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第一章 転生者二人の高校生活
前世の過ちを改めるために
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同じような時間帯。奥田魔道柔術道場でも大きな声が響いていた。
一八もまた玲奈との一戦を前に特訓中であるらしい。
「そのスキルを使って親父は勝てたのか!?」
「女々しく軟弱な剣術家が相手だぞ? 勝利したに決まっておるだろうが! ただし、秘伝の奥義を習得していなければ危うかっただろうな……」
どこかで聞いたような台詞が三六から返されている。しかし、一八はその話に大きな笑みを作った。
「親父、そのスキルを教えてくれ!」
「まあ、焦るな一八よ。そのスキルは我が家に伝わる禁断の投げ技。奥田家の血を引いていようと簡単には習得できない。この技は身体能力だけでなく勇気も試される。言い換えれば日頃の鍛錬を怠った者には絶対に習得できないスキルだ……」
一八ならば或いはと三六。日々の研鑽を欠かさぬ一八であれば可能かもしれないと続けた。それだけ奥田家に伝わるスキルは大技であるらしい。
「血統スキルの名は月下立杭《げっかりっくい》という……」
「月……なんだって? 難しい名前にするなんて馬鹿な家系に相応しくないな……?」
「まあその通りだ。月下立杭を編み出した十八代目は知恵熱で一ヶ月寝込んだと伝わっている。だが、心配無用だ。スキル名など使っているうちに覚えられるはず。現在ではハンディデバイスという便利な道具もある。スキルの使用時にスキル名を確認すれば良い……」
三六の説明に、なるほどと一八。如何に馬鹿の血統であろうと何度も使用するスキルを忘れるはずがない。
「月下立杭は勇猛さと類い希なる力が求められる。奥田家に受け継がれる剛力があってこそ習得できるのだ。剛力による投げは空気と魔素の摩擦を促し、その熱量により火属性が得られるというもの。その破壊力は想像に容易いだろう?」
三六によると秘奥義は属性攻撃なのだという。言わずもがな試合での使用は禁じられている。
「命中させるには隙を生み出さねばならない。残念ながら月下立杭は完全に相手の懐へと入り込む必要があるからだ。従って儂は月下立杭に繋ぐ技を編み出している」
「マジか!? それによって武士さんを投げ飛ばしたってことだな! それも教えてくれよ!」
その通りと三六。秘奥義の弱点を補う技を編み出し、完全無欠のスキルへと彼は昇華させていた。
「鍛え抜かれた額。それこそが鍵だ。何しろ剣士は女々しい防具を身に纏っている。勇気をもって突進し、頭突きで防具をぶち壊すのだ。頭突きの威力に相手が腰を折ったときがスキル使用のチャンス。月下立杭は、くの字型になった剣士の股ぐらと奥襟を同時に掴むだろう。あとは身を任せておれば良い。剣士は満月のような弧を描き、炎と共に地面へと頭から叩き付けられる。月下立杭ならば確実に敵を屠れるだろう。宙には火属性が生み出したる赤い月が残り、地面には突き刺さった剣士の立ち杭が残るだけだ……」
すげぇと一八は興奮している。奥義と聞いて想像していたままの威力に。玲奈の心配をしてしまうほど強力なスキルだと確信していた。
過去の勝敗について知る者は少ない。従って彼らの子供たちが知るはずもなかった。くだらない結末であったなんてことは……。
似たもの同士であるのは両親だけの話ではないようだ。一八もまた父親の指導を信頼し、決戦に向けて最後の追い込みを続ける。
改めて勝つ。一八は心に決めていた。正々堂々と勝負をし、玲奈に土をつけることで過去の清算にしようと考えている。
語るまでもなく勝利した後はスポーツマンらしく手を差し伸べるだけ。過去にあったような真似は絶対にしない。
真に生まれ変わった姿を玲奈に見てもらうためにも……。
一八もまた玲奈との一戦を前に特訓中であるらしい。
「そのスキルを使って親父は勝てたのか!?」
「女々しく軟弱な剣術家が相手だぞ? 勝利したに決まっておるだろうが! ただし、秘伝の奥義を習得していなければ危うかっただろうな……」
どこかで聞いたような台詞が三六から返されている。しかし、一八はその話に大きな笑みを作った。
「親父、そのスキルを教えてくれ!」
「まあ、焦るな一八よ。そのスキルは我が家に伝わる禁断の投げ技。奥田家の血を引いていようと簡単には習得できない。この技は身体能力だけでなく勇気も試される。言い換えれば日頃の鍛錬を怠った者には絶対に習得できないスキルだ……」
一八ならば或いはと三六。日々の研鑽を欠かさぬ一八であれば可能かもしれないと続けた。それだけ奥田家に伝わるスキルは大技であるらしい。
「血統スキルの名は月下立杭《げっかりっくい》という……」
「月……なんだって? 難しい名前にするなんて馬鹿な家系に相応しくないな……?」
「まあその通りだ。月下立杭を編み出した十八代目は知恵熱で一ヶ月寝込んだと伝わっている。だが、心配無用だ。スキル名など使っているうちに覚えられるはず。現在ではハンディデバイスという便利な道具もある。スキルの使用時にスキル名を確認すれば良い……」
三六の説明に、なるほどと一八。如何に馬鹿の血統であろうと何度も使用するスキルを忘れるはずがない。
「月下立杭は勇猛さと類い希なる力が求められる。奥田家に受け継がれる剛力があってこそ習得できるのだ。剛力による投げは空気と魔素の摩擦を促し、その熱量により火属性が得られるというもの。その破壊力は想像に容易いだろう?」
三六によると秘奥義は属性攻撃なのだという。言わずもがな試合での使用は禁じられている。
「命中させるには隙を生み出さねばならない。残念ながら月下立杭は完全に相手の懐へと入り込む必要があるからだ。従って儂は月下立杭に繋ぐ技を編み出している」
「マジか!? それによって武士さんを投げ飛ばしたってことだな! それも教えてくれよ!」
その通りと三六。秘奥義の弱点を補う技を編み出し、完全無欠のスキルへと彼は昇華させていた。
「鍛え抜かれた額。それこそが鍵だ。何しろ剣士は女々しい防具を身に纏っている。勇気をもって突進し、頭突きで防具をぶち壊すのだ。頭突きの威力に相手が腰を折ったときがスキル使用のチャンス。月下立杭は、くの字型になった剣士の股ぐらと奥襟を同時に掴むだろう。あとは身を任せておれば良い。剣士は満月のような弧を描き、炎と共に地面へと頭から叩き付けられる。月下立杭ならば確実に敵を屠れるだろう。宙には火属性が生み出したる赤い月が残り、地面には突き刺さった剣士の立ち杭が残るだけだ……」
すげぇと一八は興奮している。奥義と聞いて想像していたままの威力に。玲奈の心配をしてしまうほど強力なスキルだと確信していた。
過去の勝敗について知る者は少ない。従って彼らの子供たちが知るはずもなかった。くだらない結末であったなんてことは……。
似たもの同士であるのは両親だけの話ではないようだ。一八もまた父親の指導を信頼し、決戦に向けて最後の追い込みを続ける。
改めて勝つ。一八は心に決めていた。正々堂々と勝負をし、玲奈に土をつけることで過去の清算にしようと考えている。
語るまでもなく勝利した後はスポーツマンらしく手を差し伸べるだけ。過去にあったような真似は絶対にしない。
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