辺境伯の5女ですが 加護が『液体』なので ばれる前に逃げます。

サラ

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19. ショックなピンクと婚約者

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「ねぇ、お兄様。どう思う?」
「とりあえず、ボッチにならなくて良かったけど、公爵令嬢、存在感がなさすぎて空気みたいになっていたよ。おかげでリーナのほうに注目が集まってしまう」
「人が苦手って言っていたけど、私とかお兄様とお話している様子を見ると、そうでもなさそうなんだけど」
「変わった人だな」
「本当に」

「社交の中心はリーナに任せたいって言いだしそうだ」
「うわー、いやだ。今は4年生に公爵令嬢がいるからいいけど、3年生は侯爵家なのよ。でも、2つ上で侯爵家だから彼女が中心になるとしてその下が伯爵家だから、私たちが3年生になったら社交の中心はフルール様になるわよね」
「存在を消してね」
「空気のような存在感で社交の中心人物になれると思う?」
「無理じゃないか」
「そうよね」
「次期公爵夫人だからと言って押し付けてきそうだ。可愛らしく「ごめんなさい」と言いながら」
「……とりあえず、それまで後2年あるわ」
「そうだな。問題は棚上げに限る」
「もう。お兄様ったら」

 私たちはクレープにバナナとカスタードクリームを挟んでオヤツを食べていた。飲み物はレモンティー。
 いつもはミルクティーだがたまには爽やかなレモンも良いと思う。

「なぁ、リーナ。コーヒーは出てこないのか?」
「そういえばまだね。お兄様、コーヒーが飲みたいの?」
「コーヒーというよりカフェオレが飲みたいかな」
「私はチョコレートとか、ココアとか飲みたいかも。でも、お兄様。麦茶と牛乳だとコーヒーの風味になるんじゃなかった?」
「そうだけど、そうだな。あれは美味しいし、まぁ、いいか」

 お兄様は麦茶が好きな人なのでコーヒーはなくてもかまわないみたいだ。ただ、クロワッサンにカフェオレを合わせてみたいと思ったそうだ。
 クロワッサンにハムとレタスを挟んだ軽食はとても美味しいので、お兄様は最近、セッセとクロワッサンを量産しては私のアイテムボックスに入れている。

 手作りマヨネーズも作れるので、たっぷりと塗って沢山ストックしてある。この世界にマヨネーズはない。卵を生食するのは危ないので仕方ないし、他に食べさせる人もいないから私とお兄様だけ美味しい思いをしても良いと思う。
 でも、手作りはメンドイので『液体』の加護でマヨネーズとかケチャップとか出てくるといいな。

 入学式の翌日、私とフルール様は一緒にAクラスに入った。このAクラスは高位貴族と魔力の強い貴族が集められている。初日は各授業の説明があったが聞いている限り特に問題はないようだった。
 午前中に色々説明があって、午後は各自で学園内の見学をして回るらしい。説明付きの学園内地図を渡された。

 私はお兄様と、フルール様も侍女と一緒だった。いつも付いている侍女はエラーナさんと言って従妹になるそうだ。伯爵家のお嬢様だけど、加護が『風の花』というちょっと微妙な加護だったのでフルール様に着く事になったそうだ。

「さて、他の人もほとんど居なくなりましたし、私たちも見学に行きましょうか」

 フルール様は他の人たちと一緒になりたくなかったので、皆が出ていくのを待っていたようだ。
 しかし、廊下に出ると、そこには私の婚約者がいた。

「遅かったな。待っていたのに」
「えっ。ラクアート様……。ごきげんよう。お久しぶりでございます」

 私はあわてて淑女の礼をとった。

「こんにちは。あなたがリーナね。会いたかったわ。あっ!星の王子様もいるのね。可愛い顔しちゃって。でも、ごめんね。もう少し大きくならないと好みじゃないの」

 突然、ショッキングピンクの髪色をした女の子が私の手を取って振り回した。
 何、この髪色、ありえない!

「あたし、フレグランスっていうの。フレちゃんって呼んでもいいのよ」
「フレーは優しいな。誰に対しても分け隔てがない」
「ふっふっ。当たり前。リーナはあたしの大切な親友ですもの。今は婚約者でも気にしないわ」
「そうか。仲良くしてやってくれ」
「もちろんよ。ね。リーナ!」

 この人、誰かしら。凄い髪色だけど、とても可愛らしい顔をしている。アニメに出てきそうな顔と声。初めて会うはずだけど、ものすごく慣れ慣れしい。

「恐れ入ります。どちら様でいらっしゃいますか?」
「えっー、ひどい、あたしが分からないの?! あっ、そうか、この世界では初めましてなのね。あたしはフレグランス。ラクアートとお付き合いしているの。いずれは公爵夫人になるからよろしくね」
「えっ? ええ?!」

「やだ。何、驚いてるの? もちろんあたしが正妻だけど、リーナも側妃で側においてあげるから安心していいわよ。公爵夫人だと色々お仕事もしなくちゃいけないみたいだから、その辺はお任せするけど、リーナにもちゃんといいようにしたげるから」
「フレーは寛大だな」
「よく言われるわ。じゃぁ、挨拶もしたしもう行くわね。今度、リーナのタウンハウスでお茶会、開いて! 学生会の皆で行ってあげるから」
「と、いう事だから連絡をするように」

 とラクアート様は偉そうに一言いうと、フレグランスをエスコートして行ってしまった。
 嵐のようだった。

「凄い失礼な小娘だった」
「ホント、凄い髪の色だった。わけわからない事いうし。見ました? フルール様?」

 振り向くとフルール様はいなかった。多分、面倒事を避けたかったのだろう。
 でも、ちょっと薄情じゃない!

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