オークと女騎士、死闘の末に幼馴染みとなる

坂森大我

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第三章 存亡を懸けて

雪花斬

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 ヒカリは渾身の一撃を繰り出していた。起死回生の一撃と言えるもの。彼女が放った雪花山は狙い通りにオーバーロードの右腕を捕らえていた。

「だあああぁあぁああっっ!!」
 青白い輝きがヒカリを包んでいる。最強スキルとの呼び声が高い雪花斬。スキルが放つ冷気により、大気に含まれる水分は一瞬にして凍り付く。またそれはスキルの輝きを反射してヒカリの軌跡に幾つもの煌めきを残している。雪花斬という名の由縁を周囲に知らしめていた。

 息を呑む優子。彼女は何度か雪花斬を見ていたけれど、月明かりに輝くそれを初めて目撃していた。
 まるで流れ星のようだと思う。ほうき星が目的地に流れ着いたかのよう。初動から着地をした現在まで。優子は幻想を見ているように気になっていた。

 刹那に轟くオーバーロードの叫声。それはヒカリの作戦が明確に成功したという根拠となる。巨木のような腕が斬り落とされたのだと。

「畳み掛けるぞ!!」
「は、はい!!」
 フォローを任されていたというのに、見入ってしまったこと。優子は反省しつつも、取り返すべく即座に駆け出している。

 右腕を失ったオークキングであれば、如何に屈強なネームドであろうとも戦えるはずだと。
 絶叫するオーバーロードに執拗な攻撃を仕掛けていく。また想像以上に攻めやすくなっている。こうなると時間をかけてはならない。オーバーロードが指示を変え、雑兵たちに襲いかかるよう命令するかもしれないのだ。

「少佐! 今です!」
 優子がオーバーロードの左腕をいなした瞬間、
「雪花斬!!」
 再びヒカリの天恵技が炸裂する。闇夜に輝く一筋の光。それは軌跡に氷華を幾つも残しながら、最後は爆ぜるようにして、その煌めきは消失している。

 一瞬のあと、ズドンという音が地響きと共に伝わっていた。圧巻の光景である。確か一年前も優子は目撃したのだ。エンペラーを斬り裂いた至高の一撃を……。

「すごい……」
 何度見ても惚れ惚れする。あれ程斬りかかっても倒せなかったオーバーロードであるというのに、右腕が失われただけで風向きは激変していた。

「優子、救援に向かうぞ!」
 上司に恵まれたと思う。いつも選択を見誤らない。こんな今も余韻に浸ることなく、奇襲作戦に借り出された新人たちを気にしているなんて。

「はい! 格好いい少佐についていきます!」
「何だそれは? 次もネームドだ。気を引き締めていけよ?」
「もちろんですよ!」
 戸惑うオークたちを無視するように、二人のエアパレットが空に舞い上がる。

 作戦の成否を問うタイムリミットは近い。ヒカリと優子は早期にネームドを討伐すべくマイバラ基地の北側を目指している……。
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