11 / 26
11. 小話 聖女(リリアージュ視点)
しおりを挟む
何だかカンジーン様と結婚して以来、不思議な力が使えるようになってしまって戸惑っている。
カンジーン様は
「俺とリリアージュの結婚を祝福して神様が不思議な力を授けて下さったんだよ。時々、有り難うございますって祈りを捧げればいいんじゃないかな」
そうおっしゃるので、カンジーン様に与えられた領地と実家の領地と、一応この国の安寧も祈っておいた。
もちろん、カンジーン様の無事と幸福は一番に、ついでにと言うかカンジーン様が心配されるので私の事もお願いしておいた。実家の家族とカンジーン様の家族の幸せも一緒に。
そうしたら、私が祈ったせいとは限らないのだけれど、領地は豊作で気候も安定した。国全体も領地ほどではないけど例年より作物が良く実り、気候も少しだけ穏やかになった、と皆が言う。それはけっして私が祈ったせいではないと思うけど。
「いやいや、リリアージュの祈りが天に届いたのだと思うよ」
「そうだな。リリアージュの周りが特に恩恵を受けている。それに気づいてはいないかもだが、時々お前の身体から光の粒が漏れている」
「リリアージュが王宮に来ると、敬虔な信者はそっと陰から祈りを捧げているな」
「まぁ、良いんじゃないか。リリアージュが幸せならば」
「ええ、私、とても幸せです」
私が幸せの元であるカンジーン様の顔を思い浮かべながらそう言うと、周りに金色の光の粒が舞い散った。光の粒はそのままフワリと空中に消えていくけど、一部はお父様とお兄様の身体に入っていった。
今日はカンジーン様が王宮に出仕しているので、私も一緒に付いて来てしまった。そして宰相の執務室に来ている。少し前までこの部屋でお仕事をしていたと考えると少し前なのに懐かしい感じがする。
今はお父様のお手伝いをお兄様がしているので二人を前にして、作業の効率化について話をしていたけど、ちょっと休憩してオヤツを食べる事になった。オヤツは私が作った新作のチーズケーキ。カンジーン様にはとても好評だったし、お父様とお兄様も美味しそうに食べてくれるのが嬉しい。
「おやおや、幸せそうでなによりだよ」
「本当に」
「それなのに、聖国に招かれてしまうなんて、心配だ」
「聖女として認定して、生活はこれまでと変わらないけど、3年に一度だけ聖国で祈りを捧げてほしい、なんて」
「お父様、私は聖女ではありませんよ」
「それがなぁ、人からもよその国からも聖女と思われているらしい。幸いな事に聖女が穏やかに幸せに暮らす事が神のお気持ちに沿う事になる、とされているから無理難題は言われないが」
「我が国としてはお前の気持ち次第、という事で話が纏まっているんだが、どうする?」
「多分、伺ったほうが良いんでしょうね」
「そうだな。新婚旅行を兼ねて行くか?」
「新婚旅行!」
「国同士の話になるし、カンジーンが一緒なら心配いらないだろう」
お父様の言葉を聞いてちょっとワクワクしてしまった。カンジーン様と一緒に旅行できるなんて楽しそう。
聖女に認定されるなんておこがましいけど、旅行に行けるのはちょっと嬉しいと思ってしまった。
カンジーン様は
「俺とリリアージュの結婚を祝福して神様が不思議な力を授けて下さったんだよ。時々、有り難うございますって祈りを捧げればいいんじゃないかな」
そうおっしゃるので、カンジーン様に与えられた領地と実家の領地と、一応この国の安寧も祈っておいた。
もちろん、カンジーン様の無事と幸福は一番に、ついでにと言うかカンジーン様が心配されるので私の事もお願いしておいた。実家の家族とカンジーン様の家族の幸せも一緒に。
そうしたら、私が祈ったせいとは限らないのだけれど、領地は豊作で気候も安定した。国全体も領地ほどではないけど例年より作物が良く実り、気候も少しだけ穏やかになった、と皆が言う。それはけっして私が祈ったせいではないと思うけど。
「いやいや、リリアージュの祈りが天に届いたのだと思うよ」
「そうだな。リリアージュの周りが特に恩恵を受けている。それに気づいてはいないかもだが、時々お前の身体から光の粒が漏れている」
「リリアージュが王宮に来ると、敬虔な信者はそっと陰から祈りを捧げているな」
「まぁ、良いんじゃないか。リリアージュが幸せならば」
「ええ、私、とても幸せです」
私が幸せの元であるカンジーン様の顔を思い浮かべながらそう言うと、周りに金色の光の粒が舞い散った。光の粒はそのままフワリと空中に消えていくけど、一部はお父様とお兄様の身体に入っていった。
今日はカンジーン様が王宮に出仕しているので、私も一緒に付いて来てしまった。そして宰相の執務室に来ている。少し前までこの部屋でお仕事をしていたと考えると少し前なのに懐かしい感じがする。
