初恋の行方

サラ

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8. 小話 ヒロインなのに

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 私はウンデ。この乙女ゲームのヒロイン。
 皆に愛されて大事にされて幸せなハッピーエンドを迎えるはずだったのに。ずっと牢屋に入っている。ここは冷たくて暗い。これってバッドエンドなの!?


 初めてこの世界が乙女ゲームの世界だとわかったのは『氷の魔女』の童話を見た時。挿絵の魔女を見てこれって、あの乙女ゲームだ! て思わず立ち上がって、そして、笑いが込み上げてきた。そうそう、私は主人公なの。悪い氷の魔女をやっつけて王子様と結ばれる。やったー! 嬉しくてその日は眠れなかった。
 でも、『氷の魔女』の童話では魔術師の女の子ってなっていたけど、主人公の魔力ってたいした事無いんだよね。『氷の魔女』の魔力を手に入れる事で色んな魔法を使えるようになるし、戦争にも勝てる。

「このゲーム、戦争に勝たなくてはいけないなんて面倒臭いわ」
「そうそう、戦争に勝つためにはどうしても戦略とか必要だし、でも、魔法があるからその辺は楽だけど、女の子に戦争なんてさせないでよね、と思うわ」
「何度かやるとタイミングも分かるし、クラーン国の王太子がいる場所も分かっているからいいけどね」
「うん。でもさ、クラーン国の王太子って好みなんだよね」
「負けた国の王妃って嫌じゃない?」
「うーん。そこなんだよ。引き分けにして友好の印にあっちにいくって有りかな」
「ゲームの設定で、隣国の王太子が隠れキャラだったらいけるかも」
「よし、帰ったら何とかしてみよう」

 友達とそんな話をしたのは覚えている。それから何があったか分からないけど、気づいたらここに居て乙女ゲームの主人公だと判明して、狂気乱舞した。

 ゲームの中でわかっていた『愛の手助け』を手に入れたせいか学園では攻略対象者がとても好意を持ってくれた。流石、お助けアイテム。いえいえ、私が可愛いから、何てね。
 でも、ゲームの中で主人公に嫌がらせをしていたリリアージュが何もしてこない。せめて、悪口とか睨むとかだけでもしてくれたら良いのに。

 でも、早く魔法をバンバン使いたい。この世界で魔法を使える人は凄く貴重なんだ。リリアージュは膨大な魔力があるのにそれに全く気付いてないし、宝の持ち腐れ。
 ゲームのなかでは卒業前に断罪シーンがあるけど『切り裂くナイフ』も手に入れたし、学園にいる間に魔法使いってチヤホヤされるのもありかな、と思ってリリアージュの婚約者に『切り裂くナイフ』を渡した。
 それで魔女、リリアージュの額に十字を入れるとリリアージュの魔力が私に移る。

 ごめん、リリアージュ、私のために尊い犠牲になってね。と思ったのに何がいけなかったんだろう。
 でも、リリアージュの額に十字の傷が入ったのに魔力が私に来ないってどういう事!

 牢屋に入れられて、何度も戦争があるって訴えたのに相手にしてもらえない。『氷の魔女』の童話でも主人公は幸せになったのに。
 あのゲームでバッドエンドはなかったはず。
 どうして、私は牢屋にいるんだろう。
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