オークと女騎士、死闘の末に幼馴染みとなる

坂森大我

文字の大きさ
23 / 212
第一章 転生者二人の高校生活

決戦当日

しおりを挟む
 決戦当日は好天に恵まれていた。深夜まで特訓をしていた玲奈はやはり眠たそう。しかしながら、授業は真面目に受けて何とか放課後まで漕ぎ着けている。
 いざ決戦の時。本日は生徒会の活動が予定されていない。よって玲奈だけでなく恵美里と舞子も同行していた。

「玲奈さん、本当に申し訳ありません。貴方に全てを背負わせてしまって……」
「殿下、気にしないでください。元より一八は生来の敵。私にとって倒さねばならぬ存在です。このような機会を与えて頂き感謝しかありません……」
 玲奈もまた戦いを望んでいる。前世から引き摺る想い。忘れたようで記憶にはちゃんとある。あの瞬間に覚えた恐怖は騎士として恥だった。

「かつて私は一八を前に戦慄を覚えました。足が竦むような感覚はそれまで一度もなかったのです。百の軍勢を前にしても、私の足はちゃんと動いていたというのに……」
「玲奈ちゃん……」
 玲奈の回想と恵美里と舞子の想像は本質的に異なったが、玲奈がトラウマを思い出しているのは二人にも伝わっている。

「玲奈さん、あの方に勝てるのでしょうか? いや、今となっては貴方の身体の方が大切です。無事でいられないようでしたら、戦う必要なんてありませんからね?」
「そうだよ。あの人ってインハイの優勝者なんでしょ? また抑え込まれてしまったら大変だよ……」
 二人は玲奈の身を案じている。かなりの誤解を含んでいたけれど、二人が想像することは概ね真実でもあった。肉体だけではなく精神的にも襲い来るものがあるはず。二人にそのような経験はなかったが、想像するだけでも気分が悪くなった。

「問題ありません。刃はついておりませんが鉄刀を用意しました。一八と同じ世に生きているのは、きっと女神様が私に与えた試練。それを乗り越えることで私はようやく新しい自分を見つけられる。岸野玲奈として生きるためには一八を倒さねばならないのです……」
 玲奈の真意は決して伝わらないのだが、二人はその意気込みを汲み取っている。玲奈が逃げるはずはない。今までもずっと剣士であった彼女は堂々と戦いに挑むのだろう。

「生を受けてから十七年。私は一時も休むことなく鍛錬を続けて参りました。人生の最大目標ではありませんけれど、一八との戦いは過程にある中でも私が強く望むことであります。あの男に勝ってこそ私の生は輝きを得られる。燻る想いを全て相殺し、前へと歩み出すためには一八に勝つしかないのです」
 玲奈が語るたびに彼女が抱えるトラウマを感じ取れた。もう二人がとやかく口出しなどできない。強い意志表示は肯定してあげるべきなのだと。

 恵美里と舞子は心配する気持ちと同等以上の期待をし、先を歩く玲奈の背中を見つめていた……。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」  悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!? 「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」  やかましぃやぁ。  ※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...