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12. 小話 悪意(?視点)
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聖国、それは宗教国家なので一番頂点に教皇がいる。
その下に10人の枢機卿がいて、さらにそれぞれの下部組織があって、もうそれは組織としてきっちり雁字搦め。この世界の宗教観としては創造神たる女神様がいて、その女神様の慈愛によってこの世界は維持されている、と言う事になっている。
教皇に成る為には家柄と実績と人柄と言われているけど、それらを兼ね備えた上でのカリスマ性がないとやはり上には立てない。人として生まれたからにはやはりトップに立ちたい。皆から崇め奉られる立場になりたいと思うのはおかしくない。
けれど、女性の一番上は枢機卿止まり。女性も尊重してますよ、というアピールの為の枢機卿なので、大して権力も責任もない。聖国大教会の中の雑用を一手に引き受けて教会内部で働く下級神官たちの育成、管理を受け持つ、なんて普通の王宮でいうとメイド長みたいなものじゃない、と思うけど、もちろん口には出さない。
でも、実は全てをすっ飛ばして聖国のトップに立つ方法もある。それは聖女になる事。
聖女は女神の寵愛を受けているので、その立場と言動は全てにおいて優先される。聖女の認定は教皇猊下がされるけど、認定と同時に聖女は教皇より上の立場となる。つまり、聖国を意のままに動かす事ができる。なんて、羨ましく素晴らしい存在なのだろう。
「メリーさん、今度来られる聖女様のお世話は貴女にお願いしますね」
「はい。畏まりました」
にっこりと笑って引き受けておく。人のお世話をするのは今だけ。もうすぐ、私が聖女になり代わるのだから。
そうして、高まる期待を押さえつつ聖女と言われる女性を迎えてみれば
(どういう事!? 何で氷の魔女が聖女に成っているの! ゲームの主人公はどうしたのよ!)心の中で大きく罵倒しながらも、前世で鍛えた営業力は伊達じゃない。にこやかに氷の魔女と攻略対象者であったカンジーンを迎えた。
まさか、この二人が夫婦になってリリアージュが聖女! 一体何がどうなったのよ。これじゃぁ、主人公をだまくらかして、私が聖女になる計画が台無しじゃない。でも、私が主たるお世話役。
リリアージュから詳しい事情を聞き出して、リリアージュの膨大な魔力を手に入れて聖女に成ってやる。と思ったのだけど、カンジーンの防御が凄い。
片時も離れないし、直接のお世話役も連れてきた人達で固めてつけ入る隙がない。仕方なく世間話を交えて使い走りの子から色々聞き出した。
「あのお二人は仲が凄く良いですね。なれそめとかご存じですか? 何か世紀の大恋愛みたいなステキな恋愛話とかあるのでしょうか?」
「わかりますか。そうなんです。お二人は学園で出会ったのですけど、リリアージュ様が不当に貶められていたのをさりげなく助けていたのがカンジーン様なんです。身分差があるのにそれを乗り越えられたのは愛の力ですわ」
「まぁ、ステキ。ご存じの事、是非教えて下さいな」
「ええ、もちろん」
女の子は恋愛話が大好きだし、彼女はリリアージュの近くで働く人間なので割と詳しい話が聞けた。つまり、何という事でしょう。主人公の勇み足でシナリオが崩れてしまったらしい。おまけにリリアージュが本来の性格とかけ離れていたのが敗因ね。
聖国は他の国とは一線を引いているし、物理的にも遠い。詳しい話がこちらには伝わってこなかったので、乙女ゲームのシナリオ通りに進んでいると思っていた。
戦争にも無事、勝利したみたいだし。
話を聞いた限りでは『愛の手助け』は手に入れて活用していたみたいだけど、『切り裂くナイフ』がうまく働かなかったらしい。
ひょっとして、『切り裂くナイフ』に自分の魔力を纏わせるって事を知らなかったのかもしれない。それとも、纏わせられるだけの魔力が足らなかった? リリアージュの魔力さえ、手に入れれば、自分の内にある聖なる力を膨らませて聖女になれるし、聖女になってさえいれば何でも、何とでもできたのに。
バカな主人公。
もっとも、聖女として聖国にきたら『氷の魔女』という童話を書いたのは私、と打ち明けて、使わなくなった『切り裂くナイフ』は証拠隠滅の為に預かると言って手に入れるはずだったけど。私の魔力はかなり強いからあのナイフの上書きをする事が出来て、上書きすると共にリリアージュの魔力を手に入れて私が聖女になるはずだった。
『愛の手助け』は王家に取られてしまったらしいけど、『切り裂くナイフ』はどこにあるのかしら。あれさえ手に入れれば、何とかなるのに。
