に王太子殿下の寝室まで、走ります。」
「勇ましいのね。」
と言う事は、夜中にジュスタンが、寝室まで忍んで来るのは、あまり考えられないかしら。
「大丈夫だよ、アリーヌ。私とジュスタンは、結構夜中まで、話し込んでいるからね。」
私は、ハッとした。
夜中まで一緒にいるのであれば、暗殺しやすくなる。
でも、暗殺に気づいたのは、朝方だった。
殺されたのは、夜中?それとも朝方?
思い出せ、思い出せ。
「アリーヌ。また難しい顔をしているね。」
「えっ?」
王太子殿下が、ニコッと笑う。
「申し訳ございません。」
こんな難しい顔ばかりしていては、殿下に飽きられるかも。
気を付けなくては。
「アリーヌ様は、我々の仲を嫉妬しているのでは?」
「あははは。」
王太子殿下は、ジュスタンの言葉に、大声で笑った。
「これからは、アリーヌに会う事に、時間を割くよ。」
「殿下……」
「ジュスタン、我々のくだらない話も、もう終わりだな。」
「そうですね。」
分かる。王太子殿下は、ジュスタンに大きな信頼を寄せている。
だとしたら、ジュスタンは暗殺者ではない?
でも、信頼を寄せている相手に、裏切られるという事もある。
「アリーヌ、ジュスタンはいい奴だ。」
「はい?」
突然の言葉に、私はキョトンとしてしまった。
「私が不穏な動きがあると言ったばかりに、真っ先にジュスタンを、疑っているのだろう。」
「いえ……」
ここで、慌てて否定したら、それこそ肯定するようなものだ。
「ジュスタンは、味方だ。我々を守ってくれるよ。」
ここは、王太子殿下の言葉に、従ってみるか。
「はい、殿下。」
私は、殿下に笑顔を見せた。
殿下も、微笑んでくれている。
「アリーヌ様は、殿下を心配されているのですね。」
ジュスタンは、後ろから私達に付いて来てくれる。
「そうか。さっきから、不穏な動きがあるとか、敵が攻めてくるとか、言い過ぎたかな。」
王太子殿下は、反省しているようだ。
「いえ、話して頂いて、嬉しく思いました。」
私一人では、到底王太子殿下をお守りすることはできない。
せめて、王太子殿下本人が、危機を感じていてくれれば、不幸中の幸いだ。
「なんだかアリーヌは、私の為なら、剣を持って戦いそうだな。」
「えっ⁉」
王太子殿下は、笑いながら私をからかう。
「そ、それは!王太子殿下に何かあれば、私が身を以って……」
「ぷっ!」
後ろにいるジュスタンも、笑いを堪えている。
「何ですか!お二人共、私は真剣ですよ!」
「分かった、分かった。アリーヌ。頼もしいよ。」
王太子殿下は、冗談で私の肩を叩く。
「アリーヌ様。」
ジュスタンが、私の側に来る。
「万が一の時にアリーヌ様がなさることは、この私に王太子殿下の危機を、伝えて下さる事です。決して、一人で守ろうとはしないでください。」
「はーい。」
私とジュスタンのやり取りに、王太子殿下はクスクスと笑っている。
「あー、女性がいると言うのは、やっぱりいいね。」
「殿下……」
私の胸が、ほかほか温かくなってくる。
「アリーヌが来る前は、ジュスタンと二人、むさ苦しい話ばかりだったからね。」
ジュスタンは、ポリポリと頬を掻く。
「アリーヌ、私のところに来てくれて、有難う。君が明るい人で、助かった。」
「いいえ、殿下。私も殿下の元へ来る事ができて、幸せです。」
「アリーヌ。」
「殿下……」
見つめ合う瞳に、私が映っている。
殿下、あなたの側にいるだけで、私の胸はドキドキしています。
「ゴホン。」
後ろにいたジュスタンが、咳ばらいをする。
「そういう事は、二人きりの時にしてください。」
「ジュスタン。こういう時は、おまえがどこか行くものだ。」
殿下とジュスタンは、睨み合っている。
殿下もそうだけど、ジュスタンもジュスタンよね。
その時だった。
「あっ、兄上。ここにいたんですね。」
向こうから、少年と一人の女性がやってきた。
「フランシス、それに母上まで。」
「えっ⁉お母上様⁉」
私は慌てて、挨拶をした。
「王妃様には、ご機嫌麗しく。」
「ありがとう。あなたは、今度後宮に入った、イヴァンの婚約者ね。お名前を聞かせて頂戴。」
「アリーヌと申します。よろしくお願い致します。」
