半グレ銀行マンの復讐と野望

愛国文恵

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復讐 2

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その日、支店長室は「聴聞会」の場として設えられていた。
 
とはいえ、大げさなものではない。傍聴も、記録係もいない。

部屋にいるのは三人だけ―― 前島立夫、村木、そして千賀子。

立夫は最初に、村木と千賀子に視線を向け、静かに言った。

「ええな。今日は聴聞会や。処分ありきやない。一応、弁明の機会は与える」

村木は黙ってうなずき、千賀子はメモを手に背筋を伸ばした。
感情は排し、事実だけを見る――その役割を理解している。

「ただしや」

立夫は言葉を切った。

「情に訴える話はいらん。数字、行動、結果や。それが弁明や」

 支店長室の前には、椅子が一脚だけ置かれていた。そこに、一人ずつ呼び入れる。

 最初に呼ばれたのは、営業を束ねてきた古参だった。
 立夫は淡々と告げる。

「君がやったこと、君がやらんかったこと、全部資料に出とる。まず、それを見た上で話せ」

 男は必死に「支店のためだった」と語ったが、
 数字の前で言葉は細り、やがて沈黙した。

「弁明はそれで終わりか?」

 立夫の問いに、男は何も返せなかった。

 処分は即座に下された。解雇ではない。だが、降格と地方異動。“戻れない線”を越える処分だった。

 二人目は総務。慣例と前例を盾に、不正を見逃してきた男だ。

「規則を守る部署が、一番規則を歪めとる。それについて弁明はあるか?」

 汗をかきながらの言い訳は続いたが、千賀子が差し出した資料一枚で、すべてが止まった。

 その一言で、結論は決まった。
 「君は三重の田舎に転勤だ 以上だ」

 三人目――人事担当。
 立夫を貶める評価を書いた張本人だった。

「人事は“人を見る部署”や。 私怨を混ぜた時点で、失格や」

男は声を震わせて謝罪したが、村木が首を横に振った。

「遅い!俺を故意に貶めた罪は軽くはない 君は四国に行ってもらう 平に降格だ」

 
そして最後に、前支店長が呼ばれた。

 入室した瞬間から、様子が違った。顔色は悪く、視線は泳いでいる。

「……前島君、いや、海棠支店長」

 立夫は一言だけ告げた。

「座れ。まず言うとく。今日は“話を聞く場”や。命乞いの場やない」

 だが、前支店長は耐えきれなかった。

「頼む……首だけは……」

 立ち上がり、声を震わせる。

「私には家族がいる。ローンもある……ここで終わったら、すべてが――」

 ついに膝をつき、土下座した。

 村木も、千賀子も黙って見ていた。感情を挟まない、それが聴聞会だった。

 立夫は、しばらく沈黙したあと、低く言った。

「あんたは 俺に女たらしと言った どこにその証拠があったのや!」
「も、申し訳ありません!」
顔を床にこすりつけて呻くように詫びた

「首にはせえへん。その代わり――支店長の椅子は二度と戻らん」

降格、左遷、昇進停止。銀行員として生き続けるが、二度と表舞台には戻れない処分。
「文句があったら 裁判でもなんでもやれ、受けて立つ!」

前支店長は、声にならない声で礼を言った。 扉が閉まる。

立夫は立ち上がり、二人に言った。

「これで 行内の復讐は終わったが 今度は外や こいつは時間かけてゆっくりや 奴らを必ず破滅させたる!」
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