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14. 婚約
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加護の儀は7月だったが、9月になって直ぐに公爵家から問い合わせがあって仮婚約を結ぶ事になり、顔合わせは4月の学園入学式の前に行われる事となった。仮とついているが実質の婚約だから安心しろと言われた。
嬉しくない。
また、新しい家庭教師が週3でやってきてお兄様と共に勉強を見てくれる事になって、覚えの良さと計算の速さをすごく褒められた。
その時にマナーとダンス、社交に必要な諸々の常識、外国の基礎知識とかも詰め込まれた。
この大陸は大陸共通語で言語は統一されているけど、他の大陸は大陸ごと、また種族ごとに固有の言語があって、日常会話ぐらいはできたほうが良いらしい。
公爵夫人は国を代表する表の顔の一人として活躍するそうだ。
……冗談じゃない。
そんな大それた事は望んでなかったのに。
公爵家の加護だが、近年は『水魔法』の加護はなかなか出なくなって、『水の魔法』『水』『水魔』「みずの魔法」といった『水魔法』に少し劣る加護が多く出ているそうだ。
公爵家の当主とその弟には『水魔法』の加護があるが、嫡男をはじめ子供には「水の魔法」の加護しかないので『水魔法』の加護がある私をどうしても娶りたいらしい。
その為、本人に会う事もなく、直ぐに仮婚約となってしまったそうだ。
ああ、本当に憂鬱。
家庭教師とのお勉強がある為、部屋は元の部屋に戻されて乳母の暴力は無くなった。乳母は私を殴ろうとして領主の加護が効いている事に気づいたらしい。
「あら、ご領主さまの加護があるわ。という事は本当の子だったのね。これまではたまたま外れていたのかしら。じゃぁ、殴れないわ。でも、私には隷属の加護がそんなに効かないからまぁ、何とかなるでしょ」
「ねぇ、お嬢様は凄い良い加護だったから、もう嫁にはできないわよね」
侍女が乳母に聞くと
「そうね。信じられないけど良い加護だったわね。しかも教育もできているなんてどうなっているのかしら。でも、これまで言いなりだったから問題はないわ。ご領主さまに言いつけもしなかったでしょう?」
「それはそうだけど」
「ついていく侍女が私でないのは残念だけど、シオが付いていくからこれまでの教育が生きると思うのよ」
「そんなにうまくいく?」
「大丈夫よ。ご領主さまは子供のたわごとなんて聞きゃしないもの。公爵家の正妻の侍女なんていいわねぇ。私も乳母として付いていこうかしら」
「えっ?!」
いや、この人、私に合わせて又、子供を産むつもりかしら? 信じられない。侍女になるのもお断り。
でも、乳母の言う通り、
お父様の執務室に呼ばれて婚約の内定が伝えられた時、乳母の横暴を伝えようとしたが話をする間も与えられなかった。子供は人として見ていないらしい。
全く会話にならずただ、与えられた質問に答えたのみだった。
執事も侍女長も本館の侍女も、大人は全く私の意志を確認しないし、話もしない。機械的に用事をこなすだけだからどうなっているんだろうと思う。正妻の思惑もあるのかもしれない。
7月以降は週に一度本宅に呼ばれて家族と会食をしたが、それはマナーをみられるだけで横についている侍女長がいちいち会話のセリフも伝えてくるので只管その言葉を繰り返すだけだった。
つまり私は家族とされている人達と個人的な会話は一度も交わしていない。
側妃のお母様とも食卓越しに季節の挨拶と天気や当たり障りのない会話をつなぐだけだった。
お兄様は従僕としての訓練を受けているため、食事の時は少し後ろに立っている。
でも、月に一度はマナーの練習の為に家族の食卓の末席に座り、やはり執事に細かく会話の手ほどきを受けていた。
家庭教師の来ない日と本館に呼ばれない時はお兄様のお家にこっそりと行ってストレス解消している。