「こちらこそ、宜しくね。」
まさか、こんな廊下の片隅で、王妃様と会えるなんて、思ってもみなかった。
私はチラッと、王妃様を見た。
白い肌に、優しそうな目元。
しかも、オーラがある。
さすがは、一国の王妃だけある。
「アリーヌ、ここにいるのは、私の弟のフランシスだ。16歳になる。」
「ご機嫌用、フランシス様。」
「ご機嫌用、未来の姉上。」
顔を上げると、フフフと笑っている。
その笑顔が、王妃様と似ていた。
確か、王太子殿下のお母上様は、幼い頃に亡くなって、王妃様は後妻のはず。
フランシス様は、現王妃のお子様で、王太子殿下とは腹違いの弟。
「でも、アリーヌ様が綺麗な人でよかったね。母上様。」
「そうね。確かに、イヴァンの好みかも。」
その瞬間、王太子殿下の顔が赤くなった。
「母上も、フランシスもいい加減にしてください。」
「あら、いいじゃない。照れているイヴァンも、可愛いわよ。」
「可愛いって、私はもう王太子ですよ。」
王妃様と王太子殿下のやりとりも、楽しそう。
二人の仲に、わだかまりはなさそうね。
その時だった。
ジュスタンが、私に耳打ちした。
「3人の仲は、良さそうに見えますが、フランシス様を王太子にという意見を言う者もあ ります。」
「えっ?」
王太子殿下を囲んで、王妃様もフランシス様も、ニコニコ笑っている。
「王太子殿下は、それを知っているの?」
「はい。」
「フランシス様は?」
「さあ、どうだか。」
腹違いの兄弟。
現王妃のお子様が、健やかに育っているとすれば、次期王太子にと望む声があっても、おかしくはないわ。
問題は、王妃様ね。
「王妃様は?」
ジュスタンは黙っている。
「ジュスタン?」
「……知っていて、黙認されております。」
「と言う事は、王妃様もフランシス様を王太子に?」
「口に出しては言いませんが。」
私はゴクンと、息を飲んだ。
「まずは、この3階だ。」
「はい、殿下。」
広い廊下の右側には、大きな窓。
左側には、各部屋がある。
「お部屋は、北側にあるのですね。」
「ああ、敵は正面、南側から攻めて来やすいからね。」
確か王太子殿下は、軍も統括しているとか。
万が一、敵が攻めて来たら、殿下も出陣するのかな。
「3階には、王族の寝室が多いんだ。敵も夜中にこんな高い場所まで、登って来ないから。」
「ちゃんと、計算されているのですね。」
さすがは、王族が住む居城。
敵が攻めてくるところまで、細かに考えられているのね。
「次は、2階へ行こうか。」
「はい、殿下。」
3人で階段を降りると、女中達が頭を下げてくる。
「ここの女中達は、しつけが行き届いておりますね。」
「ははは。お母上の指導がいいんだろう。」
さあ、おいでと言わんばかりに、殿下は手を差し伸べてくれる。
本当に優しい方だ。
2階に降りて、王太子殿下は、あちらが政務室だ、こちらが王族の部屋と、いろいろ説明してくれた。
「ジュスタンの部屋は、どこにあるの?」
「はい、私の部屋は1階にあります。」
「そう。夜中に敵が攻めて来た時は、どうするの?」
「そうですね。真っ先に王太子殿下の寝室まで、走ります。」
「勇ましいのね。」
と言う事は、夜中にジュスタンが、寝室まで忍んで来るのは、あまり考えられないかしら。
「大丈夫だよ、アリーヌ。私とジュスタンは、結構夜中まで、話し込んでいるからね。」
私は、ハッとした。
夜中まで一緒にいるのであれば、暗殺しやすくなる。
でも、暗殺に気づいたのは、朝方だった。
殺されたのは、夜中?それとも朝方?
思い出せ、思い出せ。
「アリーヌ。また難しい顔をしているね。」
「えっ?」
王太子殿下が、ニコッと笑う。
「申し訳ございません。」
こんな難しい顔ばかりしていては、殿下に飽きられるかも。
気を付けなくては。
「アリーヌ様は、我々の仲を嫉妬しているのでは?」
「あははは。」
王太子殿下は、ジュスタンの言葉に、大声で笑った。
「これからは、アリーヌに会う事に、時間を割くよ。」
「殿下……」
「ジュスタン、我々のくだらない話も、もう終わりだな。」
「そうですね。」
分かる。王太子殿下は、ジュスタンに大きな信頼を寄せている。
だとしたら、ジュスタンは暗殺者ではない?
