辺境伯の5女ですが 加護が『液体』なので ばれる前に逃げます。

サラ

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12. 加護の儀

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「マジかよ。俺のステータスは消せるだけか」
「これ、私の『隠蔽』の加護由来のせいかもしれない」
「いや、おかげ様ですごく楽になったし俺も加護を隠せるから良かった。加護レベル5なんてばれたくないし」
「加護の名称も変えられるよ?」
「うーん。リーナと違って加護の名前だけ変えても何もできないし、加護『パンの木』だけでいいや。ほら、今回の加護の儀だけど、身内の貴族は俺とリーナだけだろう?」
「ええ、そうね」
「だから多分、俺は母親が平民だからリーナが魔法学園に行けるのなら従者になれるんじゃないかな」
「あっ、そうか」
「多分、良い加護だと貴族の子として別々に魔法学園に通うけど、従者なら一緒にいられる」
「本当だ。そうしたら、心強いね」
「魔法学園のほうが何かあった時、逃げやすいような気がするし逃亡は延期しよう」

 という話をして、とりあえず私たちは加護の儀をごまかす事を決めた。

「レベル5はぶどうパンなのね。ぶどうパンなんて久しぶり」
「これ、高校の購買で時々来ていた美味しいパン屋のぶどうパンだ。もう、争奪戦でさ。普通に買うより安くしてくれてるし、大き目だし、干しブドウも多めに入っているし、手に入った連中は雄叫びを上げていた」
「雄叫び!」
「男子校だったから」
「男子校に行っていたの?」
「ああ、男子校ってすごく気楽でいいよ。余計な事、考えないから勉強に専念できるし」
「そうなの」

 良く解らないけどお兄様の持論によると、普通の男子は女子の目がないほうが能力を発揮できるらしい。女の子を意識してしまうとチャラい方向に行くとか、何とか。

 まぁ、それはそれとして、加護の儀に合わせて新しい家庭教師と執事が確認に来た。
 お兄様も呼び出されたらしくて、執事と一緒に部屋に入ってきたのはちょっとびっくりした。
 この家庭教師は乳母との関係はないらしい。わたしとお兄様はお勉強とかマナーとかしっかりとチェックされて合格と言われた。

「しっかりと教育されているようです」
「これなら加護の儀とその後も問題ありませんね」

 そして、加護の儀のマナーも教えられて当日には領主であるお父様との会食があると伝えられた。側で乳母はうんうんと得意げに頷いていたけど、記憶が戻ってなければとんでも野生児だったかもしれないよ。家庭教師のほうは今更心配になったみたいでソワソワしていた。

 そして、7月25日。
 領主館の隣に建っている礼拝所で加護の儀が行われた。
 加護の儀には領主であるお父様と正妻、側妃2人が礼拝堂の特別席っぽいところに座っていて、2階席の高いところから見下ろす形になっている。
 礼拝堂の前半分は仕切られて今日、加護の儀を受ける子供たちが座っていた。

 そんなに人数がいないと思ったら領都に住んでいる子を5日間、午前と午後に分けて加護の儀をおこなうそうだ。
 私は一応、正式な領主の子なので、一番最初に加護の儀をするし皆を代表する立場になるそうだ。
 物凄く立派な服を着た神官がやってきてご神体の前に水晶の玉を置いた。よく占い師が使っているような丸い水晶玉だった。

 まず私が女神様に挨拶の口上を述べ深く拝礼してから水晶玉に触った。すると、ものすごく眩い光が水晶からあふれ出し、白い枠に囲まれた半透明なステータスがデンと大きく目の前に現れた。もう、皆に丸見え。

 リーナ・アプリコット。
 12歳
 加護『水魔法』

 良かった~! ちゃんと加護が水魔法になっている。

 すごい歓声が起こった。領主も立ち上がっている。期待してなかった女の子に魔法の加護が与えられたのが嬉しいみたいだ。横の正妻と側妃はムッとした顔をしているけど、もう一人の側妃は笑顔で涙を流している。
 泣いているのがお母さまか……、実感はあまりないけど。

 神官はしばらく呆けた顔でこちらを見ていたがハッと我に返ると

「おめでとうございます。すばらしい魔力量です。このような眩い光は見たことがありません。それに水魔法。水魔法は近年出ていませんでしたから本当に喜ばしいことです。おめでとうございます。私はメレオットと申します。どうぞ、何かあったら王都でお力になります」

 と言いながら、私に名刺のようなカードをくれた。
 これは……良かったのだろうか。せめて魔力量も何とかごまかす工夫が必要だったような気がする。

 さて、お兄様の加護の儀。

 アーク・アプリコット。
 12歳
 加護『パンの木』

 ステータスはそのまま出てきたが、眩い光が水晶からあふれ出した。普通は仄かに光るらしい。

「おめ、おめでとうございます。加護はパン? パンの木ですね。とても珍しい加護です、というか初めてかもしれません。ただ、魔力量は素晴らしいです。こんなに魔力量が多いのが続くなんて……」

 小さな声で「何か不具合が?」

 と言っていたけど、お兄様の後は普通の魔力量と普通の加護が続いて神官は安心したみたいだ。
 加護の儀の後は神官たちも含めて家族で会食が予定されているが、領主である父から何を言われるかちょっと不安。
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