自由におしゃべりして、好きなものを食べられるってすばらしい。
乳母も侍女も長年の習慣から私が居なくても気にしないし、家庭教師の目がない時は解放された気分で羽をのばしているようだ。
それにしても、お兄様のお母様が居ない事は特に問題にならなかったようだ。お兄様がお母様は消えました、と告げたのに「そうですか」と言われただけだった。
そして、それからはお母さま関係の物資は来なくなったがお金は半額に減らされて届いているそうだ。お兄様のお洋服もこれまでは融通のきく大き目サイズが届いていたのが、キチンとサイズの合ったものが届くようになった。
ひょっとして私にもお小遣いが届いていたのだろうか。見たことないけど。
「お兄様、私、婚約してしまったわ」
「そうだね。困ったね」
「バレル前に逃げないととんでもないことになるわ」
「相手が公爵家とは思わなかったけど、まだ結婚まではかなり時間があるから」
「そうね。まだ12歳ですものね。普通、高位貴族の結婚は17歳からだわ」
「そうだね。女性は17歳から23歳までで結婚する事が多いみたいだ。あまり早すぎるのは良くないから経験則からきているのかな」
「5年の猶予があるから、何とか、何とかなるかなぁ……」
「大丈夫。其のころまでにはもっとレベルが上がるし、いざとなれば殲滅できるよ」
「もう、お兄様ったら。お兄様こそバナナの加護に進化したらどうするの?」
「それはもうリーナの加護でごまかせるから大丈夫。でも、バナナよりパンのほうがずっと良いと思うけど」
「そうね。領内の産業という意味ではバナナの加護は大切だけど、パンの加護のほうが種類もあるし美味しいもの」
「パンの加護が進化するとパン屋が開ける、かもしれない」
「私の『液体』の加護と合わせてカフェ併設パン屋ね」
「その前に逃亡しないといけないけどな」
私たちはマドレーヌと桃のフレーバーティーを前にしてため息をついた。最近はクッキーやロールケーキ、マドレーヌをはじめ焼き菓子をセッセと作っては貯めこんでいる。お肉も欲しいけど狩りに行くと時間を取られるため、最近はいけないのが残念だ。
嬉しくない。
また、新しい家庭教師が週3でやってきてお兄様と共に勉強を見てくれる事になって、覚えの良さと計算の速さをすごく褒められた。
その時にマナーとダンス、社交に必要な諸々の常識、外国の基礎知識とかも詰め込まれた。
この大陸は大陸共通語で言語は統一されているけど、他の大陸は大陸ごと、また種族ごとに固有の言語があって、日常会話ぐらいはできたほうが良いらしい。
公爵夫人は国を代表する表の顔の一人として活躍するそうだ。
……冗談じゃない。
そんな大それた事は望んでなかったのに。
公爵家の加護だが、近年は『水魔法』の加護はなかなか出なくなって、『水の魔法』『水』『水魔』「みずの魔法」といった『水魔法』に少し劣る加護が多く出ているそうだ。
公爵家の当主とその弟には『水魔法』の加護があるが、嫡男をはじめ子供には「水の魔法」の加護しかないので『水魔法』の加護がある私をどうしても娶りたいらしい。
その為、本人に会う事もなく、直ぐに仮婚約となってしまったそうだ。
ああ、本当に憂鬱。
家庭教師とのお勉強がある為、部屋は元の部屋に戻されて乳母の暴力は無くなった。乳母は私を殴ろうとして領主の加護が効いている事に気づいたらしい。
「あら、ご領主さまの加護があるわ。という事は本当の子だったのね。これまではたまたま外れていたのかしら。じゃぁ、殴れないわ。でも、私には隷属の加護がそんなに効かないからまぁ、何とかなるでしょ」
「ねぇ、お嬢様は凄い良い加護だったから、もう嫁にはできないわよね」
侍女が乳母に聞くと
「そうね。信じられないけど良い加護だったわね。しかも教育もできているなんてどうなっているのかしら。でも、これまで言いなりだったから問題はないわ。ご領主さまに言いつけもしなかったでしょう?」
