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第六章 揺れ動く世界線
査問会
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ソレスティア王城では捕縛されたリッチモンド公爵の査問会が行われていた。
先に行われたデンバー侯爵は終始無言を貫き、極刑が決まっている。加えてデンバー侯爵家の取り潰しが併せて決定していた。
また猛毒入りのシャンパンを贈ったとされるメルヴィス公爵は証拠不十分にて罰を与えられなかったのだが、寄子であるサマンサのマキシム侯爵家はイセリナの暗殺を試みたとして、こちらも取り潰し処分となっている。
現在は最後の大物であるリッチモンド公爵についての罪状が述べられたところだ。
「リッチモンドは逆賊だ。真っ先にセシル王子殿下を担いだだけでなく、ルーク王子殿下を暗殺しようとした。権力を得ようとし、火竜の聖女と呼ばれたアナスタシア・スカーレット子爵令嬢を脅迫して国外に追いやっている。またその罪をルーク殿下に負わせたのだ。リッチモンドの罪は極刑ですら生温い」
罪状が読み上げられたあと、即座に意見したのはランカスタ公爵である。
黒い噂のある両者であったけれど、リッチモンド公爵が手段を選ばぬ男であるのは既に周知の事実であった。
何しろ、嫌がらせのためだけにランカスタ公爵と離婚したシルヴィアを妾としていたのだから。
ランカスタ公爵の意見に全員が頷く。また追従するかのように、議長であるモルディン国務大臣が声を上げた。
「家宅捜索では王子殿下の暗殺と同じ毒が執務室から発見されたそうだ。これに関しては如何だろうか?」
「知らん! ワシは嵌められたんだ! そこの髭公爵にな!」
モルディン大臣の問いにリッチモンドが答える。
しかしながら、明確な証拠が出てきた現状では誰も信じていない。
「貴方が暗殺者を雇った契約書も発見されておりますが? 子飼いの暗部以外の五人。デンバー侯爵邸に残された遺体を確認しましたが、貴方がサルバディール皇国で雇った暗殺者で間違いないそうです」
もうリッチモンドは何も返答できない。
査問会は訴えられた時点で有罪が確定的。まして証拠が提出されたのであれば、覆すなど困難であった。
たとえ、それが捏造されたものであっても。
「イセリナの暗殺は認めよう。だが、ルーク王子殿下を暗殺し、権力を手に入れようとしたなんて妄言だ!」
「その点に関しては釈明不要かと。アナスタシア・スカーレットが証言した貴方の脅迫はセシル殿下を傀儡とする計画に真実味を与えておりますが?」
リッチモンドは頭を振る。どうにも言い逃れできない現状に。
イセリナの暗殺を企てたばかりに、余計な罪まで背負うことになった。
「あの女は悪魔だ! 断じて聖女ではない! あの女こそが黒幕なんだ!!」
リッチモンドは声を荒らげるも、同じことであった。
王国として失ってはならない火竜の聖女は今や隣国サルバディール皇国の庇護下にある。
その責任はリッチモンドにあり、全てが繋がって見える現状ではどのような弁明も意味を成さなかった。
責任をすげ替えようとしているとしか思えない。集まった諸侯たちはそう考えている。
もう誰も意見を口にしない。沈黙こそが判決の時であることを明確にしていた。
全員の顔を見るガゼル王。リッチモンドの処分を言い渡す時が来たのだと知る。
「リッチモンド公爵家は只今を持って廃爵。当人だけでなく三親等内全てを極刑とする!」
非常に重い罰が与えられていた。
リッチモンド公爵自身の極刑は避けられない状況であったが、廃爵だけでなく多くの血縁者まで巻き込む事態となっている。
呆然と頭を振るリッチモンドとは対照的な笑みを浮かべた者。
ランカスタ公爵だけは、どうしてか笑みを浮かべていた。
先に行われたデンバー侯爵は終始無言を貫き、極刑が決まっている。加えてデンバー侯爵家の取り潰しが併せて決定していた。
また猛毒入りのシャンパンを贈ったとされるメルヴィス公爵は証拠不十分にて罰を与えられなかったのだが、寄子であるサマンサのマキシム侯爵家はイセリナの暗殺を試みたとして、こちらも取り潰し処分となっている。
現在は最後の大物であるリッチモンド公爵についての罪状が述べられたところだ。
「リッチモンドは逆賊だ。真っ先にセシル王子殿下を担いだだけでなく、ルーク王子殿下を暗殺しようとした。権力を得ようとし、火竜の聖女と呼ばれたアナスタシア・スカーレット子爵令嬢を脅迫して国外に追いやっている。またその罪をルーク殿下に負わせたのだ。リッチモンドの罪は極刑ですら生温い」
罪状が読み上げられたあと、即座に意見したのはランカスタ公爵である。
黒い噂のある両者であったけれど、リッチモンド公爵が手段を選ばぬ男であるのは既に周知の事実であった。
何しろ、嫌がらせのためだけにランカスタ公爵と離婚したシルヴィアを妾としていたのだから。
ランカスタ公爵の意見に全員が頷く。また追従するかのように、議長であるモルディン国務大臣が声を上げた。
「家宅捜索では王子殿下の暗殺と同じ毒が執務室から発見されたそうだ。これに関しては如何だろうか?」
「知らん! ワシは嵌められたんだ! そこの髭公爵にな!」
モルディン大臣の問いにリッチモンドが答える。
しかしながら、明確な証拠が出てきた現状では誰も信じていない。
「貴方が暗殺者を雇った契約書も発見されておりますが? 子飼いの暗部以外の五人。デンバー侯爵邸に残された遺体を確認しましたが、貴方がサルバディール皇国で雇った暗殺者で間違いないそうです」
もうリッチモンドは何も返答できない。
査問会は訴えられた時点で有罪が確定的。まして証拠が提出されたのであれば、覆すなど困難であった。
たとえ、それが捏造されたものであっても。
「イセリナの暗殺は認めよう。だが、ルーク王子殿下を暗殺し、権力を手に入れようとしたなんて妄言だ!」
「その点に関しては釈明不要かと。アナスタシア・スカーレットが証言した貴方の脅迫はセシル殿下を傀儡とする計画に真実味を与えておりますが?」
リッチモンドは頭を振る。どうにも言い逃れできない現状に。
イセリナの暗殺を企てたばかりに、余計な罪まで背負うことになった。
「あの女は悪魔だ! 断じて聖女ではない! あの女こそが黒幕なんだ!!」
リッチモンドは声を荒らげるも、同じことであった。
王国として失ってはならない火竜の聖女は今や隣国サルバディール皇国の庇護下にある。
その責任はリッチモンドにあり、全てが繋がって見える現状ではどのような弁明も意味を成さなかった。
責任をすげ替えようとしているとしか思えない。集まった諸侯たちはそう考えている。
もう誰も意見を口にしない。沈黙こそが判決の時であることを明確にしていた。
全員の顔を見るガゼル王。リッチモンドの処分を言い渡す時が来たのだと知る。
「リッチモンド公爵家は只今を持って廃爵。当人だけでなく三親等内全てを極刑とする!」
非常に重い罰が与えられていた。
リッチモンド公爵自身の極刑は避けられない状況であったが、廃爵だけでなく多くの血縁者まで巻き込む事態となっている。
呆然と頭を振るリッチモンドとは対照的な笑みを浮かべた者。
ランカスタ公爵だけは、どうしてか笑みを浮かべていた。
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