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23. 小話 救助 (リリアージュ視点)
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ウンデさんと男の人の会話からウンデさんが聖女である事を証明するために、私に十字の傷を付けるという事がわかった。けど、せっかく綺麗に傷痕が消えたのにまた、付けられるのは嫌だし、カンジーン様が悲しむと思う。だけど、私は不思議な力を使えるようになったから傷を付けるのは無理じゃないかな。
そう思っていると
「よーし、何とかできたような気がする」
「なにがだ?」
「聖なる気をナイフに纏わせないと魔女を成敗できないのよ」
「成敗はするな。将軍の妻だぞ」
「もう、離婚されるから大丈夫だって」
「わからないだろうが」
「カンジーンは騙されているだけだから、私が聖女になれば目が覚めるわよ」
「とにかく、十字を入れるのは腕だ」
「わかってるわよ」
そうして、ウンデさんが私の前に立ったのがわかった。男の人が私の袖をめくって両手で腕が動かないように押さえつけてきた。ちょっと痛い。
「リリアージュ、覚悟!」
そう言いながらウンデさんが額にナイフを刺してきた。
「あっ、お前、何をするんだ!」
「うわっ! ウソ!」
男の人が慌てたように声を上げたけど、ナイフは私の額に当たってそのままスルリと滑り落ちた。
そう、物理的に私に傷を入れる事は出来ない。
不思議な力が目覚めてから、癒しの力とか攻撃を受けても傷つかない防御力とかが身についてくれたようで、私はこけてもケガをしなくなった。
カンジーン様にも守りの力でバリアーみたいなのを何重にも重ねて置いたから、カンジーン様が傷つく事はないと思う。ただ、守りの力は目に見えないから、どうなるのか心配だったけど、無事に発動してくれるみたいで安心した。これで、カンジーン様もきっと何事もなく帰って来てくれると思う。
「ちょっと、どういう事よ。なんで『切り裂くナイフ』が効かないの! 何をした! リリアージュ!」
「つまり、お前は聖女じゃないって事だな」
「えっ、いや、そんなはずはないわ。魔女が何か呪いをかけたのよ」
「とにかく、試しはお前の負けだ。リリアージュ様は返すぞ」
「なんで! なんで!」
「お前のいう事には真実が混ざっていたからな。念のために試しただけだ」
「違う! 違うわ! 私はヒロインで聖女なの!」
「お前の言う通りにしたが、印はつけられなかった。お前は聖女ではない」
「いやだ! この魔女! リリアージュ!」
ウンデさんは錯乱したみたいに何度もナイフを拾っては私に切りつけてきた。けれど、私に傷を付ける事は出来なかった。
「この、このクソ! 魔女! 魔女め!」
「止めろ!」
「何すんのよ!」
あっ、この声はカンジーン様。無事に戻られたのね。良かった。
「リリアージュ、無事か?」
「ええ、私は何ともないわ。でも、ウンデさんが」
スルリと目隠しが取られると、そこには取り押さえられたウンデさんがいた。カンジーン様が連れてきた騎士や兵士が居るけど、あの男の人は居ないみたい。
縛られた縄を解かれて背伸びをすると、カンジーン様が抱き着いてきた。
「心配した」
「ごめんなさい」
「いや、リリアージュ、は悪くない。周到に計画された誘拐だったようだ」
カンジーン様が帰ってくるのが凄く早かったのは転移の魔法陣を使えたから。少し前だけど古の転移魔法陣が発見されてそれに私の魔力を注ぐことで魔法陣が起動するようになった。持ち歩いた先からこちらの領地までの転移ができるようになっていたので、こんなに早く帰ってくる事が出来たのだった。
救助されてから、お家に帰るとお兄様が真っ青な顔で駆け寄ってきた。凄く心配をかけたみたいだ。
「リリアージュ、無事で良かった」
「お兄様ったら、私に傷を付けるのは無理だって知っていらしたでしょう?」
「それでも、傷はつけられなくても誘拐は可能だという事は盲点だった」
「本当にリリアージュが誘拐されたという連絡がきて心臓が止まるかと思った」
「カンジーン様の心臓が止まったら私は生きていられませんわ」
「とにかく、今回の件はきちんと調べないと妙に手際が良かった」
「でも、……誘拐した人? 人達でしょうか? 私を傷つけるつもりはなかったようなんです」
「どういう事だ?」
「ただ、ウンデ様が聖女だというのが本当かどうか確かめたかったみたいで……」
私が誘拐された後の彼らのやり取りを話すとカンジーン様とお兄様は首を傾げた。
「リリアージュの事を終始、様付けで呼んでいたそうだし、額に傷を付けるなと言っていたという事は……どういう事だ?」
「もし、カンジーンが踏み込まなければ、そのままリリアージュを無事に返したという事か?」
「多分」
結局、あの場所で捕まったのはウンデさんだけで他の人達は見事に消えてしまっていた。跡形もなく。彼らが何者かは良くわからない。
この後、カンジーン様が凄く、凄く心配するので私は私が許可しなければ触れない魔法を自分自身に掛ける事になった。目の前で名前を呼んで「この人が触る事を許可します」と言わなければ誰も私に触れない。