今はお父様のお手伝いをお兄様がしているので二人を前にして、作業の効率化について話をしていたけど、ちょっと休憩してオヤツを食べる事になった。オヤツは私が作った新作のチーズケーキ。カンジーン様にはとても好評だったし、お父様とお兄様も美味しそうに食べてくれるのが嬉しい。
「おやおや、幸せそうでなによりだよ」
「本当に」
「それなのに、聖国に招かれてしまうなんて、心配だ」
「聖女として認定して、生活はこれまでと変わらないけど、3年に一度だけ聖国で祈りを捧げてほしい、なんて」
「お父様、私は聖女ではありませんよ」
「それがなぁ、人からもよその国からも聖女と思われているらしい。幸いな事に聖女が穏やかに幸せに暮らす事が神のお気持ちに沿う事になる、とされているから無理難題は言われないが」
「我が国としてはお前の気持ち次第、という事で話が纏まっているんだが、どうする?」
「多分、伺ったほうが良いんでしょうね」
「そうだな。新婚旅行を兼ねて行くか?」
「新婚旅行!」
「国同士の話になるし、カンジーンが一緒なら心配いらないだろう」
お父様の言葉を聞いてちょっとワクワクしてしまった。カンジーン様と一緒に旅行できるなんて楽しそう。
聖女に認定されるなんておこがましいけど、旅行に行けるのはちょっと嬉しいと思ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
2番目の1番【完】
綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。
騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。
それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。
王女様には私は勝てない。
結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。
※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです
自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。
批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…
もうあなた達を愛する心はありません
ぱんだ
恋愛
セラフィーナ・リヒテンベルクは、公爵家の長女として王立学園の寮で生活している。ある午後、届いた手紙が彼女の世界を揺るがす。
差出人は兄ジョージで、内容は母イリスが兄の妻エレーヌをいびっているというものだった。最初は信じられなかったが、手紙の中で兄は母の嫉妬に苦しむエレーヌを心配し、セラフィーナに助けを求めていた。
理知的で優しい公爵夫人の母が信じられなかったが、兄の必死な頼みに胸が痛む。
セラフィーナは、一年ぶりに実家に帰ると、母が物置に閉じ込められていた。幸せだった家族の日常が壊れていく。魔法やファンタジー異世界系は、途中からあるかもしれません。
恩知らずの婚約破棄とその顛末
みっちぇる。
恋愛
シェリスは婚約者であったジェスに婚約解消を告げられる。
それも、婚約披露宴の前日に。
さらに婚約披露宴はパートナーを変えてそのまま開催予定だという!
家族の支えもあり、婚約披露宴に招待客として参加するシェリスだが……
好奇にさらされる彼女を助けた人は。
前後編+おまけ、執筆済みです。
【続編開始しました】
執筆しながらの更新ですので、のんびりお待ちいただけると嬉しいです。
矛盾が出たら修正するので、その時はお知らせいたします。
皇后マルティナの復讐が幕を開ける時[完]
風龍佳乃
恋愛
マルティナには初恋の人がいたが
王命により皇太子の元に嫁ぎ
無能と言われた夫を支えていた
ある日突然
皇帝になった夫が自分の元婚約者令嬢を
第2夫人迎えたのだった
マルティナは初恋の人である
第2皇子であった彼を新皇帝にするべく
動き出したのだった
マルティナは時間をかけながら
じっくりと王家を牛耳り
自分を蔑ろにした夫に三行半を突き付け
理想の人生を作り上げていく
失礼な人のことはさすがに許せません
四季
恋愛
「パッとしないなぁ、ははは」
それが、初めて会った時に婚約者が発した言葉。
ただ、婚約者アルタイルの失礼な発言はそれだけでは終わらず、まだまだ続いていって……。
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる