幼馴染み(♀)がプレイするMMORPGはどうしてか異世界に影響を与えている

坂森大我

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第三章 希望を抱いて

猛攻撃

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 諒太は発見した大扉に飛び込んでいる。そこがボス部屋であるのは明らかであったけれど、躊躇することなく入り込んでは即座に扉を閉じていた。

 空間に現れた黒い渦の中から影が浮かび上がってくる。それは明確にダンジョンボスの登場エフェクトであった。
 夏美が立てたフラグが少しばかり気になっていたものの、浮かび上がる姿は明らかに人影である。都市伝説的なドラゴンゾンビではなさそうだ。

「焦らしやがって……」
 どうあってもドラゴンゾンビなどではない。聞いていた通りにネクロマンサーであると思う。この影からドラゴンが飛び出ては流石に興ざめである。

「サクッと倒してログアウトだな……」
 ヴァンパイアはレアモンスターだと夏美は話していた。であれば、そうそう出会わないだろう。更にはダンジョンへ入り直せばもういないはず。だから諒太はネクロマンサーを軽く捻ってやるだけでいい。

【ネクロマンサー】
【Lv90】
【物理】弱
【火】微強
【水】強
【風】強
【土】強

 出現したのはやはりネクロマンサーである。出会い頭にあった特殊モーションには驚いたけれど、それも伝え聞いていたままに死霊を召喚するだけであった。

「焼き尽くせぇ!!」
 召喚された三体の死霊をファイアーボールにて殲滅し、諒太はネクロマンサーに斬り掛かる。流石にスキルを使う場面だ。早々に討伐し、諒太は採掘に戻らねばならない。
「ソニックスラッシュ!」
 魔法と剣技の合わせ技。体力は多いと聞いていたけれど、何の問題もない。使い魔的な死霊が一撃なのだ。本体が物理攻撃に弱いところも楽な相手となる理由だった。

「これはヴァンパイアよりも簡単に倒せそうだ!」
 諒太は勢いのままに斬り付けていた。次々と召喚される死霊を瞬殺しては、ソニックスラッシュを浴びせ続ける。

 かれこれ五分が経過していた。強攻撃を繰り出すようになってきたのはネクロマンサーの体力が半分を切った証し。このまま斬り続けたとして、そのうちに倒せることだろう。
 諒太は何も気にしていなかった。このあとにある猛攻撃を繰り出されたとして、負けるはずがないと。初期の高難度ダンジョンであろうとも、追加ダンジョンさえもソロクリアできる自分がやられるはずがないと考えていた……。

 容赦なく斬りかかる諒太。ネクロマンサーは為す術なく攻撃を受け続けていた。二十分が経過しても倒せなかったヴァンパイアとは大違いである。
「よし、いける!」
 ここでネクロマンサーは見慣れないモーションを始めた。恐らくは猛攻撃であろう。もうネクロマンサーは体力の殆どを失っているはずだ。

 ネクロマンサーは両手を天に掲げ、何やら祈るようにしていた。そのモーションから予想できるのは広範囲攻撃魔法である。何しろネクロマンサーの眼前には巨大な魔法陣が現れていたのだから……。

「とどめだぁぁっ!!」
 気にせず諒太はソニックスラッシュを繰り出している。あわよくば発動よりも前に倒してしまおうと。かといって、たとえ魔法が発動したとして、諒太には王者の盾があるし、金剛の盾という防御スキルもある。従って彼は魔法の発動を少しも気にしていない。

 魔法攻撃を受けるよりも早く倒そうとしたけれど、やはり発動前に討伐するのは無理があった。
 夏美曰く、体力は多いという話。ならば、ここは金剛の盾を使用し、ネクロマンサーの猛攻撃に備えるべきである。
「金剛の盾!」
 発動のタイミングを見計らいスキルを実行。完璧な戦闘運びであると諒太は自画自賛である。ネクロマンサーからすれば、付け入る隙がないだろうと。

 しかしながら、様子がおかしい。猛攻撃が放たれると考えていた魔法陣は、周囲に充満する黒い靄を吸い込んでいるだけであった……。

「っ!?」
 思わず絶句する諒太。ようやくと勘違いに気付く。魔法陣は強大な攻撃魔法を繰り出すためではなく、明らかに異なる役割を担っているのだと。

「召喚……陣……?」

 魔法陣ではなく召喚陣。ネクロマンサーが隠し持つ猛攻撃は攻撃魔法などではなかった。
 黒い靄を全て吸い込んだそれは、得体の知れぬ魔物を呼び寄せていたのだから……。

 禍々しい邪気を放つ巨大な腐肉の魔物を――――。
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