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3章 紛争編
32話 カナリッジ共和国
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オルビエラ王国の北に位置している国、カナリッジ共和国。
森林地帯と寒い雪原地帯がある国で民の意思で国は動いているという建前、裏では一部の特権階級や貴族が支配しているのは関係者なら誰しも理解している。
だが民に知れ渡らないのは、危険人物や反社会的な脅威があるものを裏で暗殺しているからだ。
「メデス殿、例の件は如何ですかな?」
でっぷりと肥え太った者の問いかけに対して応じるのは細身の男だ。
「計画通り進行していますよ」
男はテーブルに置かれているグラスを掴むと赤く染まった酒を口に含みニヤリと口元を歪ませた。
「ほほぉ、此方の方も万事順調に進んでいましてな最終確認をしている最中です」
皿にのった分厚い肉をナイフで切りながら、フォークで口に入れ咀嚼し飲み込む。
部屋には巨大な窓にガラスが嵌りカナリッジの街を一望でき、今は夕刻で薄暗い景色が覗く。
部屋の中央にはテーブルが置かれ、高級な食事が並び二人の男が囲む。
「レポール殿も上手くいているようでなにより」
グラスを回し香りを楽しみながら呟いた男、メデス。
茶色い頭髪に長い髪、鋭い目が特徴で濃い緑の服を着ており首周りには金色の刺繍が施され落ち着いた雰囲気を漂わせる男だ。
「ええ、お互い上手くいっているようで安心しましたぞ。決行当日が楽しみですな」
皿の肉を切り分け口に運ぶでっぷりとした男、レポール。
同じく茶色い頭髪にタレ下がった眼尻、顎には贅肉がつき首回りを窮屈そうにしており、赤い羽織を着て異質さを漂わせる。
「では決行日にまた」
「ええ、決行日に」
二人は夕食を済ませると消えるように去って行った。
――――――――――――――
オルビエラ王国との国境線近くにある砦オルバム。
カナリッジ共和国南部に位置しており、辺りは森林に囲まれている砦だ。
そこでは慌ただしく動く人の姿が確認でき、武器の手入れや荷運び食料の配給が行われていた。
「次の者」
男の前には列ができており、掛け声と共に進み出す。
「今回の配給だ」
男の側に居る者が手渡したのは、硬い干し肉が入った袋と手入れの行き届いたどこにでもありそうな長剣だ。
滞りなく食料の配給と武器の貸し出しが済むと、後方に設置されてある本部テントに向かう。
四角く先の方が尖った広いテントで、優に数十人以上入るだろう。
テントに近づき垂れ幕を潜るとそこには、今回指揮を執るオズワール伯爵と騎士長、参謀長その他多数の者達が集まっていた。
「揃ったようだな」
私がテントに入ると声を掛けてきたのは、オズワール伯爵だ。
中央の長テーブルを囲む形で配置された椅子に腰かけると、会議が始まった。
「これより作戦会議を行います。僭越ながら今回司会を務めるゼフと申します。では始めに各人、状況報告からお願いします」
オズワール伯爵の秘書であるゼフが会議の進行を始める。
「まずは私からだ、騎士の配置にはもう暫く掛かる。国境線手前の開けた場所で展開する予定だ」
始めに騎士長ラグドアルが配置状況と展開予定地を報告した。
「次に私だが、オラクトリアの様子は警戒態勢を敷いており数名の騎士が街を巡回している。民衆の間でも噂が広まっている状況だ。報告は以上だ」
諜報長が街の様子を報告した。
(右回りに報告するようだな。なら私は2番目か)
街の状況を報告した諜報長の次は、偵察隊の者が報告する。
「砦周辺に異常はなく、オラクトリア近辺にも兵が配置されている様子もありませんでした」
(次は私の番か……)
「兵糧関係ですが武器、食料共に兵への配給は先ほど完了しました」
兵糧と武器の配給、貸し出しを任されている兵站長の私は椅子から立ち上がり状況報告を済まし座り直した。
「最後に今回の作戦ですが兵を正面で交戦させている間に、各部隊が包囲しながら街へ侵入、その後これを占拠という流れですが意見がある方は挙手をお願いします」
参謀担当のリゲットが今回の作戦概要を確認するよう話すと最後に変更がないか皆に問いかけた。
特に意見はなくそれから本国の話を少しした後、解散する。
本部テントからでると参謀長のリゲットが話し掛けてきた。
「ペテロス少しいいですか?」
「構いませんが」
(参謀長がいったい私に何の用だろうか?)