「それはそうだけど」
「ついていく侍女が私でないのは残念だけど、シオが付いていくからこれまでの教育が生きると思うのよ」
「そんなにうまくいく?」
「大丈夫よ。ご領主さまは子供のたわごとなんて聞きゃしないもの。公爵家の正妻の侍女なんていいわねぇ。私も乳母として付いていこうかしら」
「えっ?!」
いや、この人、私に合わせて又、子供を産むつもりかしら? 信じられない。侍女になるのもお断り。
でも、乳母の言う通り、
お父様の執務室に呼ばれて婚約の内定が伝えられた時、乳母の横暴を伝えようとしたが話をする間も与えられなかった。子供は人として見ていないらしい。
全く会話にならずただ、与えられた質問に答えたのみだった。
執事も侍女長も本館の侍女も、大人は全く私の意志を確認しないし、話もしない。機械的に用事をこなすだけだからどうなっているんだろうと思う。正妻の思惑もあるのかもしれない。
7月以降は週に一度本宅に呼ばれて家族と会食をしたが、それはマナーをみられるだけで横についている侍女長がいちいち会話のセリフも伝えてくるので只管その言葉を繰り返すだけだった。
つまり私は家族とされている人達と個人的な会話は一度も交わしていない。
側妃のお母様とも食卓越しに季節の挨拶と天気や当たり障りのない会話をつなぐだけだった。
お兄様は従僕としての訓練を受けているため、食事の時は少し後ろに立っている。
でも、月に一度はマナーの練習の為に家族の食卓の末席に座り、やはり執事に細かく会話の手ほどきを受けていた。
家庭教師の来ない日と本館に呼ばれない時はお兄様のお家にこっそりと行ってストレス解消している。
自由におしゃべりして、好きなものを食べられるってすばらしい。
乳母も侍女も長年の習慣から私が居なくても気にしないし、家庭教師の目がない時は解放された気分で羽をのばしているようだ。
それにしても、お兄様のお母様が居ない事は特に問題にならなかったようだ。お兄様がお母様は消えました、と告げたのに「そうですか」と言われただけだった。
そして、それからはお母さま関係の物資は来なくなったがお金は半額に減らされて届いているそうだ。お兄様のお洋服もこれまでは融通のきく大き目サイズが届いていたのが、キチンとサイズの合ったものが届くようになった。
ひょっとして私にもお小遣いが届いていたのだろうか。見たことないけど。
「お兄様、私、婚約してしまったわ」
「そうだね。困ったね」
「バレル前に逃げないととんでもないことになるわ」
「相手が公爵家とは思わなかったけど、まだ結婚まではかなり時間があるから」
「そうね。まだ12歳ですものね。普通、高位貴族の結婚は17歳からだわ」
「そうだね。女性は17歳から23歳までで結婚する事が多いみたいだ。あまり早すぎるのは良くないから経験則からきているのかな」
「5年の猶予があるから、何とか、何とかなるかなぁ……」
「大丈夫。其のころまでにはもっとレベルが上がるし、いざとなれば殲滅できるよ」
「もう、お兄様ったら。お兄様こそバナナの加護に進化したらどうするの?」
「それはもうリーナの加護でごまかせるから大丈夫。でも、バナナよりパンのほうがずっと良いと思うけど」
「そうね。領内の産業という意味ではバナナの加護は大切だけど、パンの加護のほうが種類もあるし美味しいもの」
「パンの加護が進化するとパン屋が開ける、かもしれない」
「私の『液体』の加護と合わせてカフェ併設パン屋ね」
「その前に逃亡しないといけないけどな」
私たちはマドレーヌと桃のフレーバーティーを前にしてため息をついた。最近はクッキーやロールケーキ、マドレーヌをはじめ焼き菓子をセッセと作っては貯めこんでいる。お肉も欲しいけど狩りに行くと時間を取られるため、最近はいけないのが残念だ。
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