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第二章 騎士となるために
謎の老人
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一八と莉子は試験エリアへと到着していた。西大寺に探査開始を伝えたあと、エアパレットを収納。二人して刀を抜き、山道を登っていく。
「西側の方が魔物少なくない?」
莉子が聞く。入学当初に担当した東側の遭遇率はかなり高かった。それと比べれば現れる魔物は少なく、更には非常に弱い魔物でしかない。
「良いことじゃねぇか? 何も危険度で合格が決まるわけじゃない。実際に魔物が湧かねぇのなら減点にもなんねぇよ」
「そうだけど、せっかく愛刀が届いたのに、ろくに実戦の場がないなんてさ……」
注文していた刀がようやく莉子の元に届いている。八尺ほどあった刀は今や五尺弱。通常よりも少しばかり長い刀身であるが、零月の間合いに慣れていたから可能な限り長くしていた。
「まあそういうな。どうせ魔物は湧くからよ。何もなかったなんてことにはならんと思うぞ?」
もうかれこれ一時間ほどが経過していた。まだ出会うのはFランクの魔物しかおらず、いずれも単独で現れただけである。
「ちょいとルートを外れてみようよ! このままじゃ全然魔物と出くわさない!」
莉子は指定されたルートから少し外れようと提案する。どうしても、もう少し戦ってみたいのだと。
「しゃーねぇな。少しだけだぞ? どうせ俺たちの動きは筒抜けなんだからな……」
「そうこなくっちゃ!」
ルートには獣道的に草の生えていないところがある。しかし、人が通る道を避ける魔物がいるのも事実だ。よって莉子は指定されたルートを外れる提案をしていた。
二人は早速とルートを外れて、低木が生い茂る森の中へ。割と進むのに苦労したけれど、しばらくして二人は開けた場所に辿り着いていた。
「カズやん君、アレって家!?」
リコが指差す方向。確かに丸太を組んで作り上げたような小屋があった。この周辺は獣道すらなかったというのに、人が住んでいるとは思えない。仮に誰かが住んでいたのなら、山から下りる道を何度も使うはずなのだ。
過度に逡巡したものの、二人は調査することにした。如何にも怪しげな小屋。盗賊などの排除も任務には含まれていたのだから。
「カズやん君、誰かいる……」
莉子が窓から覗き込むと小屋には動く影があった。しかし、盗賊ではないような気がする。何しろ小屋には一人しかいないのだ。
「俺が声をかける。一応は刀を抜いておけ……」
盗賊とは違っても怪しい人物であるのは間違いない。人の気配がない山奥なだけでなく、ここは魔物が多く生息するエリアなのだ。
「すみません!」
ノックをして一八が声をかける。こんな今も集中していた。もしも襲いかかってきたとすれば、柔術を駆使して押さえ込んでやろうと。
僅かな静寂ののち、ギィっと嫌な音を立てて扉が開かれている。殺気を感じない。けれど、一八は扉の向こうに威圧感を覚えていた。
「何じゃ、貴様ら?」
現れたのは髭もじゃのお爺さんである。かといって彼は立派な身体つきをしており、しわくちゃの顔とは対称的だ。
莉子は驚いていた。こんな山奥にお年寄りが一人で暮らしているなんてと。借金でも背負って逃げているとしか考えられない。
「お爺さん、ここで何をしているの? あたしたちは守護兵団騎士候補生なんだけど……」
問わずにはいられない。老人がこのような山中で一人暮らしをしているだなんて。何らかの手助けができるのなら莉子は協力するつもりだ。
莉子の問いかけに、なぜかご老人は小首を傾げている。どうにも分からなくなり、莉子は一八と視線を合わせた。彼の意見を聞こうと思って。
しかしながら、一八は呆けていた。今は怪しげな老人を問い質すべきであるというのに。