「話というのは、今回の作戦に介入してくる者がいるかもしれないという報告を部下から聞きまして、もしかしたらと思い声を掛けました」
「その介入してくる者とは?」
(わざわざ小競り合いに介入してくる者がいるとは……)
私が返答するとリゲットが考える仕草をすると口を開いた。
「詳しいことは言えません。ですが気よつけておいてください」
私に言い終えると歩み去っていった。
(いったい何だったんだ? それに介入する者とはいったい……)
本部テントからの帰り道、リゲットの言葉の真意考えながら担当場所に戻った。
森林地帯と寒い雪原地帯がある国で民の意思で国は動いているという建前、裏では一部の特権階級や貴族が支配しているのは関係者なら誰しも理解している。
だが民に知れ渡らないのは、危険人物や反社会的な脅威があるものを裏で暗殺しているからだ。
「メデス殿、例の件は如何ですかな?」
でっぷりと肥え太った者の問いかけに対して応じるのは細身の男だ。
「計画通り進行していますよ」
男はテーブルに置かれているグラスを掴むと赤く染まった酒を口に含みニヤリと口元を歪ませた。
「ほほぉ、此方の方も万事順調に進んでいましてな最終確認をしている最中です」
皿にのった分厚い肉をナイフで切りながら、フォークで口に入れ咀嚼し飲み込む。
部屋には巨大な窓にガラスが嵌りカナリッジの街を一望でき、今は夕刻で薄暗い景色が覗く。
部屋の中央にはテーブルが置かれ、高級な食事が並び二人の男が囲む。
「レポール殿も上手くいているようでなにより」
グラスを回し香りを楽しみながら呟いた男、メデス。
茶色い頭髪に長い髪、鋭い目が特徴で濃い緑の服を着ており首周りには金色の刺繍が施され落ち着いた雰囲気を漂わせる男だ。
「ええ、お互い上手くいっているようで安心しましたぞ。決行当日が楽しみですな」
皿の肉を切り分け口に運ぶでっぷりとした男、レポール。
同じく茶色い頭髪にタレ下がった眼尻、顎には贅肉がつき首回りを窮屈そうにしており、赤い羽織を着て異質さを漂わせる。
「では決行日にまた」
「ええ、決行日に」
二人は夕食を済ませると消えるように去って行った。
――――――――――――――
オルビエラ王国との国境線近くにある砦オルバム。
カナリッジ共和国南部に位置しており、辺りは森林に囲まれている砦だ。
そこでは慌ただしく動く人の姿が確認でき、武器の手入れや荷運び食料の配給が行われていた。
「次の者」
男の前には列ができており、掛け声と共に進み出す。
「今回の配給だ」
男の側に居る者が手渡したのは、硬い干し肉が入った袋と手入れの行き届いたどこにでもありそうな長剣だ。
滞りなく食料の配給と武器の貸し出しが済むと、後方に設置されてある本部テントに向かう。
四角く先の方が尖った広いテントで、優に数十人以上入るだろう。
テントに近づき垂れ幕を潜るとそこには、今回指揮を執るオズワール伯爵と騎士長、参謀長その他多数の者達が集まっていた。
「揃ったようだな」
私がテントに入ると声を掛けてきたのは、オズワール伯爵だ。
中央の長テーブルを囲む形で配置された椅子に腰かけると、会議が始まった。
「これより作戦会議を行います。僭越ながら今回司会を務めるゼフと申します。では始めに各人、状況報告からお願いします」
オズワール伯爵の秘書であるゼフが会議の進行を始める。
「まずは私からだ、騎士の配置にはもう暫く掛かる。国境線手前の開けた場所で展開する予定だ」
始めに騎士長ラグドアルが配置状況と展開予定地を報告した。
「次に私だが、オラクトリアの様子は警戒態勢を敷いており数名の騎士が街を巡回している。民衆の間でも噂が広まっている状況だ。報告は以上だ」
諜報長が街の様子を報告した。
(右回りに報告するようだな。なら私は2番目か)
街の状況を報告した諜報長の次は、偵察隊の者が報告する。
「砦周辺に異常はなく、オラクトリア近辺にも兵が配置されている様子もありませんでした」
(次は私の番か……)
「兵糧関係ですが武器、食料共に兵への配給は先ほど完了しました」
兵糧と武器の配給、貸し出しを任されている兵站長の私は椅子から立ち上がり状況報告を済まし座り直した。
「最後に今回の作戦ですが兵を正面で交戦させている間に、各部隊が包囲しながら街へ侵入、その後これを占拠という流れですが意見がある方は挙手をお願いします」
参謀担当のリゲットが今回の作戦概要を確認するよう話すと最後に変更がないか皆に問いかけた。
特に意見はなくそれから本国の話を少しした後、解散する。
本部テントからでると参謀長のリゲットが話し掛けてきた。
「ペテロス少しいいですか?」
「構いませんが」
(参謀長がいったい私に何の用だろうか?)
「話というのは、今回の作戦に介入してくる者がいるかもしれないという報告を部下から聞きまして、もしかしたらと思い声を掛けました」
「その介入してくる者とは?」
(わざわざ小競り合いに介入してくる者がいるとは……)
私が返答するとリゲットが考える仕草をすると口を開いた。
「詳しいことは言えません。ですが気よつけておいてください」
私に言い終えると歩み去っていった。
(いったい何だったんだ? それに介入する者とはいったい……)
本部テントからの帰り道、リゲットの言葉の真意考えながら担当場所に戻った。
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