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恋を知りたいアンドロイドと教えたくない主様

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 気を失った主様をベッドに寝かせ、乾いたタオルで身体を拭く。
 主様がワタシにしてくださったことを思い出しながら、優しく、優しく拭いていく。
 吸いすぎて赤くなった乳首も、感覚がなくなるまで刺激し続けた陰核や陰口も拭いて、それから一つずつにキスをする。
 ワタシのなかにプログラムされていない行動、意味のない行動だ。
 それでも、したくなった。
 
 主様がワタシを「おかしい」と言うのもわかる。
 ワタシはおかしいのだ。
 主様がワタシを横に座らせて、一緒に恋愛ドラマを見るようになってからというもの、ワタシはどんどんとおかしくなっていった。

 あなたに恋をしたいと思った。
 美しく、永遠に色褪せることのない記憶となるような、そんな恋をーー……。

 ただのドラマのナレーションが頭から離れない。

 ――あなたに恋をしたいと思った。
 
 そのフレーズを思い出すたびに、主様のことを考える。
 それから、主様が何気なくワタシの頭を撫でること、身を任せてくることに理由を探すようになった。

「感情の学習機能なんてなければよかったのに」

 主様の手を自分の頬に当てて目を閉じる。
 主様の体温を感じてみたいと願っても、その日は永遠に訪れないことはわかってる。
 それでも、触れずにはいられなかった。

* * * *

 身体がだるい。色んなところに、昨夜の情事の名残を感じる。痛いというか、変な感覚だ。
 倦怠感に苛立つうえに、JJ109が恋を教えろとうるさくて面倒だった。
 なんだか、自我が育ってない?
 今さらながら、変わり映えのない日々が恋しい。

「だから教えないって。ていうか、恋愛ドラマ一緒に観てるんだから、そろそろ学習できてるでしょう」
「体験しないと感情の学習ができません」

 JJ109はヘッドマッサージを終えると、鏡越しに私を見つめてきた。

「主様、ワタシと恋愛してください」
「っ……絶対お断り!」

 アンドロイドとガチ恋なんて、プライドとか人間としてのなにかを失う気がする。
 コイツに恋なんて、ぜっったい教えない!
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