しっかりしてよと声をかけようとしたのだが、莉子もまた呆けてしまう。薄い目をして眺めていた一八が意味不明な言葉を発したからだ。
「じ、爺ちゃん――――?」
「西側の方が魔物少なくない?」
莉子が聞く。入学当初に担当した東側の遭遇率はかなり高かった。それと比べれば現れる魔物は少なく、更には非常に弱い魔物でしかない。
「良いことじゃねぇか? 何も危険度で合格が決まるわけじゃない。実際に魔物が湧かねぇのなら減点にもなんねぇよ」
「そうだけど、せっかく愛刀が届いたのに、ろくに実戦の場がないなんてさ……」
注文していた刀がようやく莉子の元に届いている。八尺ほどあった刀は今や五尺弱。通常よりも少しばかり長い刀身であるが、零月の間合いに慣れていたから可能な限り長くしていた。
「まあそういうな。どうせ魔物は湧くからよ。何もなかったなんてことにはならんと思うぞ?」
もうかれこれ一時間ほどが経過していた。まだ出会うのはFランクの魔物しかおらず、いずれも単独で現れただけである。
「ちょいとルートを外れてみようよ! このままじゃ全然魔物と出くわさない!」
莉子は指定されたルートから少し外れようと提案する。どうしても、もう少し戦ってみたいのだと。
「しゃーねぇな。少しだけだぞ? どうせ俺たちの動きは筒抜けなんだからな……」
「そうこなくっちゃ!」
ルートには獣道的に草の生えていないところがある。しかし、人が通る道を避ける魔物がいるのも事実だ。よって莉子は指定されたルートを外れる提案をしていた。
二人は早速とルートを外れて、低木が生い茂る森の中へ。割と進むのに苦労したけれど、しばらくして二人は開けた場所に辿り着いていた。
「カズやん君、アレって家!?」
リコが指差す方向。確かに丸太を組んで作り上げたような小屋があった。この周辺は獣道すらなかったというのに、人が住んでいるとは思えない。仮に誰かが住んでいたのなら、山から下りる道を何度も使うはずなのだ。
過度に逡巡したものの、二人は調査することにした。如何にも怪しげな小屋。盗賊などの排除も任務には含まれていたのだから。
「カズやん君、誰かいる……」
莉子が窓から覗き込むと小屋には動く影があった。しかし、盗賊ではないような気がする。何しろ小屋には一人しかいないのだ。
「俺が声をかける。一応は刀を抜いておけ……」
盗賊とは違っても怪しい人物であるのは間違いない。人の気配がない山奥なだけでなく、ここは魔物が多く生息するエリアなのだ。
「すみません!」
ノックをして一八が声をかける。こんな今も集中していた。もしも襲いかかってきたとすれば、柔術を駆使して押さえ込んでやろうと。
僅かな静寂ののち、ギィっと嫌な音を立てて扉が開かれている。殺気を感じない。けれど、一八は扉の向こうに威圧感を覚えていた。
「何じゃ、貴様ら?」
現れたのは髭もじゃのお爺さんである。かといって彼は立派な身体つきをしており、しわくちゃの顔とは対称的だ。
莉子は驚いていた。こんな山奥にお年寄りが一人で暮らしているなんてと。借金でも背負って逃げているとしか考えられない。
「お爺さん、ここで何をしているの? あたしたちは守護兵団騎士候補生なんだけど……」
問わずにはいられない。老人がこのような山中で一人暮らしをしているだなんて。何らかの手助けができるのなら莉子は協力するつもりだ。
莉子の問いかけに、なぜかご老人は小首を傾げている。どうにも分からなくなり、莉子は一八と視線を合わせた。彼の意見を聞こうと思って。
しかしながら、一八は呆けていた。今は怪しげな老人を問い質すべきであるというのに。
しっかりしてよと声をかけようとしたのだが、莉子もまた呆けてしまう。薄い目をして眺めていた一八が意味不明な言葉を発したからだ。
「じ、爺ちゃん――――?」
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