幸せそうに笑っているリリアージュ。
そこは私の場所だったのに如何してくれよう。
その下に10人の枢機卿がいて、さらにそれぞれの下部組織があって、もうそれは組織としてきっちり雁字搦め。この世界の宗教観としては創造神たる女神様がいて、その女神様の慈愛によってこの世界は維持されている、と言う事になっている。
教皇に成る為には家柄と実績と人柄と言われているけど、それらを兼ね備えた上でのカリスマ性がないとやはり上には立てない。人として生まれたからにはやはりトップに立ちたい。皆から崇め奉られる立場になりたいと思うのはおかしくない。
けれど、女性の一番上は枢機卿止まり。女性も尊重してますよ、というアピールの為の枢機卿なので、大して権力も責任もない。聖国大教会の中の雑用を一手に引き受けて教会内部で働く下級神官たちの育成、管理を受け持つ、なんて普通の王宮でいうとメイド長みたいなものじゃない、と思うけど、もちろん口には出さない。
でも、実は全てをすっ飛ばして聖国のトップに立つ方法もある。それは聖女になる事。
聖女は女神の寵愛を受けているので、その立場と言動は全てにおいて優先される。聖女の認定は教皇猊下がされるけど、認定と同時に聖女は教皇より上の立場となる。つまり、聖国を意のままに動かす事ができる。なんて、羨ましく素晴らしい存在なのだろう。
「メリーさん、今度来られる聖女様のお世話は貴女にお願いしますね」
「はい。畏まりました」
にっこりと笑って引き受けておく。人のお世話をするのは今だけ。もうすぐ、私が聖女になり代わるのだから。
そうして、高まる期待を押さえつつ聖女と言われる女性を迎えてみれば
(どういう事!? 何で氷の魔女が聖女に成っているの! ゲームの主人公はどうしたのよ!)心の中で大きく罵倒しながらも、前世で鍛えた営業力は伊達じゃない。にこやかに氷の魔女と攻略対象者であったカンジーンを迎えた。
まさか、この二人が夫婦になってリリアージュが聖女! 一体何がどうなったのよ。これじゃぁ、主人公をだまくらかして、私が聖女になる計画が台無しじゃない。でも、私が主たるお世話役。
リリアージュから詳しい事情を聞き出して、リリアージュの膨大な魔力を手に入れて聖女に成ってやる。と思ったのだけど、カンジーンの防御が凄い。
片時も離れないし、直接のお世話役も連れてきた人達で固めてつけ入る隙がない。仕方なく世間話を交えて使い走りの子から色々聞き出した。
「あのお二人は仲が凄く良いですね。なれそめとかご存じですか? 何か世紀の大恋愛みたいなステキな恋愛話とかあるのでしょうか?」
「わかりますか。そうなんです。お二人は学園で出会ったのですけど、リリアージュ様が不当に貶められていたのをさりげなく助けていたのがカンジーン様なんです。身分差があるのにそれを乗り越えられたのは愛の力ですわ」
「まぁ、ステキ。ご存じの事、是非教えて下さいな」
「ええ、もちろん」
女の子は恋愛話が大好きだし、彼女はリリアージュの近くで働く人間なので割と詳しい話が聞けた。つまり、何という事でしょう。主人公の勇み足でシナリオが崩れてしまったらしい。おまけにリリアージュが本来の性格とかけ離れていたのが敗因ね。
聖国は他の国とは一線を引いているし、物理的にも遠い。詳しい話がこちらには伝わってこなかったので、乙女ゲームのシナリオ通りに進んでいると思っていた。
戦争にも無事、勝利したみたいだし。
話を聞いた限りでは『愛の手助け』は手に入れて活用していたみたいだけど、『切り裂くナイフ』がうまく働かなかったらしい。
ひょっとして、『切り裂くナイフ』に自分の魔力を纏わせるって事を知らなかったのかもしれない。それとも、纏わせられるだけの魔力が足らなかった? リリアージュの魔力さえ、手に入れれば、自分の内にある聖なる力を膨らませて聖女になれるし、聖女になってさえいれば何でも、何とでもできたのに。
バカな主人公。
もっとも、聖女として聖国にきたら『氷の魔女』という童話を書いたのは私、と打ち明けて、使わなくなった『切り裂くナイフ』は証拠隠滅の為に預かると言って手に入れるはずだったけど。私の魔力はかなり強いからあのナイフの上書きをする事が出来て、上書きすると共にリリアージュの魔力を手に入れて私が聖女になるはずだった。
『愛の手助け』は王家に取られてしまったらしいけど、『切り裂くナイフ』はどこにあるのかしら。あれさえ手に入れれば、何とかなるのに。
幸せそうに笑っているリリアージュ。
そこは私の場所だったのに如何してくれよう。
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