私が通ると空気の層がバリアーになったみたいに人を押しのける事ができる。ので、面白くてカンジーン様で少し遊んでいたらカンジーン様が拗ねた。なので、カンジーン様だけはいつでも触れる事に変更。
「これで、二人だけの世界が作れる」って喜んでもらえたから良いのでしょう。カンジーン様、大好き。
そう思っていると
「よーし、何とかできたような気がする」
「なにがだ?」
「聖なる気をナイフに纏わせないと魔女を成敗できないのよ」
「成敗はするな。将軍の妻だぞ」
「もう、離婚されるから大丈夫だって」
「わからないだろうが」
「カンジーンは騙されているだけだから、私が聖女になれば目が覚めるわよ」
「とにかく、十字を入れるのは腕だ」
「わかってるわよ」
そうして、ウンデさんが私の前に立ったのがわかった。男の人が私の袖をめくって両手で腕が動かないように押さえつけてきた。ちょっと痛い。
「リリアージュ、覚悟!」
そう言いながらウンデさんが額にナイフを刺してきた。
「あっ、お前、何をするんだ!」
「うわっ! ウソ!」
男の人が慌てたように声を上げたけど、ナイフは私の額に当たってそのままスルリと滑り落ちた。
そう、物理的に私に傷を入れる事は出来ない。
不思議な力が目覚めてから、癒しの力とか攻撃を受けても傷つかない防御力とかが身についてくれたようで、私はこけてもケガをしなくなった。
カンジーン様にも守りの力でバリアーみたいなのを何重にも重ねて置いたから、カンジーン様が傷つく事はないと思う。ただ、守りの力は目に見えないから、どうなるのか心配だったけど、無事に発動してくれるみたいで安心した。これで、カンジーン様もきっと何事もなく帰って来てくれると思う。
「ちょっと、どういう事よ。なんで『切り裂くナイフ』が効かないの! 何をした! リリアージュ!」
「つまり、お前は聖女じゃないって事だな」
「えっ、いや、そんなはずはないわ。魔女が何か呪いをかけたのよ」
「とにかく、試しはお前の負けだ。リリアージュ様は返すぞ」
「なんで! なんで!」
「お前のいう事には真実が混ざっていたからな。念のために試しただけだ」
「違う! 違うわ! 私はヒロインで聖女なの!」
「お前の言う通りにしたが、印はつけられなかった。お前は聖女ではない」
「いやだ! この魔女! リリアージュ!」
ウンデさんは錯乱したみたいに何度もナイフを拾っては私に切りつけてきた。けれど、私に傷を付ける事は出来なかった。
「この、このクソ! 魔女! 魔女め!」
「止めろ!」
「何すんのよ!」
あっ、この声はカンジーン様。無事に戻られたのね。良かった。
「リリアージュ、無事か?」
「ええ、私は何ともないわ。でも、ウンデさんが」
スルリと目隠しが取られると、そこには取り押さえられたウンデさんがいた。カンジーン様が連れてきた騎士や兵士が居るけど、あの男の人は居ないみたい。
縛られた縄を解かれて背伸びをすると、カンジーン様が抱き着いてきた。
「心配した」
「ごめんなさい」
「いや、リリアージュ、は悪くない。周到に計画された誘拐だったようだ」
カンジーン様が帰ってくるのが凄く早かったのは転移の魔法陣を使えたから。少し前だけど古の転移魔法陣が発見されてそれに私の魔力を注ぐことで魔法陣が起動するようになった。持ち歩いた先からこちらの領地までの転移ができるようになっていたので、こんなに早く帰ってくる事が出来たのだった。
救助されてから、お家に帰るとお兄様が真っ青な顔で駆け寄ってきた。凄く心配をかけたみたいだ。
「リリアージュ、無事で良かった」
「お兄様ったら、私に傷を付けるのは無理だって知っていらしたでしょう?」
「それでも、傷はつけられなくても誘拐は可能だという事は盲点だった」
「本当にリリアージュが誘拐されたという連絡がきて心臓が止まるかと思った」
「カンジーン様の心臓が止まったら私は生きていられませんわ」
「とにかく、今回の件はきちんと調べないと妙に手際が良かった」
「でも、……誘拐した人? 人達でしょうか? 私を傷つけるつもりはなかったようなんです」
「どういう事だ?」
「ただ、ウンデ様が聖女だというのが本当かどうか確かめたかったみたいで……」
私が誘拐された後の彼らのやり取りを話すとカンジーン様とお兄様は首を傾げた。
「リリアージュの事を終始、様付けで呼んでいたそうだし、額に傷を付けるなと言っていたという事は……どういう事だ?」
「もし、カンジーンが踏み込まなければ、そのままリリアージュを無事に返したという事か?」
「多分」
結局、あの場所で捕まったのはウンデさんだけで他の人達は見事に消えてしまっていた。跡形もなく。彼らが何者かは良くわからない。
この後、カンジーン様が凄く、凄く心配するので私は私が許可しなければ触れない魔法を自分自身に掛ける事になった。目の前で名前を呼んで「この人が触る事を許可します」と言わなければ誰も私に触れない。
私が通ると空気の層がバリアーになったみたいに人を押しのける事ができる。ので、面白くてカンジーン様で少し遊んでいたらカンジーン様が拗ねた。なので、カンジーン様だけはいつでも触れる事に変更。
「これで、二人だけの世界が作れる」って喜んでもらえたから良いのでしょう。カンジーン様、大好き。
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