でも、信頼を寄せている相手に、裏切られるという事もある。
「アリーヌ、ジュスタンはいい奴だ。」
「はい?」
突然の言葉に、私はキョトンとしてしまった。
「私が不穏な動きがあると言ったばかりに、真っ先にジュスタンを、疑っているのだろう。」
「いえ……」
ここで、慌てて否定したら、それこそ肯定するようなものだ。
「ジュスタンは、味方だ。我々を守ってくれるよ。」
ここは、王太子殿下の言葉に、従ってみるか。
「はい、殿下。」
私は、殿下に笑顔を見せた。
殿下も、微笑んでくれている。
「アリーヌ様は、殿下を心配されているのですね。」
ジュスタンは、後ろから私達に付いて来てくれる。
「そうか。さっきから、不穏な動きがあるとか、敵が攻めてくるとか、言い過ぎたかな。」
王太子殿下は、反省しているようだ。
「いえ、話して頂いて、嬉しく思いました。」
私一人では、到底王太子殿下をお守りすることはできない。
せめて、王太子殿下本人が、危機を感じていてくれれば、不幸中の幸いだ。
「なんだかアリーヌは、私の為なら、剣を持って戦いそうだな。」
「えっ⁉」
王太子殿下は、笑いながら私をからかう。
「そ、それは!王太子殿下に何かあれば、私が身を以って……」
「ぷっ!」
後ろにいるジュスタンも、笑いを堪えている。
「何ですか!お二人共、私は真剣ですよ!」
「分かった、分かった。アリーヌ。頼もしいよ。」
王太子殿下は、冗談で私の肩を叩く。
「アリーヌ様。」
ジュスタンが、私の側に来る。
「万が一の時にアリーヌ様がなさることは、この私に王太子殿下の危機を、伝えて下さる事です。決して、一人で守ろうとはしないでください。」
「はーい。」
私とジュスタンのやり取りに、王太子殿下はクスクスと笑っている。
「あー、女性がいると言うのは、やっぱりいいね。」
「殿下……」
私の胸が、ほかほか温かくなってくる。
「アリーヌが来る前は、ジュスタンと二人、むさ苦しい話ばかりだったからね。」
ジュスタンは、ポリポリと頬を掻く。
「アリーヌ、私のところに来てくれて、有難う。君が明るい人で、助かった。」
「いいえ、殿下。私も殿下の元へ来る事ができて、幸せです。」
「アリーヌ。」
「殿下……」
見つめ合う瞳に、私が映っている。
殿下、あなたの側にいるだけで、私の胸はドキドキしています。
「ゴホン。」
後ろにいたジュスタンが、咳ばらいをする。
「そういう事は、二人きりの時にしてください。」
「ジュスタン。こういう時は、おまえがどこか行くものだ。」
殿下とジュスタンは、睨み合っている。
殿下もそうだけど、ジュスタンもジュスタンよね。
その時だった。
「あっ、兄上。ここにいたんですね。」
向こうから、少年と一人の女性がやってきた。
「フランシス、それに母上まで。」
「えっ⁉お母上様⁉」
私は慌てて、挨拶をした。
「王妃様には、ご機嫌麗しく。」
「ありがとう。あなたは、今度後宮に入った、イヴァンの婚約者ね。お名前を聞かせて頂戴。」
「アリーヌと申します。よろしくお願い致します。」
「こちらこそ、宜しくね。」
まさか、こんな廊下の片隅で、王妃様と会えるなんて、思ってもみなかった。
私はチラッと、王妃様を見た。
白い肌に、優しそうな目元。
しかも、オーラがある。
さすがは、一国の王妃だけある。
「アリーヌ、ここにいるのは、私の弟のフランシスだ。16歳になる。」
「ご機嫌用、フランシス様。」
「ご機嫌用、未来の姉上。」
顔を上げると、フフフと笑っている。
その笑顔が、王妃様と似ていた。
確か、王太子殿下のお母上様は、幼い頃に亡くなって、王妃様は後妻のはず。
フランシス様は、現王妃のお子様で、王太子殿下とは腹違いの弟。
「でも、アリーヌ様が綺麗な人でよかったね。母上様。」
「そうね。確かに、イヴァンの好みかも。」
その瞬間、王太子殿下の顔が赤くなった。
「母上も、フランシスもいい加減にしてください。」
「あら、いいじゃない。照れているイヴァンも、可愛いわよ。」
「可愛いって、私はもう王太子ですよ。」
王妃様と王太子殿下のやりとりも、楽しそう。
二人の仲に、わだかまりはなさそうね。
その時だった。
ジュスタンが、私に耳打ちした。
「3人の仲は、良さそうに見えますが、フランシス様を王太子にという意見を言う者もあ ります。」
「えっ?」
王太子殿下を囲んで、王妃様もフランシス様も、ニコニコ笑っている。
「王太子殿下は、それを知っているの?」
「はい。」
「フランシス様は?」
「さあ、どうだか。」
腹違いの兄弟。
現王妃のお子様が、健やかに育っているとすれば、次期王太子にと望む声があっても、おかしくはないわ。
問題は、王妃様ね。
「王妃様は?」
ジュスタンは黙っている。
「ジュスタン?」
「……知っていて、黙認されております。」
「と言う事は、王妃様もフランシス様を王太子に?」
「口に出しては言いませんが。」
私はゴクンと、息を飲んだ。
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