死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸

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第1章〜塔の上の指揮者〜

第6話•後編〜静かに動き出すもの 〜




《クエスト達成》
【クエスト名】射手に託す刻
【達成報酬】《建築技術:監視塔》
「監視塔」の建設が可能になる。村の警戒範囲が広がり、敵の接近を早期に察知できる。

 

ウィンドウがすっと消えたあと、俺は静かに息を吐いた。

 

目を伏せるリリィの肩に、そっと手を置く。

まだ震えてはいたが、その瞳には確かな強さが宿っていた。 

◇ ◇ ◇

暖炉の炎がゆらゆらと揺れる執務室で、俺はようやく椅子に腰を下ろした。

長い一日だった。

 

セリアは反対側の椅子に座り、肩を固定した包帯を静かに整えている。

ガロの家にあった薬箱から見つけたものだ。

 

彼女は骨折の応急処置を自分で施し、腕を吊ったままほとんど表情を変えずに動いていた。

 

本当に――何でもできる人だ。

 

「……大丈夫か、セリア」

 

そう声をかけると、彼女は一度だけ頷いた。

 

「固定さえできれば、問題ありません。多少の痛みは想定の範囲内です」

 

その淡々とした言いぶりに、俺は内心で苦笑した。

 

あの後、俺たちはそのままガロの家を訪ねた。

老狩人は片腕を吊っていたが、意識ははっきりしており、落ち着いた様子で応じてくれた。

 

「ちょうどひと月ほど前から、森に魔物が出るようになった」――ガロはそう言った。

 

最初は一体きりだったが、日に日に数が増え、ついには複数を相手にすることもあった。

そのときの戦いで、右腕をやられた――とのことだった。

 

……話を聞きながら、俺の頭に、ふと引っかかるものがあった。

 

「……ひと月前、か」

 

それは、俺たちがこの村にやって来た時期と、ぴたりと重なっている。

 

偶然だろうか。

それとも――何か因果があるのか。

 

「セリア。……魔物の出現、俺たちが来たことと関係があると思うか?」

 

ふと浮かんだ疑念を、そのまま口にする。

セリアは記入の手を止め、顔だけを少しだけこちらに向けた。

 

「断定はできません。ただ……その時期から村に変化があったというのは、確かです。
遺跡についても、今のところ過去の記録には一致する現象は残されていません」

 

「……何も分かってない、か」

 

深く息を吐き、椅子の背にもたれる。

 

だが、何も起きていないとは――もう言えなかった。

 

「なら、備えるに越したことはないな。……村の防衛体制、考える必要があるかもしれない」

 

セリアはわずかに頷いた。

 

「はい。可能であれば、周辺の地形を踏まえた警戒網を……私の方で案をまとめておきます」

 

「助かる」

 

すぐに次の行動を見据えて動こうとする彼女の背を、ふと目で追う。

 

俺も、立ち止まってはいられない。


◆◇◆ 次回更新のお知らせ ◆◇◆
更新は明日【6月16日】【12時05分】
を予定しております。

よろしければ「お気に入り登録」や「ポイント投票」「感想・レビュー」などいただけると、とても励みになります。

続きもがんばって書いていきますので、また覗いていただけたら嬉しいです。

◆◇◆ 後書き ◆◇◆
お読みいただき、ありがとうございました!

今回のお話、いかがでしたでしょうか。
魔物に森に、セリアに弓――そして急に始まる、リリィの覚醒イベント。

……いえ、こちらとしてもですね、「あれ? なんかリリィ急に光り始めたぞ?」となりまして。
でもきっと、彼女の中に眠っていた“矢の才能”が、ルノスの覚悟に触れて目を覚ましたのだと思います。うん、たぶんそう。

さて、次回・第7話では――
村に〈監視塔〉が建ちます!

じわじわと、“戦える拠点”に進化していく村の姿。伝わっていたら嬉しいです。
ちなみに塔の中には、なんだか怪しい古代模様が……?

そして物語の裏側でも、何やら静かに動きが始まりそうです。

 

◆次回:塔の上に立つ者

それでは、次回もどうぞよろしくお願いします!
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